化学分野において、「予想外の効果」を有すると唱える特許の無効化は通常、困難である。本件は、参考になれる無効化戦略を示してい...
近日、明陽科技(蘇州)股份有限公司(以下、明陽科技という)の社長一行は弊所にご来訪いただいた。弊所弁理士が同社の無効宣告請...
最高裁が北京 上海 広州知的財産裁判所における典型的判例を発表


9月9日、最高裁判所は記者会見を行い、北京、上海及び広州の知的財産裁判所の設立及び審理状況を報告し、かつ、北京・上海・広州知的財産裁判所で結審した典型的な知的財産判例14件を発表した。

判例1
安陽翔宇医療設備有限公司VS特許審判委員会、崔学偉氏の特許無効宣告行政紛争事件

(一) 基本状況
翔宇社は、崔学偉氏が有する特許番号94119284.9号の「多機能の透熱灸器具」という発明特許について、特許審判委員会に無効宣告を請求した。特許審判委員会は審理を経て、本件特許権の有効性を維持する審決を下した。翔宇社は係争決定を不服として、北京知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

(二) 裁判結果
北京知的財産裁判所は審理を経て、以下のとおりに認定した。本特許権の特許請求の範囲が明確であり、明細書により支持されている。その特許権者が特許願書を補正したが、この補正は元の明細書及び特許請求の範囲を超えていない。また、本件特許は進歩性があり、特許法及び特許法実施細則の関連規定を満たす。したがって、係争決定を維持すると判決した。各当事者はいずれも上訴しなかったため、係る判決は既に発効した。

(三) 典型的な意義
透熱灸は中国の伝統的な医学治療法の1つである。本件特許は、伝統的な透熱灸治療法と電磁技術を結合させ、自動加熱かつ自動温度コントロールを実現した「多機能の透熱灸器具」である。関連漢方医学業界の治療において応用的価値が高いため、漢方医療機械器具業界において広範な注目を集めている。本件は、複数の特許権無効宣告理由に係り、特許請求の権利範囲が明確であるか否か、特許請求が明細書の支持を得られるか否か、特許願書への特許権者の補正が元の明細書及び特許請求の範囲を超えるか否か、特許権が進歩性を有するか否かなどが含まれる。本件判決は、各当事者の主張に基づき、1つずつ十分に論ぜられ、法により特許権者の利益を保護した。

判例2
鄭州春泉節能股分有限公司VS特許審判委員会、第三者の北京海林節能設備股分有限公司などの発明特許権に関する無効宣告行政紛争事件

(一) 基本状況
北京海林社は、鄭州春泉社の特許番号第200810231195.5号の「電力用変圧器技術に基づくスピード調整可能な電気機器のスピードレベルを識別する方法及び関連装置」という発明特許に対して、特許審判委員会に無効宣告を請求した。特許審判委員会は『特許法』第22条第3項の規定に基づいて、本特許の無効を宣告した。鄭州春泉社は係争決定を不服として、北京知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

(二) 判決結果
北京知的財産裁判所は審理を経て、本特許請求の範囲がいずれも進歩性を具備し、特許審判委員会の認定が適切ではないと認定し、係争決定を取消す判決を下し、特許審判委員会に改めて決定を下すことを命じた。各当事者はいずれも上訴しなかったため、係る判決は既に発効している。

(三) 典型的な意義
本件は、技術問題が複雑である電気学分野の発明特許に係る。裁判所は、関連技術について真剣に審理を行い、厳格に進歩性を判断するときの3ステップ法にしたがい、本特許の進歩性を審理し、特許審判委員会の不適切な決定を是正した。本判決により、企業に相当な利潤をもたらす発明創造を救済し、法により発明者の正当な利益を保護した。

判例3
開灤(集団)有限責任公司(Kailuanグループ)VS商標審判委員会、第三者の張宏彬氏の商標権無効宣告審判請求行政紛争事件

(一) 基本状況
Kailuanグループは、第三者の張宏彬氏の登録した第5667073号「开滦」商標について、自社の「开滦」企業商号権を侵害し、張宏彬氏による悪意のある先取り行為で、かつ実際に使用していないという理由で、無効宣告審判を請求した。商標審判委員会は以下のとおりに認めた。開灤社の提供した証拠はエステサロン、公衆浴場の提供などのサービスに係らなかったため、係争商標の出願日前に、Kailuanグループが係争商標の指定役務のエステサロン、公衆浴場の提供などの役務、又はこれらの役務と類似する役務について「开滦」を商号又は商標として使用し、かつある程度に知名度を有するようになったことを証明できない。よって、係争商標の登録を維持する決定を下した。Kailuanグループは、係争決定を不服として、北京知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

