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インターネット証拠の審査と収集


北京林達劉知識産権代理事務所

はじめに

インターネット証拠とは、さまざまなネットワーク端末から取得した情報担体のことを言う。私たちの身近にある携帯電話のショートメール、電子メール、リアルタイムにブロックされるウェブページ及びウェブページ上の動画・写真などは、いずれも事件の事実を証明するためのインターネット証拠となり得る。知的財産権事件では、インターネット証拠を適用することが比較的多い。例えば、特許無効審判事件では、当事者は、よくインターネット上から収集した写真、動画などによって、ある発明がすでに特許出願前に公開され、新規性が欠如するということで、特許を受ける資格を喪失していることを証明している。また、著作権侵害事件においては、インターネット上で当事者の許諾を得ずに発表されたネット小説自体が、侵害対象となるだけではなく、侵害行為の存在を証明するインターネット証拠にもなる。したがって、インターネット証拠は、電子証拠の一種として、すでに知的財産権に係る司法や法執行の過程において、軽視できない証拠のタイプとなっていると言える。

通常、インターネット証拠は、電子データの証拠の一種であり、電子データの証拠に関連する法規に基づいて審査しなければならない。現在、中国では電子データの証拠に関連する法律・法規は多くなく、主に改正版『民事訴訟法』第63条第1項第(5)号と改正版『刑事訴訟法』第48条第1項第(5)号における電子データの証拠に関連する規定を適用している。上記の規定によれば、インターネット証拠を含む電子データは、新たな証拠形式としてすでに民事訴訟法と刑事訴訟法に記載され、合法的な証拠の形式となっている。しかし、インターネット証拠の審査基準、証拠収集方式及び公証・認証などについてはいかなる規定もされていないため、実務上、証拠の一般的な原則に基づいて証拠を調査・確認している。すなわち、証拠の客観的な真実性、関連性及び合法性という3つの視点のみからインターネット証拠の採用可否を判断している。

また、インターネット証拠は、何時でも何処でもネット上から取得でき、比較的容易に痕跡を残さず修正できるという特徴を有する。かかる特徴は、インターネット証拠の適用過程において、多くの紛争の原因にもなっている。どうしたらインターネット証拠を効果的に取得できるのかということは、知的財産権分野は勿論、司法手続き全般においても注目すべき問題である。本文では、実務の中からインターネット証拠に関する審査基準を探索することで、将来の知的財産権訴訟及びその他の手続きにおけるインターネット証拠取得において参考的役割を果たせることを期待している。

I. インターネット証拠の審査実務

(1)客観的な真実性に対する審査

インターネット証拠の客観的な真実性は、インターネット証拠の証明力に影響を与える最も重要な要素である。しかし、大多数の事件において、主にインターネット証拠資料は修正される可能性があるため、証拠資料は、客観的な真実性を喪失し、採用されないことが往々にしてある。インターネット証拠の客観的な真実性については、主にインターネット証拠の表現形式、ウェブサイトの内部の管理メカニズム、ウェブサイトと当事者間との利害関係、インターネット証拠の形成、インターネット証拠の保存、インターネット証拠の送信と受信、インターネット証拠の収集、インターネット証拠の完全性などから審査・認定すべきである。すなわち、インターネット証拠が有するデータ自体の修正痕跡が消失するという特徴によるインターネット証拠の客観性判断は、主にインターネット証拠が修正されたか否かに基づくものとする。

