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最高人民法院知識産権法廷年度報告(2021)(抜粋)--事件の件数と事件の特徴


1.事件の件数が持続的に増加する

1)事件の基本統計データ

2021年、最高人民法院知識産権法廷(以下「知財法廷」という)の技術類の知的財産権事件及び独占事件の受理件数は5,238件(新受件数4,335件)であり、既済件数は3,460件であり、新受件数に対する既済件数の比率は79.8%であった。法廷の受理件数は最高人民法院の受理件数全体の17.8%(受理した民事二審事件は全体の68%、行政二審事件は全体の100%)を占め、新受件数は16.4%を占め、既済件数は13.5%を占め、いずれも最高人民法院各部門のNo.1となっている。2020年に比べると、新受件数は1,158件増加し(同36.4%増)、結審件数は673件増加した(同24.1%増)。(注:システムにより抽出されたデータであったため、2019年と2020年の実際の新受件数はそれぞれ1,946件と3,177件であり、2019年からの実際の繰越事件は513件である。2019年度と2020年度の報告より、それぞれ1件多くなっており、本年度の報告にて訂正した。)

2)裁判官1人あたりの結審件数と平均審理期間

2021年、裁判官1人あたりの結審件数は前年比1.2%増の83.5件であった。各種の事件の平均審理期間は134日であり、民事二審実体事件の平均審理期間は129.4日で、行政二審事件の平均審理期間は143.6日であった。案件増加に対する裁判官の人手不足もあり、複雑な事件も増えているため、2020年に比べると、平均審理期間はやや長くなった。

3)事件の種類に関する統計データ

2,569件の民事二審実体事件の新受事件のうち、特許権侵害紛争は576件、実用新案権侵害紛争は806件、特許出願権と特許権帰属紛争は213件、植物新品種権紛争は68件、集積回路配置図設計紛争は2件、技術秘密紛争は79件、コンピュータ・ソフトウェア紛争は593件、技術類の知的財産契約紛争は153件、独占禁止紛争は25件、その他の紛争は54件であった。特許権侵害紛争、コンピュータ・ソフトウェア紛争、特許出願権と特許権帰属紛争、技術秘密紛争、植物新品種権紛争などの件数は大幅に増加した。管轄権異議申立事件はやや減少した。

1,290件の行政二審実体事件の新受事件のうち、特許拒絶査定審決取消訴訟は457件、実用新案拒絶査定審決取消訴訟は36件、意匠拒絶査定審決取消訴訟は3件、特許権無効審判審決取消訴訟は283件、実用新案権無効審判審決取消訴訟は234件、意匠権無効審判審決取消訴訟は102件、植物新品種拒絶査定審決取消訴訟は1件で、独占禁止行政紛争は2件であった。行政処分、行政裁決などその他の行政事件は172件であった。前年と比べ、各類の行政紛争事件は大幅に増加し、特許拒絶査定審決取消訴訟及び特許権無効審判審決取消訴訟は増加件数が最も多い。法廷は植物新品種の権利付与・権利確定に係る紛争事件及び独占禁止紛争事件査定審決取消訴訟を初めて受理した。

4)裁判の結果に関する統計データ

結審された3,460件の民事事件及び行政事件のうち、原審維持は2,272件で、原審維持率は65.7%であった。訴訟取下げは509件で、訴訟取下げ率は14.7%であった。調停は198件で(民事調停調書が発行された場合)、調停率は5.7%であった。全体の調停・取下げ率は20.4%であった。差戻し・改判は468件で、差戻し・改判率は13.5%であり、そのうち、差戻し率は0.8%で、前年の2.2%に比べると、明らかに低減した。その他は13件であった。

結審された2,023件の民事二審実体事件のうち、原審維持は1,004件で、原審維持率は49.6%であった。訴訟取下げは440件、調停は198件で、調停・取下げ率は31.5%であった。差戻し・改判は381件で、差戻し・改判率は18.8%であった。民事管轄事件の改判率は4.8%であった。

また、結審された971件の行政二審事件のうち、原審維持は862件で、原審維持率は88.8%であった。訴訟取下げは43件、取下げ率は4.4%であった。差戻し・改判は64件で、差戻し・改判率は6.6%であった。その他は2件であった。

