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中国特許出願に係る手続き問題について


北京林達劉知識産権代理事務所
特許管理部
 
要約: 中国の経済及び知的財産権の発展に伴い、中国の世界知的財産権はますます重要になっている。外国からの特許出願はより多くなり、最も簡潔な手続、最も低いコストで、中国で特許権を取得するかが、外国出願人にとって重要な問題になってきた。拙文では、出願手続の面から、中国特許出願に係る一部の問題について分析してみた。

キーワード:特実併願、早期審査、自発補正、分割出願、優先権
 
.国内出願人及び外国出願人の中国における特許出願概況

1.特許・実用新案・意匠登録出願の件数

中国経済の急速な発展とともに、知的財産権の経済競争における重要性がもっとも顕著になってきた。中国特許庁の統計による2006年と2007年の特許出願件数を以下に示した。

20061200612

 
20071200712


 
上記のデータからみれば、2007年の中国特許出願の総件数は、2006年より約20%増加している。そのうち、中国国内出願人による出願件数は約24%増加し、外国出願人による出願件数は約4%増加した。ここから分かるように、中国国内の企業及び個人は、ますます知的財産権の重要性を意識してきた。また、実務においても、中国の特許権者が外国企業と特許実施契約を締結するのも、稀なことではない。
 
2.中国における特許・実用新案・意匠の登録状況

出願人が出願するのは、できるだけ早く自分の技術について保護を受け、経済利益を得るためである。したがって、中国の出願人も、外国の出願人も、中国における特許の登録状況に関心を持っている。中国特許庁の統計による2006年と2007年の特許(実用新案と意匠を含む)の登録件数を以下に示した。


20061200612



 
 
20071200712
 


上記の表から分るように、2007年の登録総件数は2006年より全体的に増加したが、外国出願人による、実用新案出願と意匠登録出願は比較的少ないので、登録件数の割合も低い。しかし、発明特許出願の登録件数の割合からみれば、外国出願人による出願の登録件数の割合は、中国出願人より高い。ここから、中国特許庁が審査業務において、中国出願人に対しても外国出願人に対しても無差別に審査していることが分かった。どのようにして自発的に特許出願の審査を加速化できるかについては、次の文章で説明する。
 
.中国特許出願手続における問題について

事務所の設立から5年が経過し、その間、中国特許出願手続について、お客様からさまざまなお問い合わせをいただいた。そこで、中国特許出願手続についてよくある問題を以下のとおりまとめてみた。

1.特実併願について

2007年7月1日から実施された改正後の審査基準により、「特実併願」について、いずれかの特許権を放棄する効力が「初めから存在しない」に改正された。これにより、出願人は、「特実併願」における実用新案の存在価値について疑いを持つようになった。そこで、まずこの問題について初歩的に検討する。

1)よく見る「特実併願」のケース

いわゆる特実併願には、つぎのような二つのケースがよく見られる。

【ケース1

出願人が同一日に同一の技術について、一つの実用新案出願と一つの発明特許出願を行うケース。

【ケース2

先に実用新案出願を行い、当該実用新案出願の権利付与の公告がなされる前に、同一の技術についてさらに一つの発明特許出願を行うケース。

一般的に、上記二つのケースはいずれも、実用新案特許出願が発明特許出願に先立ち権利付与される。

2)特実併願のメリット

上で述べたように、改正後の「審査基準」の規定により、発明特許が権利付与されるとき、実用新案特許権は最初から存在しなかったものとみなされることとなったとはいえ、出願人にとって、同一の技術について特許と実用新案を併願する方法にはやはり一定のメリットがある。
まず、発明と実用新案の区別については、次の表をご参照いただきたい。