たとえば、湖南快楽陽光互動娯楽伝媒有限公司(以下「快楽陽光社」という)が郴州市長虹網吧を訴えた著作権侵害紛争事件1において、原告快楽陽光社は、被告郴州市長虹網吧が営利目的のために経営するネットバー内に映画・テレビ番組リクエスト業務を設け、ユーザーに対して係争テレビ・ドラマのオンライン放送サービスを提供していたことを証明するために、裁判所に証拠6点を提出した。そのうち、証拠5は、郴州市福城公証役場(2010)湘郴福証字第0532号公証書で、郴州市長虹網吧が許諾を得ずに『醜女無敵(中国版アグリー・ベティ)』(第二部)というテレビ・ドラマのオンライン放送サービスを提供していたことを証明するものであった。また、証拠6は、『醜女無敵(中国版アグリー・ベティ)』(第二部)のインターネット情報をプリントアウトしたもので、『醜女無敵(中国版アグリー・ベティ)』(第二部)の初回放送時間が2009年1月12日であったことを証明するものであった。裁判所は、快楽陽光社が提出した証拠を審査し、証拠5は、客観的で真実性と合法性を有し、本事件を判定する証拠として採用すべきであると認定したが、証拠6については、出所が不明確なので、証拠として採用できないと認定した。証拠5が採用された原因は、当該証拠に対して、湖南省郴州市福城公証役場が2010年3月24日午後、被告郴州市長虹網吧に対して次の保全行為を実施したことを示したからである。

① ネットバーの受付で登記手続きを行い、アクセス番号を受領し、ランダムに選択したコンピュータを起動させ、アクセスカードにある内容を入力して、コンピュータのデスクトップを起動させた。

② コンピュータに公証人から提供されたUSBを接続し、ソフトウェア「スクリーンビデオ専門家専業版」をセットアップし、かつ、当該ソフトウェアを利用してコンピュータを操作する過程のスクリーンを録画した。

③ コンピュータのデスクトップにおける「五州映画館」ショートカットをクリックし、ウェブサイトアドレスwww.5zfilm.com:59000/index.aspにアクセスし、「醜女無敵」を検索し、テレビ・ドラマ「醜女無敵第二部(全)」をクリックして第2、28、43、64回を放映した。

④ スクリーンビデオをUSBに保存した後、USBを外して担当公証人に渡した。

湖南省郴州市福城の公証役場は、上記の公証書に貼り付けられていた光ディスクは、現場の録画した内容を書き込みしたもので、その内容と現場の操作経過は一致していることを証明した。湖南省郴州市福城の公証役場は2010年5月13日に(2010)湘郴福証字第0532号公証書を発行した。そのため、裁判所は、公証書に記載された内容は、インターネット証拠の出所が客観的で、真実性を有し、有効であると証明できると判定した。したがって、当該証拠は証拠として採用された。

また、特許審判委員会(以下「審判委員会」という)が2010年11月10日に下した第WX15568号特許無効審決において、無効審判請求人は、国家知的財産権局が2010年3月10日に登録公告した第200930309077.7号、名称「包装箱(装飾品)」の意匠権について無効審判を請求した。当該事件において、請求人は、係争意匠における図面が出願日前にすでに中国義烏小商品共同購入サイトで公開されていたことを証明するために、公証を経たインターネット証拠を提出した。審判委員会は、審査を経て、通常、信頼性が比較的高いウェブサイトから収集したインターネット証拠は、比較的強い証明力を有すると認定した。インターネット情報に関する証拠の公開時間に対して異議を申し立てられた場合は、無関係な第三者、ネットワークサービスプロバイダーが提出した証拠を考慮することができる。www.ccctg.comは、中国義烏小商品共同購入サイトのアドレスとして商品・商況の提供や広告の発表などに用いるが、当該サイトは、掲載されている内容から商業サイトに該当するが、その知名度は、当該サイトが信頼度の高いウェブサイトに該当すると認定するには十分ではなかった。さらに、当該サイトが情報を発信する目的と方法によれば、一部の商品を提供する経営者又は情報提供者は、自ら自社商品に係る各種情報を修正することができる。したがって、中国義烏小商品共同購入サイトで提供情報されたの発表期日は、一定の不確定性を有するので、当該証拠は採用されるには到らなかった。

上記の2つの事件によれば、主観的な視点からインターネット証拠の出所について、当事者との具体的な利害関係を有するか否かを分析した場合、若しくは、客観的な視点からインターネット証拠が修正される可能性を有するか否かを分析した場合、インターネット証拠の客観的な真実性に影響を与える重要な要素は、主にインターネット証拠の出所である。したがって、無関係な第三者から収集し、技術上の修正が不可能な、若しくは未修正状態を証明できるインターネット証拠こそ、認められる可能性がより大きいと言える。