(二) 判決結果
北京知的財産裁判所は審理を経て、以下のとおりに認定した。係争商標「开滦」の登録はKailuanグループの先行商号権を侵害する。したがって、商標審判委員会の認定は適切ではなく、是正されるべきである。商標審判委員会の商評字(2014)第71444号第5667073号「开滦」商標に関する無効宣告審判決定を無効とし、商標審判委員会より改めて決定を下すよう命じた。判決が下された後、当事者が上訴しなかったため、既に発効している。

(三) 典型的な意義
本件は商標無効宣告審判に係る行政紛争であり、商標法に定めれている「商標登録の出願は、他人が現有する先行権利を侵害してはならない」という規定に基づいて請求し、係る先行権利が先行商号権である。本判決には、原告の商号の形成時間(「开滦」商号が1912年に形成)、原告商号の知名度(開灤社は世界企業トップ500社の1社であり、国内外での知名度が高い)、原告の経営範囲と係争商標の指定役務との比較、混同の可能性、原告の商号に対する係争商標権利者の認知状況、及び係争商標の実際使用状況などの方面から、「他人の現有する先行権利を侵害する」ことの要件を1つ1つ分析・検討し、係争商標の登録がKailuanグループの先行商号権を侵害し、無効にするべきであると判決した。本件判決は、知名度のあるブランドの権益を守り、悪意による先取り行為を阻止し、市場において誠実信用に基づき競争するという司法の指導意見を示している。

判例4:
貴州同済堂製薬有限公司VS商標審判委員会の商標拒絶不服審判行政紛争事件

(一) 基本状況
同済堂社は国家工商行政管理総局商標局に「同濟堂始創于1888及び図形」の結合商標を出願した。商標局及び商標審判委員会は前後して、係争商標が第3178271号「同濟及び図形」商標(即ち、引用商標一)及び第3574839号「同済」商標(即ち、引用商標二)とは類似するという理由で、係争商標の登録出願を拒絶した。同済堂社はそれを不服として、北京知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

(二) 裁判結果
北京知的財産裁判所は次のとおりに認定した。同済堂社の先行基礎商標の第1093180号「同済堂」商標の知名度、係争商標の実際使用状況、係争商標と基礎商標との類似程度及び2件の引用商標との相違程度等の要素を総合的に考慮し、係争商標は2件の引用商標と市場に併存登録されても関連公衆の誤認・混同を生じさせることがなく、同一又は類似商品における類似商標を構成しない。係争決定を取消し、商標審判委員会より改めて裁定を下すように命じた。

(三) 典型的な意義
本件において、商標類否を判断する時、特定条件を満たす場合の同一主体の基礎商標と係争商標との持続関係を考慮すべきであることを明らかにした上、持続関係を認定する考慮要素も検討した。裁判所は、同済堂社の基礎登録商標の知名度、係争商標と基礎商標との類似及び指定商品の類似状況、係争商標の実際使用状況、及び係争商標と2件の引用商標との相違などを総合的に考慮した上、基礎商標の商業名誉を係争商標まで及ぼすことができ、関連公衆が係争商標と2件の引用商標を区別できると最終的に認定した。本判決は、有名な商標の商標権者の利益を合理的に保護することにおいて重要な意義を有する。

判例5:
銭程氏VS北京音楽ホールの登録商標専用権侵害紛争事件

(一) 基本状況
北京音楽ホールでは、ここ数年、「音楽の扉を開く」をテーマとしたシリーズ演出が行われている。銭程氏は北京音楽ホールの元総経理で、在任中「打开音乐之门(日本語訳:音楽の扉を開く)」という文字商標を登録した。銭程氏は退職後、北京音楽ホールの許可を得ず、「打开音乐之门」という標識をビジネス活動に使用し、その登録商標専用権侵害を理由にして、訴訟を提起し、北京音楽ホールに対して、商標専用権侵害行為の差止め、謝罪及び経済的損害と合理的支出計4万元の賠償を請求した。