5)渉外、香港・マカオ・台湾関連事件

2021年、法廷の渉外、香港・マカオ・台湾関連事件の受理件数は前年同期比16.2%増の437件で、受理件数全体の10.1%を占めている。そのうち、渉外事件の新受件数は382件で、新受件数全体の8.8%を占め、香港・マカオ・台湾関連事件の新受件数は55件で、新受件数全体の1.3%を占めている。民事二審事件は176件、行政二審事件は261件であった。法廷の渉外、香港・マカオ・台湾関連事件の結審件数は前年とほぼ同じく、280件で、結審件数全体の8.1%を占めている。

2.各種の事件の特徴

1)事件全体の特徴

実体事件の件数は増加しつつある。民事二審実体事件の新受件数は前年同期比31.8%増の2,569件で、前年より620件を増加した。行政二審事件の新受件数は前年同期比92.5%増の1,290件で、前年より620件を増加し、この高い増加率は、科学技術の発展が知的財産権の司法保護に対するニーズが非常に高いことを反映している。

関係する先端技術分野が日増しに多くなっている。新型紛争事件は多くなり、1/4以上の事件が次世代情報技術、バイオ医薬、ハイエンド装備製造、省エネルギー・環境保護、新材料、新エネルギーなどの戦略的新興産業に関わり、且つ伸び率が大幅に上昇した。これは、法廷が事件を審理する際に、中国の科学技術イノベーションと同調してコア技術及び重点分野における科学技術のイノベーションのために、確実にサービスと保障を提供できることを示している。

訴訟の国際化が顕著である。法廷が受理した渉外事件は持続的に増加し、一部の事件は中国国内と国外に同時に訴訟が行われ、知的財産権が国家発展の戦略的資源及び国際競争力のコア要素としての役割はますます顕著になる。

事件に関わる地域が広がる。事件は主に経済発達地域及び産業集積地域に集中し、法廷が受理した事件の半分以上は北京、上海、広州の三つの知的財産裁判所からの控訴二審で、中西部地域(鄭州、成都、武漢など)からの件数も急増している。各地裁判所が審理した関連事件の状況及び多層的な価値観を的確に把握する必要がある事件は明らかに増加し、中国全土において政策指導、業務統合を強化する重要性と緊急性は日増しに高まっている。
 
2)各種の事件の特徴

専利民事事件

クレームの解釈は依然として、専利民事事件の主な難点である。法廷は技術的特徴の区切り、均等論の適用、機能的要件及び使用環境特徴の判断などのクレーム解釈に関する問題の審理基準をさらに明確し、専利権の保護範囲、保護強度が特許権者が先行技術に対して行った創造的な貢献と一致することを確保した。

非侵害の抗弁については、合法的由来による抗弁と先行技術による抗弁が多く、そして専利権の有効性に関わる抗弁も出ている。

権利侵害に係る損害賠償額の計算方法はより科学的に、合理的になっている。証拠規則を活用し、できるだけ侵害により受けた損害又は侵害により得た利益に関する事実を明らかにし、科学的に、合理的に権利侵害に係る損害賠償額を認定し、高額な損害賠償が判決された事件が多くなり、権利侵害行為に対する処罰を強化した。

専利(出願)権権利帰属紛争のうち、職務発明に係る紛争の割合が最も高かった。係争特許と社員が元の会社で担当した職務又は分配された任務とは「関わっている」ことを如何に理解するか、係争特許が元の会社の物質的技術条件を「主に利用した」特許であるか否かを如何に把握するかは、この種類の事件の主な争点である。

同一専利に関わる民事事件と行政事件を協同審理するメカニズムは更に整備された。専利民事侵害事件の手続きと権利確定事件の手続きが同時に行われる場合、中国国家知識産権局と交流・フィードバックメカニズムを積極的に構築し、専利の民事事件と行政事件が交差する場合の協同審理を有効的に促進した。

専利行政事件

権利の種類は特許が主である。新受した特許拒絶査定審決取消訴訟と特許権無効審判審決取消訴訟は740件であり、新受した特許の権利付与・権利確定事件の件数全体の66.4%を占めた。