(2)合法性の審査

証拠の合法性とは、証拠の形式、証拠の収集主体、及び証拠収集の手続きが合法的であることを言い、実体の合法性と手続きの合法性を含む。インターネット証拠は、証拠の特殊な形式として、同様に合法性を満たさなければならない。

実体の合法性について、上述の説明のとおり、最新改正版の民事訴訟法及び刑事訴訟法には、電子データはすでに証拠種類の1つとなり、インターネットデータも電子データの範疇内に入るので、法律に認められた法定証拠の一つとなっている。『民事訴訟の証拠に関する最高裁判所の若干の規定』に基づき、すでに有効な公証文書により証明された事実について、当事者には挙証責任がない。インターネット証拠がますます広範に使用されるにつれて、公証手段でインターネット証拠を保全することは、インターネット紛争を防止・解決するための有効なルートとしてますます重要になっている。しかし、実務上、インターネット証拠を公証・認証に導く法律・法規がないため、インターネット証拠の「原本」はどれなのか、如何に当該原本を公証すればよいかなどについては、いずれも経験によって決定しなければならない。

手続きの合法性について、通常、公証・認証を経たインターネット証拠が手続き上、合法でないという情状は極めて少ない。しかし、仮に公証前に使用していたコンピュータやネットワーク装置などを整理せず、かかる装置における情報の安全性が確保できず、しかも、公証を経たウェブページが比較的信頼性の高いサーチエンジンでアクセスして得たものではなく、ブラウザーのアドレス欄にウェブページアドレスを入力して直接得られた場合、インターネット証拠の出所が確定できないので、当該証拠には合法性がなくなってしまう。

たとえば、北京網尚文化伝播有限公司と海南佳禾民航酒店管理有限公司間の情報ネットワーク伝達権紛争上訴事件2に係る二審の争点は、本事件の訴訟時効が法的規定を満たすか否かであった。「著作権民事紛争事件の審理における適用法律の若干の問題に関する最高裁判所の解釈」第28条の規定に基づき、著作権侵害に係る訴訟時効は2年で、著作権者が侵害行為を知る又は知るはずの期日から計算する。数回の侵害行為が存在し、若しくは、侵害行為が持続状態にある場合について、その「侵害行為の発生日」は、「最後の侵害行為の発生日」と理解すべきである。本事件における議論の的となった期日は2009年3月5日で、当該期日を本事件の訴訟時効の起算点とすべきか否かについて、各当事者の意見はそれぞれ異なっていた。裁判所は、2009年3月5日を本事件の訴訟時効の起算点とすることができるか否かについては、「第03469号公証書」を以って佳禾公司が2009年3月5日に侵害行為を実施したことを証明できるか否かに拠ると認定した。裁判所は、調査を経て、本事件において公証による証拠収集のために用いた部屋及びコンピュータは、公証前に公証人が制御していたものではなく、また、公証人が任意に指定したものでも、、ホテルの受付で任意に手配したものでもなく、当時まで網尚公司の委託代理人である劉晋卿が実際に制御していたものであることを明らかにした。技術上、仮想世界にある対象ウェブページと真実なインターネットウェブページが共存できることに鑑み、当事者が提出したインターネット侵害の公証証拠については、インターネット環境とインターネット証拠の具体的な状況に基づき、かつ、電子証拠の審査における真実性と完全性の基準に準じて公証付で証明したインターネット情報が当地のコンピュータではないネットワークから収集したものか否かを審査し、さらにこれらの内容を基にして公証書を事件判定の根拠とすることができるか否かを決定した。「第03469号公証書」には、公証人が当該コンピュータとモバイルハードウェアの清潔性について検査したか否かについては記載されていない。当該公証書は、公証人の前で公証書に記載した行為が発生したことを証明することはできるものの、当該行為がネットワーク環境の中で発生したことを証明するには不十分である。また、「第03469号公証書」は、海口佳禾快捷賓館4009号室にあるコンピュータで係争映画・テレビ著作物が再生できることを示していたものの、再生画面にはいずれも具体的なネットアドレスが記載されておらず、具体的な侵害ウェブページも記載されず、係争著作物のリンクアドレスや記憶位置などの情報データもなく、係争著作物自体が公証用のコンピュータハードウェアに保存され、公証書に添付したスクリーンショット画面が直接当該コンピュータハードウェアから取得され、インターネットから取得されたものではない可能性を排除することができない。当該実例を通じて、公証付で保全したインターネット証拠は、必ず関連法律の規定を満たさなければならず、インターネット証拠の出所を確定できない場合は、当該インターネット証拠は採用されない。