 
次に、上記区別について詳細に説明する。

進歩性の比較的低い発明創造

改正後の審査基準は、実用新案の進歩性に対する判断基準についてさらに次のとおり規定している。すなわち、実用新案の進歩性に対する判断基準は、発明特許の進歩性に対する判断基準より緩やかなものにすべきで、それは主として両者が従来技術の分野と引用文献の量を異にしているからである(詳細については、改正後の「審査基準」第4部分第6章をご参照)。すなわち、同一の技術について、進歩性はあまり高くないものの、従来技術と異なる特徴又は効果などを有する場合、実用新案の進歩性の基準を満たしていても、発明の進歩性の基準は満たしていない場合もある。

しかし、発明創造を完成したとき、出願人は、発明自体の進歩性の有無又はそのレベルなどについて、的確に把握できないことがある。このような場合、特実併願の方式を採用することにより、発明創造自体の進歩性が高くないことに気づいた場合、実用新案特許権を維持し、発明特許出願を放棄することができる。こうすることにより、最終的に獲得した権利を比較的安定なものとし、出願人又は権利者の利益を確保することができる。

短期技術にかかる発明創造

技術は急速に発展するものであり、技術が異なればその革新ピッチも異なり、一部の技術は、市場に投入されて初めてその重要性と商品寿命が分かる。それゆえ、この種の技術は、往々にして出願前に保護を必要とする期間を設定することができない。

このようなときには、特実併願の方法を採用し、市場競争を通して当該技術の真価を見定めた上で、適切な選択をすることができる。そうすることにより、発明創造自体の価値があまり高くないと判断された場合は、特実併願中の発明特許出願を放棄し、実用新案特許権を維持することができ、ひいては知的財産の保護のために企業が支出するコストを削減し、人的・物的支出を節約することができる。

市場に与える影響

たとえ、出願人が技術の実施を急いでおらず、技術の進歩性に絶対的な自信があり、発明特許出願が権利付与されるに合わせて実用新案特許権を放棄したとしても、なお当該実用新案特許権は軽んじられるものではない。

市場競争が激しい現状の中で、企業にとって優先的に市場シェアを獲得することは、非常に重要かつ肝心なことである。実用新案は審査期間が比較的短く、通常1年ほどで権利が付与されるので、実用新案の権利付与から発明特許の権利付与までの間(上記図のAポイントからBポイントまでの区間)、実用新案特許権を所有することは、製品の宣伝、消費者の技術に対する認知度の向上及び競争相手の模倣行為などの防止の面で積極的な効果がある。

したがって、企業の知的財産戦略において、実用新案特許権は商業競争の「転ばぬ先の杖」として、その後の市場開拓のための地固めの役割を果たすことができる。

適切な選択時期

上記の【ケース1】と【ケース2】において、発明特許出願後直ちに実体審査の請求をせず、発明が権利付与される時期を先伸ばしすると同時に、実用新案の登録出願を「転ばぬ先の杖」として利用することができる。当該実用新案が権利付与されてから、警告状の送付、訴訟提起のような方法で競争相手の出方を探り、ひいては相手から提起された無効審判請求を通じて権利の安定性を検証し、当該権利の重要性を確認した後に、発明特許出願について実体審査を請求するかどうか、権利を放棄するかどうかを決めることができる。

権利の早期行使

発明特許の出願と同時に実体審査を請求したとしても、実用新案の権利付与から発明特許の権利付与までの期間(上記図のAポイントからBポイントまでの区間)は比較的長いので(通常1年半以上)、この期間内において、実用新案特許権の存在により、権利者はその権利を行使することができる。すなわち、侵害行為に対し、警告を発したり訴訟を提起したりすることができる。

現在の司法実務からすれば、特許権が付与されれば、実用新案特許権は最初から存在しなかったものとみなされるが、当該実用新案特許権を放棄する前(上記図のAポイントからBポイントまでの区間)に裁判所が既に言い渡した執行済みの特許権侵害にかかる判決、裁定ならびに既に履行又は強制執行された特許権侵害紛争の処理決定及び履行済みの特許実施許諾契約・特許権譲渡契約は遡及力を有しない。そのため、当該期間内(上記図のAポイントからBポイントまでの区間)であれば、当該実用新案特許権を行使することができる。すなわち、実用新案の権利者は他人に対し権利侵害の停止又は損害賠償を請求することができる。
 