新分野、新業態に係る特許紛争事件が増えた。医薬(漢方薬を含む)、通信分野は依然として紛争が多い分野であるほか、インターネット、ビッグデータ、電子商取引、人工知能、ブロックチェーンなどの技術に係る特許紛争事件はますます多くなっている。

事件の争点は主に進歩性及び新規性に対する認定にある。

植物新品種権事件

主な農作物品種の割合は高かった。関係する植物の品種は、トウモロコシ、水稲、小麦、綿花などであり、そのうち、トウモロコシ、小麦新品種権に係る事件の割合はより高く、いずれも10%を超えた。

事件の種類及び地域はより集中していた。民事権利侵害紛争は80%を超え、権利付与・権利確定に係る行政紛争事件は初めて法廷の審理に入り、事件の地域はより集中し、そのうち、河南省、江蘇省、安徽省、甘粛省、山東省は上位5位であった。

侵害主体と侵害行為が多様化になる。侵害主体は種苗会社、農民専業合作社(農業組合)、家庭農場、穀物植栽大家族などを含む。権利侵害の手段はより巧妙化された。

育種成果に対する総合的な保護を重要視とした。「ホワイトブナシメジ菌株」特許権侵害事件を結審し、法律に基づき、権利者が微生物寄託番号で取得した微生物品種特許権を保護した。専利保護は種子資源を保護する重要なルートの一つになり、育種者がイノベーション成果の多様な保護に対する法的ニーズが示された。

技術秘密事件の特徴

事件の件数が持続的に増加し、関係する技術分野がより広くなり、新しい技術分野に係る事件が増えた。法廷が受理した技術秘密紛争実体事件は2019年の12件から2020年の44件、更に、2021年の79件に増加した。

係る法律問題が複雑化、多様化になった。手続きに関する問題は主に管轄権異議に関わり、侵害行為の実施地、二重起訴の認定及び違約責任と権利侵害責任が競合した場合の管轄の確定などを含む。実体審理の争点は技術秘密の内容と範囲、技術秘密を侵害した場合の賠償額の認定と秘密保持措置、技術秘密侵害行為、技術秘密の修正、改良行為においての実質的な貢献、製品の技術情報が技術秘密の対象であるか否かに対する認定などである。

高額賠償請求事件は明らかに増加した。2020年、「カーボポール(Carbopol)」技術秘密侵害事件において、懲罰的賠償の上限、5倍が適用され、3000万元以上の賠償金額の支払いを命じる判決を下した。更に、「バニリン(Vanillin)」技術秘密侵害事件においては、1.59億元の賠償金額の支払いを命じる判決を下した。

コンピュータ・ソフトウェア事件

事件の種類は主にコンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害紛争とコンピュータ・ソフトウェア開発契約紛争の2種類であった。

コンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害紛争において、複数の権利行使が同時に行われるのが多かった。

コンピュータ・ソフトウェアの権利帰属の認定はより多くの難題に直面していた。例えば、コンピュータ・ソフトウェアの完成時間は確認できず、数回も立証する必要があった。

独占禁止事件の特徴

独占禁止協定紛争民事事件、特に水平的独占協定事件の割合が高くなった。水平的独占協定に関わる業界は情報通信技術、運転訓練サービス、消防検査サービスなどの分野が含まれ、一部の独占協定には、業界団体が参加した。法廷は多くの事件において独占協定となると認定し、、独占禁止を強化する司法の確固たる立場を示した。

独占行政事件は法廷の審理段階に入った。2件の行政事件はそれぞれ独占禁止法第46条の適用と行政機関の不作為行為の起訴期限の確定に関わる事件であり、被告はそれぞれ地方法執行機関及び国務院独占禁止法執行機関に関わった。

外国関連の独占禁止民事事件が増えた。当事者は海外で発生した中国国内市場での競争を制限する独占行為に対して訴訟を提起した。

独占禁止に係る問題と知的財産権に係る問題が絡む状況が増加した。この種類の事件は特許権に係る市場支配地位を濫用する行為に関わったほか、医薬品特許のリバースペイメント、市場の区分、販売の制限などの横独占協議にも関わり、日増しに複雑になった。
 
日付:2022228  
ニュースソース:最高人民法院知識産権法廷


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©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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