(3)関連性の審査

インターネット証拠の関連性、すなわち、インターネット証拠の内容と証明予定事実との間に存在するある関係は、インターネット証拠に、証明予定事実であると証明できる効力、又は証明予定事実に反証できる効力を持たせることができることである。実務において、証拠の関連性の不確かさは、証拠の証明が、証明予定事実自体ではなく、それに関連するその他の事実にあることが示されている。

たとえば、審判委員会2009年5月7日付第WX13337号無効審決において、無効審判請求人は、特許が出願前にすでにインターネットで公開されていたことを理由に2006年8月9日に登録された名称が「壁付ホルダー」の第200530070012.3号意匠権を無効にするよう請求した。審査過程において、請求人は、公証・認証を経たインターネット証拠を提出したが、その内容は、2009年1月13日付ウェブページに製品の情報がすでに公開されていたことを公証したものであり、同証拠にはインターネット情報からプリントアウトした証拠(合計72頁)が添付されていた。当該証拠にはインターネットからプリントアウトした証拠についてインターネットで検索した経過などが記録されていた。審判委員会は、公証書の形式でインターネット証拠の保全を行った場合、証拠の公開期日を示す関連情報がなく、公証の期日が本件意匠の出願日より遅い状況下で、当該証拠は、本件意匠が「特許法」第23条の規定を満たすか否かを判断するための証拠にならないと判断した。

また、張某(氏)と上海朗某情報科技有限公司との間の情報ネットワーク伝達権侵害紛争上訴事件3において、上訴人張某は、二審開廷審理時に補充証拠として(2011)滬東証字第14025号公証書を提出した。当該公証書は、張某が2011年7月1日、上海市東方公証役場で同公証役場のコンピュータを使って、紅薯網(ウェブサイト名)にログインし、かつ、同サイトのユーザーとなる登録過程全般を録画したものであった。上訴人が上記証拠を提出したのは、いかなる者でも登録を経て紅薯網のユーザーになるには、いずれも相応する電子メールアドレスを入力する必要があることを証明するためであった。被上訴人朗某公司は、証拠の関連性に対して異議を提出した。被上訴人は、上訴人の提出した公証書は、2011年7月1日にユーザー登録時にメールアドレスを入力する必要があることを証明することができるだけで、係争著作物をアップロードしたユーザー「梅以格」は2010年7月9日に登録した者であると主張した。紅薯網は、その初版が2009年12月25日にアップロードされて以来、今までに6回バージョンアップされている。以前は、紅薯網でユーザー登録をする際に、電子メールアドレスを入力する必要はなかった。被上訴人は、上記の主張を実証するために、(2011)京東方内民証字第5741号公証書を反駁の証拠として提出した。当該公証書は、「梅以格」と同日に紅薯網にユーザー登録したその他ユーザー「kangushi」、「九曲幽冥」の登録資料であった。上訴人は、当該証拠の真実性、合法性、関連性のいずれに対しても異議を提出した。二審裁判所は、当事者双方が補充提出した証拠を総合的に考慮した結果、上訴人張某と被上訴人朗某公司が提出した証拠はいずれも本事件の事実との関連性を有しないと認定し、採用しなかった。

上記の2つの判例から、関連性は、インターネット証拠が証明予定事実を証明できることが前提となることが分かる。公証又はその他の形式によりインターネット証拠の真実性を証明でき、かつ、裁判所の審査により証拠の合法性を検証したことに基づいても、インターネット証拠が証明予定事実との関連性を有しない場合は、証拠として採用されない。

