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キャッチフレーズ商標の登録及び保護に関して


北京林達劉知識産権代理事務所
中国商標弁理士
肖 暉 Sophia XIAO
 
周知のように、良いキャッチフレーズとは、すらすらと口から出て、覚えやすく、高い識別力を有するものであり、企業の経営理念における主張や追求を表し、消費者を引き寄せる有力な武器でもある。例えば、デビアス社の「鑽石恒久遠 一颗永流伝(A Diamond is Forever/ダイヤモンドは永遠の輝き)」、中国李寧公司の「一切皆有可能(Anything is possible)」というような消費者に熟知されているキャッチフレーズは商標として無事に登録され、自社のブランドを宣伝し、知名度を向上させるために重要な役割を果たしている。したがって、企業が自社のオリジナルのキャッチフレーズを他人に使用されないように保護を求める場合、著作権によって著作物として保護する以外に、キャッチフレーズを商標として登録することが考えられる。しかし、実務において、普通のキャッチフレーズは商標として登録できない。それでは、どのようなキャッチフレーズが商標として登録できるのであろうか。

筆者は本稿において、関連する行政・司法判例と結び付けて、中国国内のキャッチフレーズに関する商標登録状況を簡単にまとめて分析する。企業のキャッチフレーズ商標の登録と保護に少しでも役立てば幸いである。

.キャッチフレーズ商標の登録及び拒絶状況

中国現行「商標法」の第8条、第9条には、商標とは、自分の商品と他人の商品を識別できる標章であり、且つ顕著な特徴を有するものであると明確に規定されている。また、現行「商標審査基準」の第二部分における商標の識別力に関する審査にも、商品又は役務の特徴を示すフレーズ又は文、一般の広告宣伝用語は、識別力に欠けると認定されているため、「商標法」第11条第1項第(3)号に規定の「商標として登録することができない」状況に該当する。ただし、その他の要素との組合せにより、全体として識別力を有するものは除くとされている。

上記のことから、企業のキャッチフレーズが商標登録として登録されるか否かは、主に「商標法」の関連規定に違反するか否か、商品又は役務の出所を識別し、識別力を有するか否かによることが分かる。

1.商標網[1]に公開された登録例

筆者は、商標網における公開情報を調べることで、「GREE 格力 譲世界愛上中国造及図 (GREE, Made in China, Loved by the World and Device)」「我就喜歓(I’m lovin’ it)」などの公衆に熟知されている典型的なキャッチフレーズを多数検索できた。下表1にあるように、登録されたキャッチフレーズ商標の出願人には、世界トップ500社及び多国籍企業の姿が並んでいる。しかし、中国国内企業であっても外国企業であっても、そのキャッチフレーズ自体は独創性が高いか、又は大量の宣伝・使用により識別力を有するようになれば、いずれも商標として登録でき、商標法による保護を受けられる。

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2.商標網に公開された拒絶例

筆者は、商標網における公開情報から、同様に多くの拒絶事例を見つけた。下表2にあるように、例えば「Gree格力及図」の表記がない「譲世界愛上中国造(Made in China, Loved by the World)」、「新京報」の表記がない「負責報道一切(Responsible for reporting all)」、「益達」の表記がない「関愛牙歯 更関心你(Care about your teeth, care about you more)」などの商標は、そのキャッチフレーズ全体が消費者から普通の広告用語と見なされやすく、商標としてあるべき識別力に欠けるため、いずれも登録されなかった。また、拒絶された商標のうち、例えば、「微信支付無現金日(WeChat Pay Cashless Day)」は、識別力を有する文字「微信(WeChat)」を含むものの、商標全体が指定役務に使用されるため、指定役務の内容特徴を直接表しているとは認定できないが、役務の出所を識別するための標章として認識されにくいので、商標としてあるべき識別力に欠けるとして拒絶された。

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.キャッチフレーズ商標の主な拒絶理由

1.主な適用条項

ここ数年の行政・司法判例から見れば、キャッチフレーズ商標は現在、「商標法」第11条第1項第(3)号(その他の識別力に欠くものは商標として登録することができない)及び第10条第1項第(7)号(商品の品質などの特徴又は産地について消費者に誤認を生じさせるもの)という2つの条項によって拒絶されることが多い。そのうち、「商標法」第11条第1項第(3)号が主な適用条項となっている。詳細は以下を参照いただきたい。