2.中国特許出願手続において、どのような書類を中国特許庁に登録することにより、手続を簡素化することができるかについて

中国特許法の規定によれば、外国出願人が中国で特許出願をする場合、中国国家知識産権局が指定した特許代理機関に委任しなければならない。そのため、外国出願人が中国で1件の出願をしようとすれば、出願人がサイン又は捺印した委任状の原本を1部提出しなければならない。実務において、外国出願人が出願手続と同時に委任状を提出できず、委任状を補充提出することにより、一定の代行手数料が発生し、かつ予備審査手続を遅らせることがよくある。上記に鑑み、ここに中国特許庁に登録手続を行うことにより、コピーを提出してもよい書類を紹介する。外国出願人は、このような方法を通して、特許出願の手続を簡素化することができる。

中国審査基準第1部分第1章6.1.2節における規定により、国家知識産権局が指定した特許代理機関に委任した外国出願人は、中国特許庁に包括委任状の登録手続を行うことができる。中国特許庁が関係規定に適合した包括委任状を受理したときには、包括委任状に番号を付し、かつ代理機関に知らせる。既に中国特許庁に包括委任状を登録した外国出願人は、新しい特許出願をする際に、委任状の原本を提出する必要はなく、登録した包括委任状のコピーを提出すればよい。

委任状以外に、出願人が多数の特許出願に対し、同一の代理機関を解任する場合も、包括解任届を1部記載し、中国特許庁に登録手続を行うことができる。こうすれば、関係案件について代理機関変更手続を行う際に、登録した包括解任届のコピーを提出すればよい。

その他、中国特許庁に登録手続を行った書類について、その登録者(出願人又はその代理機関)はいつでも登録済みの書類のコピーを中国特許庁に請求することができる。
  
3.特許出願の審査の加速化について

出願人は、特許出願手続を行った後、できるだけ早く特許権が付与されることを希望していると思う。中国では、早期審査制度はあるが、中国の出願人のみを対象にしている。外国出願人に対し、如何なる方法で、手続と実質的内容における努力を通して、審査期間を短縮できるかが、注目されている。以下に、実務経験に基づき、審査の加速化について説明する。

1 手続の面において

方式審査段階

方式審査段階における形式不備に関する補正通知書の発行による審査の遅延を避けるため、出願手続とともに、関係規定に適合する委任状、優先権証明書などの必要な書類を提出する。また、出願手続と同時に、実体審査を請求する。こうすれば、公開後、すぐ実体審査段階に入ることになる。

中国特許法実施細則第46条の規定により、出願人がその特許出願の早期公開を請求する場合は、国務院特許行政部門に申し立てなければならない。国務院特許行政部門は当該出願について方式審査を行った後、拒絶するものを除き、直ちに出願を公開しなければならない。PCT国際出願が中国国内段階へ移行する際に、通常、その移行日はすでに優先日より18ヶ月を超えているので、上記規定はパリ条約による中国特許出願に適用される。出願人が特許出願手続を行うと同時に、早期公開を請求し、かつ実体審査請求を提出すると、当該出願は方式審査に合格した後、直ちに公開及び実体審査段階に入る。

実体審査段階

拒絶理由通知書に迅速に応答するだけではなく、出願に係る技術を審査官により深く理解させ、1回の拒絶理由通知で登録できるように、実体審査段階において電話インタビューや面接などの方式により、審査官と自発的に技術をコミュニケーションすることが望ましい。

登録段階

特許権の付与及び登録手続を行う旨の通知書を受領した後、早期に特許証をもらえるよう、できるだけ早く登録手続を行い、かつ関係費用を納付することが望ましい。

2 実質的内容の面において

出願書類の実質的内容の面において、出願人は実体審査に入る前に、出願書類を更に補完することにより、審査官が出願書類に存在するすべての不備を第1回拒絶理由通知書において指摘できるようにする。
 