II.インターネット証拠の収集

1.インターネット証拠の選択時における留意点

(1)インターネット証拠の出所を証明する情報の留保

インターネット証拠は、機密性、修正容易性を有するので、その他に証明する証拠がない場合、インターネット証拠自体のみでは証拠の真実性を証明するには不十分である。実務上、証明予定事実を証明するために、インターネット証拠の客観的な真実性を高める最もよい方式は公証である。しかし、法律に基づく公証を経た後も、インターネット証拠には、依然として瑕疵を有する可能性があるので、当事者は、インターネット証拠の真実性及び合法性を証明する際、ウェブサイトの性質、規模、知名度、情報管理方式及び当事者との利害関係の有無などの情報を反映できる資料を残しておくことに留意し、上記の証拠とインターネット証拠で証拠チェーンを形成させることにより、インターネット証拠の証明力を強化しなければならない。たとえば、ウェブサイトが国家工業信息化部に認証された情報、ウェブサイトドメイン名のwhois情報などは、いずれもウェブサイトの出所又は背景を示すことができるものである。かかる情報を残すことは、インターネット証拠の真実性の説得力を向上させるのに有利なので、証拠がより容易に採用されている。

(2)信頼性の高いウェブサイトからの証拠収集

インターネット証拠が多数の異なるサイトに存在している状況下で、できるだけ信頼性のある高いウェブサイトを選択して証拠を収集すべきである。たとえば、国家行政機関の公式サイト、変更が少ない非政府組織(NGO)の公式サイト、及びその他当事者による変更が不可能で、かつ、インターネット証拠自体の変更が困難なウェブサイトなどである。また、信頼性の高いウェブサイトのリンクもできる限り公知されているBaidu又はGoogleなどのサーチエンジンを利用するほうがよい。仮に手動入力する場合は、ウェブページがインターネット上で開かれたものではなく、事前にコンピュータに保存されていたものではないかとの疑念が生じ得る。特に、ウェブサイトの変更可能状態について判断できないときには、ウェブサイトのバックグラウンド情報の未修正事実について公証を行うことによって、インターネット証拠が客観的な真実性を有することを証明することが重要である。なお、インターネット証拠の真実性を考察する際、ウェブサイトと当事者との間の利害関係により証拠の客観性が喪失される可能性があるので、仮に当事者が直接又は間接的に経営するウェブサイトから取得したインターネット証拠は、採用されないことが明らかである。

(3)公証日と証拠形成日との間の間隔の短縮

インターネット情報が比較的容易に修正されることに鑑み、インターネット証拠が形成された後で公証を行ったり、法廷でデモンストレーションをしたりする場合、いずれも証拠の形成日と合致しない可能性が生じるので、容易に疑問を持たれることになる。したがって、当事者は、証拠の最初の状態を維持するために、インターネット証拠を見つけ次第、直ちに公証を行うべきである。実務上、当事者が公証を経てインターネット証拠を保全した後、法廷でデモンストレーションをする場合、かつて公証時に検索取得した証拠を取り出せないと、証拠が採用されない結果にもなりかねない。かかる状況の発生を回避するためには、できるだけインターネット証拠の形成日と公証日との間の間隔を短縮することにより、有効に証拠と証明予定事実との関連性を確保すべきである。

2. 科学的な公証進行

公証制度とは、「眼見為実(目で見たものの確実性)」という原則に基づいて証拠自体を証明することを言う。しかし、当該原則は、すでにインターネット証拠の複雑性に打破され、仮に自ら検証したインターネット証拠ですら、その真実性が疑われる可能性がある。したがって、インターネット証拠に対する公証が、その他の公証と異なっていること(留意点)に鑑み、当事者は、インターネット証拠に対する公証・認証の進行過程において、公証の場所、方式などに十分な注意を払わなくてはならない。

(1)インターネット証拠の公証場所と関連装置

数多くの判例における経験から、公証役場のコンピュータから収集し、かつ、公証を行ったインターネット証拠は、より容易に利害関係者に認められ、裁判所にも採用されている。仮に公証役場で収集できない場合は、公証役場以外の場所で証拠保全を行わなければならず、公証人は、公証を行う際に、現場で場所、時間、参加者、ネットアクセス装置、接続手法、接続経過について詳しく記録し、公証役場ではない場所のコンピュータを使う時には、公証申請人がそのコンピュータを修正し、若しくは、法による公証進行に影響を与えるその他行為を取らないよう防止するため、ハードウエア環境に対する考察及びインターネット接続の確認を厳重に行わなければならない。