2.拒絶査定不服審判事例に対する分析

商標網に公開されている「商標審判裁定/決定文書」の事例データを出所として、一部拒絶査定の不服審判事例を下記のように抽出した。

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A.「商標法」第11条第1項第(3)号について
 
表3にあるように、ここ数年公開された事例から見れば、キャッチフレーズ商標が識別力に欠けることにより、拒絶査定を下された場合、不服審判段階で拒絶理由を解消することは非常に困難である。表3の大部分の事例は、消費者に普通の広告宣伝用語又は非独創的な広告用語と認識されやすく、商品(又は役務)の出所を識別するのが難しいため、商標としてあるべき識別力に欠けると認定された。また、第37691116号の「美団配送 分鐘必達(Meituan delivery, always on time)」、第41998392号の「格力自主創造譲家電 万物互聯一呼百応」(GREE autonomous manufacturing, makes the electric appliances, all connected, all responsive to a single call)などの複数の事例では、出願人が関連商標の使用証拠を提出したが、「出願人に提出された証拠は、登録商標が指定商品又は役務において宣伝・使用されることにより、商標としてあるべき識別力をすでに有しているとは証明できない」といずれも判断された。

もちろん、提出された証拠が十分である場合、例外もある。例えば、表3の事例13と14は、Youku(優酷)社が商標区分第41類で出願した全く同一の商標であるが、指定役務が異なっていたので、登録状況が異なっていた。出願人は、両事例において「這!就是街舞(This! Is Street Dance)」の番組紹介、関連宣伝、使用証拠及びマスコミ報道などの資料を提出した。国家知識産権局(以下、CNIPAという)は、出願人が提出した証拠は、「這!就是街舞(This! Is Street Dance)」という番組がエンタメ業界において既に一定の知名度を有することを証明でき、且つ当該同名のバラエティ番組の宣伝・使用により、当該商標はより高い識別力と顕著性を有するとして、最終的に第29364059号は第41類の娯楽、テレビ文化娯楽などの役務において出所を識別でき、商標としてあるべき識別力があると判断され、その全ての指定役務に対し、予備的査定が下された。一方、同じ第41類で出願された第29384381号商標については、出願人の提供した証拠は、いずれも当該商標がエンタメ業界における宣伝・使用証拠であったため、「書籍を貸し出す図書館」、「当せん金付証票の発売」役務での使用により、役務の出所を識別する識別力を有することが証明できなかったため、上記両役務における出願は拒絶査定され、「実演(演出)の企画・運営」などその他の指定役務における出願に対し、予備的査定が下された。この2つの事例から分かるように、出願人が使用証拠を提出する際に、関連商品又は役務において知名度があることを十分に証明できるか、商標として消費者に識別されやすいかという点にも注意することが必要である。

また、このような拒絶査定不服審判事例において、多くの出願人は、同一又は類似の先行登録商標を提出することにより、その出願した商標が同様に識別力を有すると主張することで、審査官を説得しようとした。例えば、第27709482号商標「心所向馳以恒(Lead to heart, move to persistency)」(商標区分第12類、第37類)の拒絶査定不服審判事例において、出願人は、他人が第35類で登録した同一の第20952947号商標「心所向馳以恒」を提出することで、本件商標が識別力に欠けたことで、拒絶されたわけではないと主張した。しかし、CNIPAは審理を経て、商標審査における個別案件の審査原則に従い、出願人が主張する状況は本件商標とは異なり、比較可能性を有さず、本件商標を予備的査定する根拠にならないと判断した。つまり、中国では、商標の拒絶査定不服審判事例に対して、同一又は類似の先行商標登録例を挙げることは、識別力に欠けるという不備の解消にはさほど効果を有さず、CNIPAは、個別案件の審査原則に従い、出願された商標の指定商品又は役務に基づき、識別力があるかどうかを総合的に判断している。

B.「商標法」第10条第1項第(7)号
 
「商標法」第10条第1項第(7)号には、欺瞞性を帯び、商品の品質などの特徴又は産地について公衆に誤認を生じさせるものは、商標として登録することはできないと規定している。そのため、キャッチフレーズ商標において公衆に誤認を容易に生じさせる語彙があると、CNIPAは「商標法」第10条第1項第(7)号を適用してその商標出願を拒絶することもできる。

例えば、表3の事例17の第21547782号商標「」の拒絶査定不服審判事例において、出願人は、当該出願商標に含まれる「京東」が出願人の企業商号であり、全体として役務の出所を識別する役割を果たしていると主張して、大量の宣伝・使用証拠を提出したが、CNIPAは、本件商標にある「好物低価(good things with low price)」が指定役務において使用されると、関連公衆に誤認を生じさせやすいため、「商標法」第10条第1項第(7)号の規定に違反すると判断した。