4.発明特許出願の自発補正時期について

出願人が出願した後、出願書類を更に補完する必要がある。以下に、発明特許出願の自発補正時期を次のとおり紹介する。

出願書類の提出から登録まで、出願人は幾つかの自発補正の機会が与えられている。詳細は下記の図をご参照いただきたい。



そのうち、aは出願書類を中国特許庁に提出する日を示し、すなわち出願日である。bは特許権の発効日を示し、すなわち公告日である。Aは実体審査請求の提出日を示し、Bは国務院特許行政機関からの発明特許出願が実体審査段階に入る旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内を示し、Cは拒絶理由通知書に応答する日を表す。

1)実体審査請求と同時(Aのところ)

ほとんどの場合、実体審査請求は出願と同時に提出されるが、そのメリットは審査手続きを簡素化できることであるが、1回の補正チャンスを失うというデメリットもある。

至急案件について、出願後に、出願書類をさらにチェック又は整理することを希望する場合は、出願時に実体審査請求を提出しないほうがよい。こうすれば、実体審査請求時の補正時期を利用して、出願書類を補完することができる。

2)国務院特許行政機関からの発明特許出願が実体審査段階に入る旨の通知書を受領した日から3ヶ月以内(Bのところ)

これは拒絶理由通知前の最後の補正時期であり、かつこの時は出願日から少なくとも半年以上(優先権を主張した場合)経過しているため、出願人はこの補正時期を充分に利用して、出願に係る技術と対応する製品の具体的なニーズを参考にしたうえ、クレームの保護範囲を改めて調整し、明細書を補完することができる。これは、出願人にとって大変有利である。

3)拒絶理由通知に応答する日(Cのところ)

Cの時点における補正は、出願人が、審査官より発行された拒絶理由通知書に応答する際に、出願書類に対して行う補正を指す。特許法実施細則第51条第3項には、拒絶理由通知書を受領した後、出願書類を補正する場合、拒絶理由に基づいて補正しなければならないと規定されている。この場合の補正は、法定の自発補正ではない。ただし、特許審査基準第2部分第8章第5.2.1節の規定により、審査手続きを簡素化するため、補正の方式が特許法実施細則第51条第3項の規定に適合していなくても、補正の内容と範囲が特許法第33条の規定に適合しており、補正により当初の出願書類における不備を解消でき、かつ権利付与の見込みがありさえすれば、通知書の要求に応じて補正されたものとみなされ、審査官に認められる。
 
5.分割出願について

中国では、単一性を有しない出願に対して、出願人は、単一性を有しないクレームを削除し、それについて分割出願することにより、多数の発明をすべて権利化することができる。分割出願について、以下に詳しく説明する。

1)分割出願の制限

出願時期の制限

原出願が下記のフロー・チャートのいずれの段階にあるときでも、原出願に基づいて分割出願することができる。



A. 遅くとも原出願が登録される前

原出願の出願人は、遅くとも、特許庁より原出願について特許権を付与する旨の通知を受領した日から2ヶ月以内の期間(すなわち、登録手続を行うことができる期間)が満了する前に分割出願しなければならない。ただし、一般的には、原出願がすでに取下げられた場合、又は、原出願が取下げとみなされ、かつ権利が回復されていない場合、分割出願することができない。

特に注意されたいのは、特許庁より原出願について特許権を付与する旨の通知を受領した日から2ヶ月の期間の満了前に登録手続を行ったとしても、特許庁より原出願について特許権を付与する旨の通知を受領した日から2ヶ月の期間が満了までの間は、依然として分割出願することができる。

例えば、下図に示すように、Aは特許庁より原出願について特許権を付与する旨の通知を受領した日を示し、Bは登録手続を行った日を示し、Cは分割出願の出願日を示す。この場合、BとCの間の期間に、分割出願することができる。