(二) 訴訟結果
北京市西城区裁判所は一審で以下の通り認めた。銭程氏が係争商標の出願をする前に、北京音楽ホールは同一の商品において商標権者より先に係争商標と類似する商標を使用し、かつある程度の影響力を有していた。銭程氏は係争商標の商標権者として北京音楽ホールが元の使用範囲内に継続して係争商標を使用することを阻止できず、銭程氏の提訴請求は、事実でも法的根拠もないので、支持されるべきではない。よって、銭程氏の訴訟上の請求を棄却するという判決を下した。銭程氏は一審判決を不服として、上訴を提起していた。北京知的財産裁判所は、二審で以下の通り認めた。「打开音乐之门」標識を使用したはシリーズの演出及び宣伝活動は、北京音楽ホールがその宣伝の主体であるので、当該標識と北京音楽ホールの間に既に比較的に安定した関連性が形成され、北京音楽ホールの先使用権の抗弁理由が成立し、「打开音乐之门」の使用は商標権侵害に該当しない。よって、上訴請求を棄却し、一審判決を維持するという判決を下した。

(三) 典型的な意義
本件は、新商標法に規定されている商標の先使用権という抗弁理由の法の適用に係る事件である。裁判所は、新商標法に規定される先使用権の抗弁の適用条件を深く分析し、先の商標のような使用、標識の知名度、使用者の主観的な態度等を十分に検討し、その理由を十分に説明した。本判決によって、北京音楽ホールは、12年間持続的に使用していた「打开音乐之门」というブランドを法によって保護し、合理的な商標の先使用者及び商標権者の利益のバランスを図ったといえる。

判例6:
北京愛奇芸科技有限公司VS北京極科極客科技有限公司の不正競争紛争事件

(一) 基本状況
極科極客社は、「極陸由」というルーターの製造者及び販売者である。「極陸由」というルータのユーザーは、極陸由の雲のプラットフォームから「ビデオ広告遮断」のプラグインをダウンロードし、「極陸由」というルーターを通じてネットに接続したら、愛奇芸社のビデオ冒頭のCMを遮断することができる。愛奇芸社は、極科極客社により製造・販売された「極陸由」というルーターが「ビデオ広告遮断」のプラグインをインストールすることによって、「愛奇芸」というウェブサイトにおけるビデオ冒頭のCMを遮断するのは、不正競争行為に該当する。よって、裁判所に訴訟を提起し、極科極客社に対して、不正競争行為を差止め、影響を解消し、かつ損害賠償210万元を支払うことを請求した。

(二) 訴訟結果
北京市海澱区人民裁判所は一審で以下のとおり認定した。極科極客社は商業上で利益を取得するために、「ビデオ広告遮断」のプラグインを利用して直接愛奇芸社の経営を妨害した行為は、正当な競争の合理的限度を超え、信義誠実の原則及び公知の商業道徳に違反し、不正競争に該当する。極科極客社は、一審判決を不服として、上訴を提起した。北京知的財産裁判所は二審で以下のとおり認定した。経営者はネットユーザーにサービスを提供する時、相応の規則に従うべきであり、他の競争者の正当で、かつ合法的なビジネスモデルを損なうことによって自分の利益を取得してはいけない。愛奇芸社のビジネスモデルを強硬に変更し、ユーザーにサービスを提供するという極科極客社の行為は、愛奇芸社の正当な権益を損ない、最終的に愛奇芸社が高額の著作権使用許諾費用を支払えず、関連事業が継続できなくなり、ネットユーザーの利益には良くない影響を与える可能性があるので、極科極客社の行為は、非正当性を備えている。よって、その上訴を棄却し、一審判決を維持するという判決を下した。


(三) 典型的な意義
ここ数年、ネットワーク環境において、競争係争がますます激しくなり、新型の不正競争行為が多発し、法的性質の判断が比較的に困難になっている。裁判所は、ネット経営者の主観的な悪意、訴えられた行為が他人の合法的なビジネスモデルを損なっているかどうか、消費者の最終利益に影響するかどうか等を分析し、訴えられた行為が不正競争行為に該当することを認定した。本件は、ネットワーク環境における競争関係の認定及び競争行為の正当性の判断等について、ある程度指導的な役割を果たすと思われる。