また、表3の18の第21762015号商標「」の拒絶査定不服審判事例において、CNIPAは、出願商標が「腸動力常年軽(Bowel power, always young)」だけで構成され、消費者に「腸にパワーがあると、いつも若い(to provide bowel power to keep young all year round)」と理解されやすく、指定商品に用いられると、消費者に商品の機能効果、用途などの特徴に関する誤認を生じさせることで誤った購入を招いてしまう恐れがあるため、「商標法」第10条第1項第(7)号に規定の商標として使用することができない状況に該当する。

つまり、1つのキャッチフレーズが、その指定商品又は役務において使用され、商品の品質などの特徴又は産地について公衆に誤認を生じさせやすいと、当該商標に知名度の高い顕著な部分があり、出願人が大量の使用証拠を提出しても、「商標法」第10条第1項(7)号の拒絶理由を解消し、商標登録を受けることは依然として困難である。したがって、キャッチフレーズの選択においては、関連公衆に誤認を生じさせやすい語彙や表現をできるだけ避けるのが得策である。
 
3.司法訴訟事例に対する分析

キャッチフレーズ商標の登録と保護は、裁判の段階でどう判断されるのだろうか。筆者は、中国国内の知的財産権関連事例のデータベースである「知産宝」から一部の裁判事例を抽出することで、現在の司法実務における裁判所のキャッチフレーズ商標の登録に対する動向及び判断基準をまとめる。
 
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表4における前9件の事例から、裁判所とCNIPAの「商標法」第11条第1項第(3)号の規定に対する判断基準は基本的に一致しているものの、係争商標は、指定商品又は役務においてよく使用される表現であるか、又は直接的な記述用語であるかによって、より慎重に審査が行われていることがわかる。一方、「商標法」第10条第1項第(7)号の規定に対する判断基準は、関連事例が少ないため、二審裁判所も同様に一審判決を維持した表4の事例10「怕上火喝加多宝(Keep the inflammation away, drink Jia Duo Bao)」1例を挙げた。全体的に見れば、キャッチフレーズ商標が識別力に欠けるか、又は誤認を生じさせやすいことで拒絶された場合、訴訟段階で逆転することはなかなか困難である。具体的には、裁判所の判断は以下の4点にまとめられる。

A. 提出された使用証拠が、使用により関連商品又は役務において識別力を有することが証明できない場合、「商標法」第11条第1項第(3)号に規定の状況に該当する。

衆生富公司の「喜迎美好生活(Welcome to the Good Life)」拒絶査定不服審判事例[i]において、衆生富公司がWeChatの公式アカウントで係争商標を使用したことに関する証拠を提出したが、裁判所は、当該証拠が、識別力を有さない広告コピー形式の係争商標が使用によって識別力を有するようになったことを十分に証明できないとして、上訴人の主張を支持しなかった。また、中興通迅公司の「未来,不等待(未来、待ってくれない)」[ii]、シェラトン社の「HOTELS THAT DEFINE THE DESTINATION」[iii]、快歩(厦門)公司の「我要学习去(I want to go study)」[iv]などの類似する事例において、二審裁判所はいずれも「上訴人が提出した証拠は、係争商標が、指定商品又は役務における宣伝・使用により、高い知名度を有し、関連公衆に商品又は役務の出所を識別する標章として見なされる識別力を有するとは証明できない」と認定した。

このように、裁判所とCNIPAの判断基準は基本的に一致しており、即ち、上訴人が、係争商標が指定商品又は役務において高い知名度を有し、商標として識別されやすいと十分に証明できなければ、識別力に欠けるという拒絶理由を解消できない。

B.同一又は類似の登録商標と先に発効した判決はいずれも、係争商標が登録されるべきの根拠にはならない。

モンスターエナジー社の「UNLEASHTHE CAFFELINE FREEBEAST!」拒絶査定不服審判事例[v] において、モンスターエナジー社は、係争商標が商品区分第5類、第29類、第30類、第32類で既に登録されていたことを強調したが、裁判所は、「商標審査は、個別案件の原則で行われ、各商標の構成要素、歴史背景、関連公衆における認知度、商業使用状況などがそれぞれ異なるので、係争商標標章が、司法審査を経ずに、他の商品において登録されたことは、係争商標が識別力を有するとして、予備的査定される根拠にならない」と認定した。