 
B. 遅くとも原出願についての拒絶査定が確定する前

出願人は、拒絶査定を受領した日から3ヶ月以内に、不服審判を請求するか否かにかかわらず、分割出願することができる。また、不服審判を請求した後、及び不服審判の審決を不服として行政訴訟を提起する期間にも、出願人は分割出願することができる。すなわち、拒絶査定が確定していなければ、出願人は分割出願することができる。

C. 2回目の分割出願の時期的な決まり

一度分割出願した後、出願人が当該分割出願について再び分割出願する場合、再度の分割出願の出願日は、同様に原出願の出願日から起算する。再度の分割出願の提出日が上記のアとイの規定に適合しない場合、分割出願することができない。

D. 例外の状況

分割出願に単一性の不備があるため、出願人が審査官の拒絶理由に従って再び分割出願する場合、再度の分割出願の提出日は上記のアとイの規定に適合しなくてもよい。

そのような場合、出願人は、再び分割出願すると同時に、審査官が発行した単一性不備を指摘した「拒絶理由通知書」又は「分割出願通知書」の謄本を提出しなければならない。規定に適合した「拒絶理由通知書」又は「分割出願通知書」の謄本が提出されない場合、審査官は「補正通知書」を発行し出願人に補正させる。出願が出願人より補正された後に依然として規定に適合しない場合、審査官は、「分割出願されていないとみなす旨の通知書」を発行する。

出願人の制限

分割出願の出願人は、原出願の出願人と同一でなければならない。出願人が同一でない場合、権利移転を証明するための書類を提出しなければならない。

内容の制限

分割出願するとき、出願時期が上述のように制限されているほかに、内容も以下の要件を満たさなければならない。

A. 原出願の種類を変更してはならない

分割出願の種類は、原出願の種類と一致していなければならない。例えば、原出願が発明特許出願である場合、分割出願も発明特許出願でなければならない。分割出願の方式審査において、分割出願の種類と原出願の種類が一致していないことが判明した場合、審査官は、「分割出願されていないとみなす旨の通知書」を発行する。

B. 原出願が開示した範囲を超えてはならない

分割出願の内容は、出願当初の出願書類が開示した範囲を超えてはならない。分割出願の内容が、原出願が開示した範囲を超えていると判断された場合、審査官は、拒絶理由通知書を発行し、出願人に補正させる。出願人が補正しない場合、当該分割出願は拒絶査定される。

ここで特に説明したいのは、上記「出願当初の出願書類」とは、原出願(すなわち親出願)の出願当初の特許請求の範囲及び明細書を指し、日本の現行法に規定されている「原出願の分割直前の出願書類」ではない。すなわち、分割出願しようとする内容がすでに親出願の特許請求の範囲及び明細書から削除されている場合でも、親出願の出願当初の特許請求の範囲及び明細書に基づいて、分割出願することができる。
 
2)期間と費用

期間

A. まだ満了していない期間

分割出願の各種の法定期間は、すべて原出願日から起算する。

例:原出願の出願日が2007年1月5日で、分割出願の提出日が2008年1月5日であると仮定する場合、また、分割出願の実体審査請求の提出日(原出願日から3年間以内)が2010年1月5日となる。

B. すでに満了している期間

分割出願時にすでに満了している各種の期間については、出願人は、分割出願した日から2ヶ月以内に各種の手続を補完することができる。当該期間が満了しても手続が補完されない場合、審査官は、「取下げとみなす旨の通知書」を発行する。

例えば、原出願の出願日が2007年1月5日で、分割出願の提出日が2010年2月5日である場合、原出願の出願日で計算すれば、実体審査の請求期限はすでに満了しているため、分割出願の実体審査の請求期限は、分割出願の提出日から2ヶ月以内、すなわち2010年4月5日となる。