判例7:
北京楽動卓越科技有限公司VS北京昆侖楽享網絡技術有限公司等の著作権侵害及び不正競争に係る紛争事件

(一) 基本状況
楽動卓越社は、モバイル端末ゲーム「私はMT on Lineです」、「私はMT 2です」の著作権者である。前述ゲームは、3Dアニメーションシリーズの「私はMTです」より改編されたものである。楽動卓越社は、ゲーム名称、キャラクター名称に対して独占的な被許諾使用権を享有し、キャラクターのイメージに対して美術著作物の著作権を享有する。昆侖楽享社等は許可を得ず、「超級MT」ゲームにおいて、「私はMT です」ゲームの名称、キャラクター名称、キャラクターのイメージと類似する名称及びキャラクターを使用した行為は、その著作権を侵害した。昆侖楽享社等が「超級MT」ゲームにおいて「私はMT です」というゲーム名称を剽窃し、ゲームの宣伝において「私はMT です」というゲームの関連宣伝用語を使用したことは、不正競争行為に該当するとして、本件訴訟を提起した。

(二)  訴訟結果
北京知的財産裁判所は審理を経て、下記のとおり認定した。楽動卓越社のゲーム及びがキャラクターが著作権法上の文字著作物に該当せず、訴えられたゲームのキャラクターのイメージと楽動卓越社のゲームのキャラクターのイメージは、実質的な類似に該当しないので、昆侖楽享社等の行為は、楽動卓越社の著作権を侵害しない。楽動卓越社のゲームは先にオンラインにおいて販売され、かつ一定の知名度を有していて、携帯端末ゲームの同業経営者としての昆侖楽享社等が楽動卓越社の上述名称及びキャラクター名称に対して合理的に回避せず、更に密接な関連性のある表記を採用し、事実に違反する宣伝を行ったことは、他人の知名役務の特有の名称への無断使用及び虚偽宣伝の不正競争行為に該当する。よって、昆侖楽享社等に対して、不正競争行為を差止め、楽動卓越社に経済的損失50万元及び合理的支出3.5万元を賠償するという判決を下した。

(三)典型的な意義
モバイル端末ゲームは、一種の新興文化産業として、文化と科学技術を融合した産物であり、巨大な発展空間と良好な市場潜在力を有している。本件は、モバイル端末ゲームの著作権侵害及び不正競争に係る係争事件である。関連事実が非常に複雑であり、係る法律上の問題点も繁多て困難である。裁判所は、ゲーム名称及びキャラクター名称等の短句が文字著作物に該当するかどうか、改編著作物の著作権の保護、モバイル端末ゲームの名称が知名商品の特有の名称に該当するかどうか、虚偽宣伝行為の認定等の問題点を細かく分析した。裁判所は、民事責任について、原告のゲームのシェア、訴えられた権利侵害者の主観的状態等の要素を十分に分析し、ゲーム権利の所有者の利益を最大限に保護し、法によって他人の利益を不正に獲得する行為に打撃を与えた。本件はモバイル端末ゲームに関する知的財産上の保護の筋道と方法を明確にし、モバイル端末ゲーム産業を健全な発展を促すことに規範的な役割を果した。

判例8:
バーバリー社VS陳凱氏、魯秋敏氏との商標権侵害紛争事件

(一) 基本状況
バーバリー社は第25類の被服等の商品における商標「BURBERRY」の商標権者である。公安機関は2012年3月20日、陳凱氏、魯秋敏氏が上記商標の模倣品を販売していた刑事事件を解決し、翌日、バーバリー社に係る模倣品を見分けるように要求した。2012年8月24日、上海市楊浦区裁判所は、二名の被告に有期懲役(執行猶予)と罰金に処した。2014年8月15日、バーバリー社は本件訴訟を提起し、裁判所に被告2名に経済的損失及び合理的支出100万元を賠償するよう請求した。バーバリー社が2012年3月20日にはすでに権利侵害行為のことを知りながら、2014年8月になり訴訟を提起するのは、時効期間がすでに経過していると陳凱氏と魯秋敏氏は、抗弁した。

