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「特許審査指南」の改訂に関する紹介--意匠出願編


北京林達劉知識産権代理事務所
中国弁理士
王 雪(Xue Wang)
 
中国国家知識産権局(CNIPA)は2019年9月23日に、「特許審査指南」の改訂に関する第328号公告を公布し、当改訂が2019年11月1日から施行すると発表した。そのうち、意匠出願に関する改訂は、主にGUIに係る意匠出願及び遅延審査制度の導入という2点を含む。
 
海内外の出願人が今回の「特許審査指南」における意匠出願に関する改訂内容をよりよく理解するために、弊所は関連内容を整理の上、改正前後の実務操作を対比してご参考までに下記のようにご説明する。
 
1.GUIについて
 
  具体的な改訂内容 改訂前後の説明
 
製品の名称
GUIを含む製品意匠の名称は、GUIの主な用途及びこれを適用する製品を明示し、通常「GUI」というキーワードを含む必要がある。例えば、「温度制御GUI付き冷蔵庫」、「ビデオ・オン・デマンドGUI付き画面表示パネル」。
例えば、「ソフトウェアGUI」、「操作GUI」のような大まかな「GUI」の名称のみを製品の名称とすることは認められない。
改訂前には、主な用途を製品の名称に明示するのを要求しなかったが、今回の改訂により、それを明記しなければならなくなる。
また、今回の改訂キャリヤーは「画面表示パネル」までに拡大することができる。
動的GUIの製品名称では「動的」というキーワードを含む必要がある。例えば、「携帯電話の天気予報の動的GUI」。  改訂前には、製品の名称に「動的」という表現を要求しなかったが、改正後には、それを明記しなければならなくなる
意匠の図又は写真  
創作要素がGUIのみにある場合、当該GUIを含む画面表示パネルの正投影図を少なくとも1枚提出しなければならない。
最終製品におけるGUI意匠の大きさ、位置及び比例関係を明示する必要がある場合、GUIに係る面の最終製品の正投影図を1枚提出する必要がある。
改訂後に提出される図面は改正前と実質的に同じである。
そのキャリヤーが「画面表示パネル」までに拡大することができるということで、「画面表示パネル」という名称で提出されるのは、必ずしもGUIに係る面の最終製品の正投影図を1枚提出する必要があるとは言えないが、その大きさ、位置及び比例関係を特に明示する必要がある場合、それを提出すればよいと考えられる。
GUIが動的模様である場合、出願人は少なくとも1つの状態でのGUIに係る面の正投影図を正面図として提出しなければならず、それ以外の状態については、GUIのキーフレームの図面のみを変化状態図として提出すればよいが、提出する図面から、動的模様におけるアニメーションの完全な変化過程を一義的に特定できることを確保しなければならない。変化状態図に名付ける際に、動的変化過程の順序に従って名付ける必要がある。 
 
改正前と実質的に同じである。
投影装置を操作するためのGUIの場合、GUIの図面に加えて、投影装置を明示する図面も少なくとも1枚提出しなければならない。 
 
改正前と実質的に同じである。
 
簡単な説明
GUIを含む製品意匠について、簡単な説明にてGUIの用途を、製品の名称に反映される用途に対応するように明確に説明しなければならない。
 
改正前と実質的に同じである。
当該GUIを含む画面表示パネルの正投影図のみ提出した場合、例えば、「当該画面表示パネルは携帯電話、コンピューターに適用される」というように、当該GUI画面表示パネルを適用する最終製品を網羅的に枚挙する必要がある。 「画面表示パネル」をキャリヤーとする場合、その適用される最終製品を網羅的に枚挙する必要があり、且つ「等」という表現の利用は許さない。
多種類の適用可能の最終製品を提出したほうがよいとアドバイスする。
場合によっては、製品におけるGUIの領域、HCI[1]形態及び変化過程等も説明する。  改正前と実質的に同じである。