また、ウォーカーブックス社のの「GUESSHOWMUCHI LOVE YOU及び図」拒絶査定不服審判事例[vi]において、裁判所は、上級裁判所による先に発効した裁判の関連認定は通常裁判において参考になるが、先行案件と本件事例のそれぞれの状況を総合的に考慮すべきであり、機械的に適用してはならないと指摘した。また、既に判明した事実に基づき、最高裁判所に先行して判決が言い渡された(2011)行提字第9号において、商標の図形部分及び色の顕著な特徴が考慮された上で、「BEST BUY及び図」の商標は識別力を有すると認定された。しかし、本件において、係争商標は色が指定された商標ではなく、図形部分が縁どり、模様として識別されやすく、識別力が低く、係争商標の図形及び文字部分の組合せを全体として考慮しても、依然として識別力に欠けるとされた。

これらのことから、上訴人が提出した同一又は類似の先行登録商標について、裁判所とCNIPAの観点はほぼ一致しており、商標審査がその商標の形成された時間や環境、証拠状況など様々な条件の影響を受け、他の商標の出願、審査、登録状況と係争商標案件とに必然的な関連性がなければ、係争商標案件の裁判根拠にならない。

C.係争商標が指定商品又は役務においてよく使用される用語又は直接的な記述表現でない場合、このような標章は、スローガンの宣伝効果を有するものの、関連公衆が当該特定のスローガンによって、商品又は役務の出所を識別できるので、「商標法」第11条第1項第(3)号に規定の状況に該当しない。

表4で拒絶理由を解消できた「你好歴史 (Hi History)」「海外有家(A home overseas)」「(Cafe. Waiting. Love)」という3つの事例から、裁判所は関連案件を審理する際に、係争商標が指定商品又は役務においてよく使用される用語又は直接的な記述表現であるか否かということをより重視していることが分かる。

例えば、北京物喜堂公司の「你好历史(Hi History)」事例[vii]において、裁判所は、係争商標が一般公衆によく使われる口頭語や流行語などではなく、常用の名称又は広告用語としても使用されたことがないと判断した。また、北京我愛我家公司の「海外有家(海外に家がある)」事例[viii]において、裁判所は、係争商標が「不動産管理、不動産代理」などの関連役務の直接的な記述用語ではなく、関連公衆に広告用語としても認識されにくく、消費者による関連付けが必要な暗示的商標であると認定した。さらに、安邁進公司の「(Café Waiting Love)」事例[ix]において、裁判所は、係争商標が同社製作の映画名称「等一个人咖啡(Waiting for Love)」を指し示すことで、常用語の「等一个人(waiting for someone)」とは異なる新しい意味を持つようになっていると認定した。係争商標は、常用表現ではなく、特定経営者の経営理念、販促手段、経営技術などの内容も反映しておらず、広告用語などのように商標として関連公衆に識別されにくい標章ではない。

つまり、裁判段階において、キャッチフレーズが関連商品又は役務における常用語又は直接的な記述用語ではないことを証明できれば、大量使用により一定の知名度を有すれば、登録される可能性があることが分かる。

D.商標に誤認を招く表現が含まれると、商標として登録することができない。

王老吉公司の第11064135号「怕上火喝加多宝(Keep the inflammation away, drink Jia Duo Bao)」事例[x]において、二審裁判所は、「怕上火喝加多宝(Keep the inflammation away, drink Jia Duo Bao)」は、元々広告語であり、関連公衆に製品機能に対する宣伝用語と理解され、字面から「逆上せることが心配なら、加多宝を飲もう)」という意味が読み取れ、すなわち、その指定商品が逆上せを予防し、ひいては逆上せを下げる医療効果、保健効果を有するとして、指定の医療用栄養ドリンクなどの商品に使用されると、関連公衆に係争商標の付く食品又は飲料が逆上せを予防し、ひいては逆上せを下げる医療・保健効果があると連想されるので、「怕上火喝」という用語は公衆の誤認を招く恐れがあると認定された。係争商標が「商標法」第10条第1項第(7)号の規定に違反しているという一審判決と訴えられた審決の認定は妥当であるとされた。そこで、商標に誤認を招く表現があれば、訴訟段階でもその拒絶理由を解決するのは極めて困難である。

.キャッチフレーズ商標の登録可能性を高めるためのアドバイス

1.できるだけ識別力又は独創性の高い語彙を選ぶこと

キャッチフレーズ商標は、通常、指定商品若しくは役務に対してある程度の描写性があるか、又は指定商品若しくは役務と直接の関連はないものの、企業の経営理念上の主張や追求を表しているので、消費者に商標として認識されにくく、商標として識別力に欠けている。では、キャッチフレーズ商標の識別力に欠けるという不備を如何に解消すればよいのか。筆者は、下記のいくつかの方法によって、キャッチフレーズ商標全体の識別力をある程度高めることができるのではないかと思う。