(二) 訴訟結果
上海市楊浦区裁判所は、一審で下記のとおり認定した。バーバリー社の提訴は、時効期間がまだ経過していなかったとして、被告の陳凱氏、魯秋敏氏はバーバリー社の商標専用権を侵害しておりとして、連帯で原告バーバリー社に経済的損失15万元及び合理的支出1.5万元を賠償することを命じる判決を下した。魯秋敏氏は一審判決を不服として、上訴を提起した。上海知的財産裁判所は上訴を棄却し、一審判決を維持するという二審判決を下した。

(三) 典型的な意義
本件は、訴訟の時効中断事由の認定に係わる事件である。本件判決は、他人による権利侵害行為が、既に刑事追行過程に入り、偵察部門の要求に応じて調査に協力するという事実は、訴訟の時効には法律上の意義がある。上述の事実は、以下の2つの面から見れば権利者にとって重要な意義があると裁判所は認めた。1つは、権利者がその権利が侵害されたことを分わかっているということで、訴訟時効の起算という法的効果が生じる。もう1つは、権利者が刑事上の調査によって自分の民事権利が保護されることを信じるという理由で、かつ訴えられた行為が権利を侵害するという認定が発効した刑事判決によるということで、訴訟時効が中断するという法的効果が生じる。当該認定は時効の中断事由を合理的に限定し、権利者が法律の規定に基づいて、自身の権利を保護するのに、保障を提供したといえる。

判決9:
開徳阜国際貿易(上海)有限公司VS闊盛管道系統(上海)有限公司等との商標権侵害、虚偽宣伝に係る紛争事件

(一) 基本情況
開徳阜社は、「潔水」文字商標の商標権者である。2013年7月1日以前、開徳阜社は、訴外人であるドイツaquatherm GmbH社の水管等の商品について、中国での独占的な取次ぎ販売権を有していた。2013年7月1日以降、開徳阜社は、aquatherm GmbH社との提携契約が終了し、闊盛社がaquatherm GmbH社の新たな中国代理商になった。開徳阜社は2013年7月1日以前に登録した商標「潔水」をaquatherm GmbH社の商品販売だけにおいて使用していた。2013年7月1日以降、開徳阜社は引き続き商標「潔水」を所有し、他のメーカーの水管製品において使用していた。闊盛社は、欧蘇社に上海でaquatherm GmbH社の商品の独占的な販売権を授権した。闊盛社と欧蘇社は、宣伝文章及びチラシにおいて、「元のドイツの潔水 現在のドイツの闊盛」、「ドイツの闊盛(元のドイツの潔水)―不変の品質」等と類似する宣伝用語を使用し、それと同時に「元の代理商は、ドイツの「潔水」で中国で商品を宣伝したが、7月1日からドイツ製造元は中国語標識の「闊盛」を使用し始め、中国で商品を宣伝する」、「この前使用していた中国語標識の「潔水」が元の代理商の所有商標であり、現在、ドイツの「闊盛」及びaquatherm GmbH社とは何らかの関連性がない」等の宣伝用語を使用していた。開徳阜社は、闊盛社と欧蘇社の上記宣伝用語が商標権侵害及び虚偽宣伝行為に該当するとして、両被告に商標権侵害の行為及び虚偽宣伝の行為を差止め、経済的損失及び合理的支出500万元を賠償するよう請求した。

(二) 訴訟結果
上海徐匯区裁判所は一審で開徳阜社の全ての訴訟上の請求を棄却した。開徳阜社はそれを不服として、上訴を提起した。上海知的財産裁判所は二審で以下のとおり認定した。商標「潔水」がaquatherm GmbH社の製品に使用されていたという事実に基づき、闊盛社と欧蘇社は宣伝活動において商標「潔水」が示している商品が既に変更したことを消費者に説明する必要がある。両社には、商標「潔水」を使用する主観的な善意があり、かつかかる使用方式も合理的な限度を超えていないので、消費者に商品の出所につき混同を生じさせず、商標の正当な使用に該当する。闊盛社と欧蘇社の宣伝用語には不適切なところがあるが、誤解を生じさせる程度に達していないので、不正競争防止法上の虚偽宣伝行為に該当しない。よって、上訴を棄却し、一審判決を維持する。