費用

分割出願に対しては、新規出願と同様に各種の手数料(例えば、出願費や実体審査請求費など)を納付しなければならない。

分割出願時にすでに期間が満了している各種の手数料の納付については、出願人は、分割出願した日から2ヶ月以内に追納することができる。追納期間が満了しても手数料が納付されない場合、審査官は、「取下げとみなす旨の通知書」を発行する。
 
3)分割出願の活用

分割出願は原出願の単一性不備を解消するために設けられたものである。しかし、実務において、出願人は分割出願を活用して出願書類の質をさらに高めることができる。すなわち、単一性不備に基づいて分割出願するほかに、出願人は、クレームを補正しようとしながら補正の時期又は方法が関係規定に適合しない場合にも、分割出願することができる。以下に、よく見られる3つの状況を紹介する。

拒絶理由通知書への応答において、許可されない方法でクレームを補正する必要があると判断した場合

拒絶理由に応答するとき、審査官が再びサーチする必要があるような補正(例えば、独立クレーム中の構成要件を削除し、当該独立クレームの技術的範囲を拡大するような補正)は回避すべきである。なぜなら、そのような補正は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に記載された範囲を超えていなくても、認められないからである。このような場合、分割出願を活用してクレームを補正し、希望するような技術的範囲とすることができる。

 「拒絶理由通知書」に応答した後、クレームを補正しようとする場合

一般的には、審査官の要求に応じて補正する場合を除き、拒絶理由通知書に応答した後、出願人は出願書類を補正することはできない。その時、出願書類に修正すべきところがあると気付き、特にクレームを補正しようとする場合、分割出願を活用して出願書類を補正することができる。

拒絶査定が確定する前に権利を留保しておきたい場合

拒絶査定不服審判又は行政訴訟(審決取消し訴訟)において、原出願の出願書類を補正せず、答弁書だけで拒絶理由に反論すると、原査定を支持する旨の審決(又は判決)がなされるおそれがある。拒絶査定が確定すれば、それを取消すことはできず、分割出願もできなくなる。それゆえ、不服審判又は行政訴訟と同時に、原出願について分割出願することが望ましい。

この方法によれば、原出願が不服審判又は行政訴訟において拒絶査定が維持され、確定しても、特許を受ける権利が完全に喪失することなく、出願書類を再度補正する機会がまだ残っているというメリットがある。
 
6.外国優先権を主張した場合

パリ条約により中国に特許出願する場合、外国の出願人は優先権に関して、さまざまな問題に遇うかもしれない。例えば、どのような場合に、優先権譲渡証明書を提出する必要があるか、優先権の回復手続はどのような条件で行うことができるかなど。特に、2006年7月1日より実施された改正後の中国審査基準には、優先権に関する一部の規定が調整されたため、出願人は一部の具体的な問題について確認できなくなった。次に、外国優先権を主張する際の留意点についてまとめて説明する。

1)優先権主張の記載

優先権主張の記載において、優先権としてのすべての先出願の出願日、出願番号及び当該先願を受理した国又は政府間組織の名称を明記しなければならない。先願の出願日と先願を受理した国又は政府間組織の名称のいずれをも明記しない場合又は書き間違え、複数の優先権のいくつかを書き漏した場合は、優先権を主張しなかったとみなされる。優先権主張の記載において、先願の出願番号を明記しない場合又は書き間違えたが、規定された期間内に先願の出願書類謄本を提出した場合は、補正手続により優先権主張の記載を訂正することができる。
 
2)優先権証明書

先願の出願書類の謄本

発行機関:先願の出願書類の謄本は当該先願を受理した国又は政府間組織の主管部門、すなわち特許庁が発行するものである。

提出期限:先願の出願書類の謄本は、遅くとも出願日から3ヵ月以内に提出しなければならない。規定された期間内に提出しない又は提出した先願の出願書類の謄本が関係規定に適合しない場合は、当該外国優先権を主張しなかったとみなされる。

留意点:原則において、案件ごとに先願の出願書類の謄本を提出しなければならないが、同じ外国優先権を主張した出願を何件も提出する場合は、1部の原本を提出し、残りの出願はそのコピーを使うことができる。ただし、この場合、原本を提出した出願の出願番号を明記しなければならないので、先願の出願書類のコピーを使用できるのは、出願後に先願の出願書類を補充提出する場合に限られる。

優先権譲渡証明書

いつ優先権譲渡証明書を提出する必要があるか?