まとめ

GUIに関する最大な改訂変化は、製品の名称が主な用途を反映すること、及びそのキャリヤーが携帯電話、コンピューターなど最終製品に限らず、「画面表示パネル」がキャリヤーとして出願できることを追加することにある。

製品の名称が主な用途を反映することについて、例えば、改訂前に、製品名称はその主な用途を明示する必要がなく、「携帯電話のGUI」とすればよかったが、改訂後には、例えば、地図ナビゲーション機能付きGUIは、「携帯電話の地図ナビゲーション用のGUI」又は「地図ナビゲーションGUI付き画面表示パネル」を名称とする必要がある。

「画面表示パネル」がキャリヤーとして出願できることにより、1件の出願において異なる製品に適用される同一のGUIを保護するという目的の実現が図れる。

しかし、2019年11月1日までに、出願人は、異なるキャリヤーに対して複数の意匠出願をするか、又は1つの最終製品をキャリヤーとして1件の意匠出願をするしかできない。部分意匠制度のない状況下で、意匠権の保護範囲がGUIのキャリヤーとする最終製品に制限されるため、GUI意匠は、その権利行使においてかなりな困難に直面すると思われる。例えば、インターフェースが同一又は類似であるが、被疑侵害品とGUI意匠の最終製品とが異なるため、権利侵害にならない可能性もある。

「画面表示パネル」をキャリヤーとする内容の追加により、GUI意匠が最終製品の種類に制限され、権利行使難という課題の解決は期待できるが、「特許審査指南」の今回改訂が所望の効果を収めるは、今後の関連司法判例を通じて証明することが望まれる。
 
2.遅延審査について

出願人は、発明特許出願及び意匠出願に対して遅延審査請求を行うことができる。意匠の遅延審査請求は、出願人が意匠出願と同時に行わなければならない。遅延期間は、遅延審査請求の発効日から1年、2年又は3年である。

遅延期間が満了した後、当該出願は順番に従って審査を受ける。場合によっては、CNIPAは自発的に審査手続きを開始するとともに出願人に通知することができ、出願人が請求した遅延審査期間は終了する。
 
まとめ:

中国では、意匠出願は通常、出願日から4ヶ月~6ヶ月間で授権公開されるが、数多くの特許製品は設計後にすぐ生産を始めないか、又は製品自身の生産サイクルが長いため、出願人は、製品発売前にその意匠権が早めの公開により公衆に知られることを望んでいないからである。したがって、公開時間をできるだけ遅らせるように、出願人は通常、形式的な不備を作ることによって、授権時間を適切に長引かせるしかできない。しかし、中国が遅延審査制度を導入した後、出願人は実際の状況に応じて、1年、2年または3年の遅延期間を選択することができ、多様な製品の多様なニーズを満たすことができる。

ただし、遅延審査請求を一旦行ったら、その取消が認められない。そのため、出願人は出願日に、具体状況に応じて適切な遅延期間を選択する必要がある。例えば、少なくとも2年後の公開を希望する場合、2年の遅延期間を選択したほうがよい。このようにして、正常な審査時間にも加え、通常2年半ぐらい授権公開が見込まれる。

それに、「場合によっては、CNIPAは自発的に審査手続きを開始するにある「場合によっては」とは、一般的に、国家利益又は公共利益に影響を与える特許出願を指し、国務院特許行政部門が、その遅延審査請求を職権により終了することで、通常な審査プロセスに入らせることができる。意匠とは、製品の形状、模様又はそれらの組合せ、及び色彩と形状、模様の組合せについて出された、美感に富み、工業的応用に適した新しいデザインをいうものである。そのため、通常、意匠出願は国家利益又は公共利益への影響にならないから、この点を考慮しなくてもよい。

今回の「特許審査指南」における意匠出願に関する改訂は出願人に有利であり、CNIPAがGUI意匠分野の発展トレンドに順応し、遅延審査制度の出願人に対する重要性などを十分に考慮した上で、審査面から出願人の権益をより強く保護するようという姿勢が見られる。
 

[1]ヒューマンコンピュータインタラクション
(2020)


ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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