(三) 典型的な意義
本件は、商標の正当な使用及び虚偽宣伝行為の認定基準に係る事件である。裁判所は、被告が商標を使用する主観的な意図、使用方式及び混同の可能性等の面から、訴えられた行為が商標の正当な使用に該当すると認定した。訴えられた虚偽宣伝行為の認定について、広告宣伝用語の全体上で解読し、かつ関連公衆の一般的な注意力、認知経験等の要素から総合的に認定すべきであることを強調した。本件判決は、同一の種類の事件の審理について、ある程度参考的価値がある。

判例10:
上海帕弗洛文化用品有限公司VS上海芸想文化用品有限公司の著作権侵害に関する上訴事件

(一) 基本情況
帕弗洛社のホームページは暗赤色の背景で、動く白星の効果を追加し、銅鈴の魔法音と共にバックグラウンドミュージックも設定した。帕弗洛社は、芸想社と欧鰐社がそのホームページを踏襲し、その所有著作権を侵害するので、本件訴訟を提起し、芸想社と欧鰐社が権利侵害行為を差止め、良くない影響を解消し、且つ賠償損失額22.3万元を支払うよう請求した。

(二) 訴訟結果
一審の上海市閔行区裁判所は、芸想社と欧鰐社が帕弗洛社のホームページの著作権を侵害したとして、権利侵害行為を差止め、帕弗洛社の経済的損失及び合理的費用の3万元を支払うことを命じた。芸想社と欧鰐社はそれを不服として、上訴した。上海知的財産裁判所は二審判決で上訴を棄却し、一審の判決を維持した。

(三) 典型的な意義
本件は、ホームページの内容編成が著作権のある著作物を構成するかどうかに係わるものである。裁判所は、係争の関連ホームページにおいて公用の要素が多くあるが、普通企業のトップページに含む項目と構成要素以外、画像の色、内容の選択、展示方式及びレイアウト等の面において、ユニークな構成を有し、ある程度芸術的な視覚効果を呈し、独創性及び複製可能性があるので、著作権上の著作物を構成する。本件で確定するホームページの著作権の保護基準は、同一種類の事件審理について、有益な参考になると思われる。

判例11:
請求人の欧特克公司、奥多比公司の訴訟前の証拠保全に係わる案件

(一) 基本情況
オートデスク(Autodesk)、アドビ(adobe)は米系のソフトウエア会社で、上海風語築展覧有限公司は、許可を得ず、、無断で両社のAutoCAD、Photoshop、Acrobat等のシリーズのソフトウエアを複製し、インストールして、ビジネス活動に使用した。法律違反に係わるソフトウエアをインストールしたコンピュータが風語築社の経営場所に所在するので、客観的に、請求人は関連証拠を収集できない。同時に、関連証拠がコンピュータのソフトウエア及び関連データで、無形性を持ち、それを隠蔽し、又は除去するのは容易である。係る証拠が改変され、又は隠蔽、除去されたら、なかなか入手できないので、関連事実の認定も困難になるので、請求人は訴訟前に証拠を保全するよう上海知的財産裁判所に請求した。

(二) 訴訟結果
上海知的財産裁判所は、以下のとおり認定した。証拠保全の被請求対象が、法律に規定される「滅失可能性があり、又は後日、収集困難となる」情況に該当し、それに客観的に請求人が上述証拠を自ら収集できず、訴訟前の証拠保全の条件を満たす。よって、被請求人の経営場所にあるコンピュータ及び他の設備にインストールされている上述ソフトウエアに関する情報について、証拠を保全することを裁定した。証拠保全の裁定が下されてから、上海市第三中等裁判所と上海知的財産裁判所の関連機構は提携して、「連合執務」制度上の優勢を発揮し、訴訟前の証拠保全を完成させた。

(三) 典型的な意義
本案件の証拠保全は、上海知識産権裁判所が設立されてから初めてのコンピューターソフトウェアに係わる訴訟前の証拠保全案件である。本案件は、大きめの仕事場の400台あまりのコンピュータにおける関連証拠の保全に係わり、保全作業がより専門的であり、且つ複雑である。上海知識産権裁判所は専門家に協力してもらって、厳密な証拠保全の執行案を作成し、技術・清算及びコントロールの関連チームも成立し、職務を分担した上、お互いに協力する。各チームは、規則に従って作業し、順序的に証拠保全を行い、保全任務を完璧に完成した。本案件は、知的財産案件の特徴に合わせる執行メカニズムを研究し、執行及び審査の係わりを強化し、保全裁定が執行率及び的確さを高め、権利者の合法的な権利の保護に仕事の方法及び思考回路を提供した。