(2)証拠収集の過程における瑕疵の防止

インターネット証拠の収集に係る公証を行う際、公証申請人は、事前に詳細な書面による操作フローチャートを提供する必要がある。公証人は、操作フローチャートを詳細に審査し、保全の内容と操作の手続きを正確に把握できない場合、直ちに専門技術者に確認し、必要に応じて専門技術者に証拠収集過程に立ち会ってもらう必要がある。証拠の収集時、操作者は、事前に制定した厳しい操作フローチャートに基づいて操作しなければならない。公証人は、現場で操作過程の各ステップに対して詳しく記録しなければならず、必要に応じて保全過程を録画してもよい。

(3)インターネット証拠形態に応じた相異保全措置

インターネット証拠は、電子証拠であるので、一般証拠の特徴以外に多重性、変更可能性などの特徴も有する。通常、ウェブページ、写真ファイル、プログラムファイル、マルチメディアファイルなどの形態で表される。

一般ウェブページと写真ファイルについて、通常、同時にプリントアウトする方式を採用して保全を行っている。かかる方式の操作は、比較的簡単であり、中間ステップが少なく、直接ブラウザーにおける印刷機能を利用することで実現できる。その際、デスクトップページの全面印刷を保証するために、印刷前にプリンターのパラメーターを設定し、必要に応じては比率を縮小して印刷するなど注意を払う必要がある。また、ウェブページにフラッシュ又はその他プラグインなどのソフトを設けているデスクトップについて、キャプチャーを採用したり、第三者ソフトウエア記録画面のスクリーンショットを使用したり、又はコンピュータ操作の全て過程に対して現場にて録画撮影方式を採用したりして保全することにより、ウェブページの状態を最大限に反映して固定することができる。また、プログラムファイルとマルチメディアファイルについては、通常、コピーする方式を採用して保全している。すなわち、データをそのまま物理的な記憶媒体(モバイルハードディスクやディスク)にコピーして保存することである。モバイルハードディスクやUSBなどの装置を使うとき、当該電子装置に対して事前に「クリーン処理」を行う必要がある。すなわち、記憶媒体に対して「フォーマット」、「ウイルス駆除」などの方法で保存したデータの真実性とデータの出所の唯一性を確保しなくてはならない。すなわち、保存したデータを再度開いて検査し、かつ、ウイルスの有無を再度検定することである。ディスク媒体に電子データを保存する場合、電子データのタイプとデータの容量に基づいて記憶媒体(CDかDVDか)を選択する。当該方法は、経済的で技術上に生じる障碍を回避することもできる。たとえば、ビデオなどのマルチメディアデータは、読み取れないことを防止するために、DVDにコピーして保存したほうがよい。ディスクに保存した後は、直ちに封印すべきである。公証人は、保存方式、記憶設備の類型、電子設備の「クリーン検査」、ファイルダウンロード時間、ディスク記載記録時間、ディスク記録部数などを含む証拠保全過程に対して、全面的でかつ詳細な作業記録を行わなくてはならない。証拠の収集過程に発生した停電、インターネット信号の中断、ダウンロード過程の中断などの状況も如実に記載する必要がある。

結び

コンピュータ技術の発展及びネットワークのさらなる普及につれて、インターネット証拠は、ますます重要となり、事件の勝敗を決定付けるキーポイントとなる可能性が極めて高い。

弊所は、これまで多くの無効審判請求事件及び知的財産権紛争訴訟事件を取り扱う中で、大量にインターネット証拠を利用することにより、インターネット証拠収集に係るさまざまな経験を積み重ねてきた。

本文では弊所の経験に基づき、インターネット証拠の審査基準及び収集における留意点をまとめたが、少しでも読者の皆様の役に立てば幸いである。

弊所は今後も、これらの経験を活用して、より効果的にインターネット証拠を利用できるように、関連サービスを提供していく所存である。
 
(2013)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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