優先権を主張した出願の出願人が、先願の出願書類に記載された出願人とまったく異なる場合(例えば、先願の出願がAとBであり、後願の出願人がCである場合)は、優先権譲渡証明書の原本が必要となる。

優先権譲渡証明書の記載者と記載方式:先願の出願人がサイン又は捺印する。先願の出願人が複数の場合は、すべての出願人が同じ優先権譲渡証明書に記載することもできるし、出願人ごとにそれぞれ1部の譲渡証明書を記載することもできる。

提出期限:優先権譲渡証明書は、遅くとも出願日から3ヵ月以内に提出しなければならない。規定された期間内に提出しない場合又は提出した優先権譲渡証明書が関係規定に適合しない場合は、当該外国優先権を主張しなかったとみなされる。

優先権主張の取下げ

出願人が優先権を主張した後、すべての優先権又はそのうちの一部を取下げることができる。優先権主張を取上げる際には、すべての出願人が記載した「優先権主張を取下げる旨の宣告書」を提出しなければならない。

優先権主張の取下げによる変更可能な期限:

優先権主張の取下げにより最初の優先日が変更された場合、満了していない期限は変更後の優先日より起算する。優先権主張の取下書が最初の優先日から15ヶ月以内に中国特許庁に到着した場合、当該出願の公開は、依然として最初の優先日から起算する。

優先権の取下げのメリットとデメリット:

メリット:優先権を取下げることにより最初の優先日が変更された場合、ある期限を遅らせることができる。例えば、公開の期限、生物保蔵の期限など。

デメリット:優先権を取下げることにより最初の優先日が変更された場合、その検索範囲も相応的に変化し、より多くの引用文献が検索される可能性があるので、当該出願の新規性と進歩性に影響を与えるおそれがある。

優先権の回復

中国審査基準の第1部分第1章6.2.5節の規定により、下記条件の一つに該当すれば、出願人は優先権の回復を請求することができる。

A. 優先権主張の記載において、先願の国または政府間組織の名称、先願の出願日または先願の出願番号のいずれか2つが正しく記載され、かつ規定された期間内に先願の出願書類の謄本を提出したとき。

B. 優先権主張の記載は規定に適合しているが、規定された期間に先願の出願書類の謄本または優先権譲渡証明書を提出していない。

留意点:先願の出願書類の謄本の未提出により優先権を主張しなかったとみなされた場合、優先権の回復を請求する期間に当該書類を提出できないときは、まず回復請求とともに回復請求料を納付する。こうすることにより、審査官は再度補正機会を与える。出願人は中国特許庁が発行した回復手続補正通知書の受領日から1ヶ月以内に先願の出願書類の謄本を提出しなければならない。

例えば、ある外国優先権を主張した特許出願の出願日が2008年1月1日であり、当該出願は規定された期間内(すなわち、2008年4月1日まで)に先願の出願書類の謄本を提出しなかったために、「外国優先権を主張しなかったとみなす旨の通知書」が発行された。出願人は本通知書を受領した日から2ヶ月以内に優先権の回復手続を行うと同時に、先願の出願書類の謄本を提出すべきである。もし、その際に先願の出願書類の謄本を提出できないときは、優先権の回復期間内にまず優先権の回復を請求する。そうすると、審査官は「回復手続補正通知書」を発行し、当該通知書を受領した日から1ヶ月以内に先願の出願書類の謄本を提出するよう要求する。

C. 分割出願の原出願が優先権を主張している場合。

D. 優先権主張は規定に適合しているが、規定された期間内に優先権主張料を納付しなったかまたは料金が不足していた場合。
 
(2008)

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