判例12:
シャネル(CHANEL.)VS文大香、広州凱旋大酒店の商標権侵害に関する案件

(一) 基本情況
シャネル社(CHANEL.)は、1954年8月27日にフランスで設立された株式会社であり、世界知名の「贅沢品」ブランドの1つである。シャネル社、第25類の「被服、履物、帽、スカーフ、水泳着」等の商品について、図形商標及び「CHANEL」の文字商標を登録した。凱旋大酒店の子会社である華美達酒店と文大香氏とは店舗の賃貸契約を締結し、華美達酒店1階の西側廊下の2号店舗をレンタルし、被服、革製品を経営し、偽物及び粗悪品を販売しないことで承諾した。文大香氏が販売した靴、財布などの商品について、シャネル社の登録商標と同一の標識を使用し、商標専用権を侵害するとの理由で、シャネル社は、文大香氏と凱旋大酒店及び華美達酒店を被告として、訴訟を提起し、権利侵害行為を差止め、経済的損失額及び合理的支出の30万元を支払うことを請求した。

(二) 訴訟結果
広州市越秀区裁判所は一審で、文大香氏がシャネル社の商標専用権を侵害するとして、権利侵害行為を差止めし、経済損失額を支払うべきであるが、凱旋大酒店及び華美達酒店は特に権利侵害を構成しないと認定した。シャネル社はそれを不服として、上訴した。広州知的財産裁判所は二審で、係争商標の知名度、華美達酒店の高級ホテルという身分、契約におけるホテルと店舗との特殊関係及び文大香氏が長期間にわたって繰り返し権利侵害している等の要素を総合的に考慮した上で、華美達酒店には訴えられた店舗により高い注意を与えられるべきであり、文大香氏が偽物及び粗悪品を販売した事実は明らかで、華美達酒店が十分注意したら、係る権利侵害行為を発見できたはずである。華美達酒店は、文大香氏の行為に見て見ぬふりをし、権利侵害行為を放任したことにより、権利侵害行為の幇助を構成し、文大香氏と連帯責任を負うべきである。よって、文大香氏と凱旋大酒店及び華美達酒店に対して、連帯でシャネル社の経済的損失額及び合理的費用の5万元を支払うことを命じた。

(三) 典型的な意義
ここ数年、被服市場、ホテル等の賃貸店舗には、偽物を販売する行為が多発している。通常、商標権者は、店舗の経営者及び店舗の借主、管理人を被告にして訴訟を提起し、連帯で賠償の責任を負うよう請求する。この情況において、如何に店舗の借主、管理人の責任を認定するかということが最も重要になる。本件では、裁判所は店舗の借主、管理人が店舗の経営者の権利侵害行為を知っていたかどうかを判断した時、係る登録商標の知名度、店舗の経営者の権利侵害行為が明らかであるかどうか、店舗の借主と店舗の経営者との具体的な関係などの要素を総合的に考慮し、事件の事実に基づいて店舗の借主の注意義務を確定した。本件判決は、店舗の借主及び管理人の権侵害行為の幇助を構成する条件を研究し、知名ブランドの合法的な権益の保護に指導的な役割を果たすと考えられる。

判例13:
孫利娟氏VS快尚時装(広州)有限公司、広州優岸美致有限公司の著作権に係わる事件

(一) 基本情況
孫利娟氏は2011年1月12日、站酷網において、「キリンが寂しさの専門家であるそうだ」という美術著作物を発表した。当該著作物は、2011年3月に「紅門創意Tシャツ図形の奨」の一等賞を受賞した。快尚社と優岸美社が共同で製造・販売したワンピースには、係争美術著作物が使用され、その署名権、複製権及び発行権等の著作権を侵害するので、本件訴訟を提起し、両被告の権利侵害行為を差止め、経済的損失25万元及び合理的支出2万元を支払い、両被告が書面にて謝罪声明をし、権利侵害の影響を消去するよう請求した。