 

 

 
2.キャッチフレーズに単なる記述性又は誤認を招きやすい記述表現をできるだけ避けること。
 
キャッチフレーズを選択する時、単なる記述性、又は商品若しくは役務の機能と用途などの特徴を直接的に表す語彙、製品の効果と関連づける語彙をできるだけ避けたほうがよい。例えば、東鵬飲料公司が第32類のエネルギー飲料、植物飲料などの商品で出願した第41470489号「(When tired and sleepy, drink Dong Peng Special Drink)」商標は、飲料製品の特徴と効果に関わるということで、拒絶された。一方、福建楽摩物聯公司が第35類の輸出入代理、他人への販売促進などの役務で出願した第41438545号の「 (When tired and sleepy, Le Mo Bar/Please Le Mo)」は、関連役務の特徴を直接に示していないので、無事登録できた。

もちろん、前述したように、「怕上火喝加多宝 (Keep the inflammation away, drink Jia Duo Bao)」や「腸動力常年軽 (Bowel power, always young)」など誤認を招きやすい表現もできるだけ避けるのが得策である。さもなければ、関連商品又は役務において大量に使用されても、商標法上の保護を受けることができない。
 
3.組合せによって商標全体の識別力を高めること

実務において、識別力のないキャッチフレーズと識別力のある文字、図形、数字、アルファベットなど標章の組合せによって、商標全体に識別力を持たせることができる。例えば、商標に識別力の高い文字や図形を加えて、際立った標識が注意を引けば、商標全体の識別力をある程度高めることができる。


 
もちろん、識別力のある文字や図形を加えても、必ずしも登録できるわけではない。例えば、下表の格力社の例に示されるように、同社の商標「格力」が加えられたが、際立って表示されていないため、当該商標は関連公衆に「格力」ブランドの広告宣伝と認識されやすく、全体として商品又は役務の出所を示すものと見なされない。したがって、当該事例も「商標法」第11条第1項第(3)号に違反するとされた。
 

 
4.宣伝力をより強化し、関連する宣伝証拠を保存すること

前述のように、CNIPAであっても、裁判所であっても、キャッチフレーズ商標については、固有の識別力と識別力の獲得という両面から総合的に審査する。もし、企業のキャッチフレーズが固有の識別力に欠けると、宣伝力をより強化し、その広告宣伝証拠を積極的に収集することで、実際の大量宣伝と使用によって、その商標自体が使用によって識別力を獲得することが期待できる。例えば、前述の第29364059号「這!就是街舞(This! Is Street Dance)」の拒絶査定不服審判取消案件において、Youku社は、その提出した大量の使用証拠によって、係争商標がエンタメ業界で知名度を有することを証明でき、CNIPAに認められ、第41類の娯楽役務、テレビ娯楽番組などの関連役務において成功裏に登録された。
 
.結語

現在、激しい市場競争の環境において、独自のキャッチフレーズを選んで企業文化と製品の内在的要素をはっきり示すことは、企業の経営活動と緊密に結びつき、企業が市場競争で勝ち抜く重要なポイントとなっている。そのため、キャッチフレーズも徐々に企業の重要な無形資産になっている。前述したように、独創的なキャッチフレーズ、製造元を識別できる広告用語のいずれも、登録によって商標法上での保護を受けられる。また、キャッチフレーズの保護については、著作権法による著作物保護も考えられる。もちろん、「有涼風無風感(There is cool breeze but no feeling of coolness」[xii]など類似した商標自体は識別力がないものの、実際の使用及び経営活動で特定の企業と関連づけさせるキャッチフレーズに対して、企業は、当該キャッチフレーズ自身の特徴に基づき、その実際状況と市場需要を結びつけて、不正競争法による保護を求めることもできる。
 

[1] 中国商標局のオンラインデータベースである。
 

[i]北京市高等裁判所(2020)京行終6312号判決書
[ii]北京市高等裁判所(2019)京行終1206号判決書
[iii]北京市高等裁判所(2018)京行終5443号判決書
[iv]北京市高等裁判所(2018)京行終5280号判決書
[v]北京市高等裁判所(2019)京行終2789号判決書
[vi]北京市高等裁判所(2020)京行終5689号判決書
[vii]北京市高等裁判所(2020)京行終2566号判決書
[viii]北京市高等裁判所(2018)京行終99号判決書
[ix]北京市高等裁判所(2016)京行終5103号判決書
[x]北京市高等裁判所(2018)京行終1041号判決書
[xi]北京市高等裁判所(2015)高行(知)終字第3799号判決書
(2021)
 

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