(二) 訴訟結果
広州市白雲区裁判所は一審で、快尚社と優岸美社が許可を得ず、孫利娟氏の美術著作物を使用したのは、著作権を侵害しているが、被服等の商品について作者を記載できないので、客観的に孫利娟氏の署名権を侵害しないと認定した。したがって、両被告の権利侵害行為を差止め、在庫の商品及び販売中の侵害商品を処分し、連帯で孫利娟氏の経済的損失及び合理的費用の3万元を支払うことを命じた。孫利娟氏はそれを不服として、上訴した。広州知的財産裁判所は二審で以下のとおり認定した。知名のイラストレーターの美術著作物をプリントする被服において作者の氏名を表示するのは、被服デザインの業界でも良く見られるので、著作物の使用方式の制限で作者を表明できない情況に該当せず、快尚社と優岸美社は、孫利娟氏の著作権を侵害している。係争著作物がある程度の知名度を有することと、優岸美社が主観的な悪意を有し、快尚社が大規模に経営することを考慮したら、一審判決における損害賠償の額が明らかに低すぎるので、快尚社と優岸美社は孫利娟氏に謝罪声明をし、連帯で経済的損失8万元を支払うことを決定した。

(三) 典型的な意義
本件は、被服デザイン業界において作者の署名権を侵害する認定に係わる。裁判所は、被服デザイン業界の慣例及び生活常識を考慮した上、被服上で他人の美術著作物を使用する時、作者を表記するのは、客観的な制限がなく、被服における図形の美しさに影響を与えず、それに被服上でイラストレーターの氏名を記載するのは良く見られている。本件判決は法の規定に基づいて、作者の署名権を保護し、被服デザイン業界の著作権の使用行為に対しても重要な意義を有するものである。

判例14:
暴雪娯楽有限公司VS上海網之易網絡科技発展有限公司の行為保全に係わる事件

(一) 基本情況
暴雪娯楽社は、「魔獣世界」シリーズゲームの著作権者である。網之易社は、当該ゲームの中国での独占販売権を享有する。七遊社より開発し、分播時代社が独自に運営し、かつ動景社がダウンロード資料を提供する「全民魔獣」(元の名前は、「酋长萨爾」である)は、その美術著作物の著作権を侵害し、他人の知名ゲームの商品の特有名称、包装を勝手に使用し、及び虚偽宣伝の不正競争行為を構成する。暴雪娯楽社と網之易社は提起する同時に、行為保全も請求し、3被告の権利侵害行為を差止め、1000万元の現金保証を提供するよう請求した。

(二) 訴訟結果
広州知的財産裁判所は双方当事者を召集し、公聴会を行ってから以下の通り裁定した。七遊社は訴えられたゲームの複製、発行、又はネットを通じて訴えられたゲームを散布することを禁止し、分播時代社が被訴のゲームの複製、発行、又はネットを通じて訴えられたゲームを宣伝すること、及び不正競争行為を禁止し、動景社がそのホームページにおいて、訴えられたゲームを宣伝することを禁止する。係る裁定が下された後、七遊社と動景社は自発的に裁定の内容に従い、分播時代社も裁判所の催促及び説明の後、裁定を執行した。

(三) 典型的意義
本件は行為の保全(仮処分ともいう)に係わる。法律の規定に従って、積極的に行為保全の申請を受理して審査し、知的財産権の行為保全措置を妥当的に処理するのは、知的財産の司法上の救済手段の即時性、簡便性及び有効性を高めることに重要な意義がある。同時に、行為保全は、請求人と被請求人の利益のバランスを図るべきであり、保全装置の適用条件を的確に把握し、審査のプロセスを規範化させ、権利者が迅速に権利保護の要求を満たすと同時に、行為保全の措置を勝手に利用してライバルの利益を損害することも防止すべきである。本件では、裁判所は、行為保全を審査する時、当事者双方の意見を聴取すべきであり、申請人の担保提供情況も考慮し、行為保全の装置及び範囲を合理的に確定し、当事者双方の利益のバランスをよく図った。

時間:2015年9月9日
出所:最高裁判所


ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
×

ウィチャットの「スキャン」を開き、ページを開いたら画面右上の共有ボタンをクリックします