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改正「商標審査及び審理基準」の変更に関する概要紹介


北京林達劉知識産権代理事務所
中国商標弁理士    郜 宇
 
2017年1月4日、商標局は商標網で改正「商標審査及び審理基準」(以下は「基準」という)を公布した。今回の改正は「商標法」の3回目の改正に適用させるために行われた。2015年12月の「基準」より修正された内容は多く、興味深く読む価値がある。読者の皆様が改正後の「基準」の関連変更点を早く把握できるように、筆者は今回の「基準」の主な変更点について、下記のとおり概要をご紹介する。

I商標審査基準について

改正後の「基準」は元々の7つの部分から11部分に増えた。追加された部分は音声商標への審査、商標代理機構より登録出願された商標への審査、「商標法」第50条の適用、審査意見書の適用である。また、元々あった7つの部分でも重要な規定の追加及び改正があった。具体的には下記のとおりまとめるものとする。

1.「商標法」第1017号の規定の適用状況の追加

2013年の3回目の改正「商標法」により、第10条1項7号の規定が追加された。すなわち、「欺瞞性を帯び、商品の品質などの特徴又は産地について公衆に誤認を生じさせやすいものは商標として使用してはならない」という条文である。改正後の「基準」には、当該規定の適用について詳しく定められた。主として、「商品又は役務の質、機能、用途、原材料、内容、重量、数量、価格、工芸、技術などの特徴について関連公衆に誤認を生じさせやすいもの」と「商品又は役務の産地、出所について関連公衆に誤認を生じさせやすいもの」との2つの部分である。一部の内容は、改正前の「基準」にある旧法の第10条1項7号、8号にいう「誇大に宣伝し且つ欺瞞性を帯びたもの」、「関連公衆に誤認を生じさせやすいもの」という内容を吸収して、更に細分化した。また、商標が他人の氏名より構成され、本人の許可を得ずに、商品又は役務の出所について関連公衆に誤認を生じさせやすいとの内容も追加された。

2.「商標法」第1018号規定の適用状況の調整・追加

「商標法」第10条1項8号の規定について、改正前の「基準」にいう「誇大に宣伝し且つ欺瞞性を帯びたもの」、「関連公衆に誤認を生じさせやすいもの」などの内容が削除され、第10条1項7号に追加されたほかに、今回の改正では下記の修正内容もある。旧法の第10条1項2号を適用する「商標にわが国の国名と同一又は類似の文字が含まれるものは、わが国の国名と類似すると判断される」を「商標にわが国の国名が含まれ、国家名称の濫用を招き、社会の公共利益や公共秩序に消極的又はマイナスの影響をもたらす可能性があるものは、第10条1項8号の規定を適用する」へ修正された。また、「商標には規範違反の漢字が含まれる又は熟語を規範に合って使用してなく、公衆、特に未成年者の認知に誤認を生じさせやすいもの」、「商標には政治、宗教、歴史などの分野の公衆人物の氏名と同一又は類似する文字が含まれ、わが国の政治、経済、文化、宗教、民族などの社会公共利益と公共秩序に消極的又はマイナスの影響をもたらすもの」との2つの適用状況が追加された。

3.「商標法」第102項の一部の適用状況の削除

改正前の「基準」にある「県クラス以上の行政区画の地名を含む商標は「商標法」第10条2項を適用する」について、「出願人の名称には地名が含まれ、出願人により完全な企業名称を商標として登録出願されたら、登録できる」との例外状況がある。改正後の「基準」には当該例外状況が削除された。県クラス以上の行政区画の地名を含む完全な企業名称の登録が今後許可されるかどうか、主管部門の更なる解釈及び実務での具体的な事案に基づいて、さらに分析・判断する必要がある。

4立体商標、色彩組合せ商標、団体商標、証明商標に関する審査基準の修正、細分化、音声商標への審査基準の追加

改正後の「基準」は元の内容を踏まえ、立体商標、色彩の組合せ商標、団体商標、証明商標に関する審査基準を細分化した。

立体商標の方式審査について、改正後の「基準」では、立体商標を出願する時、三面図、多面図又は立体図を提出できることが明示された。実体審査部分において、立体商標の使用禁止の規定の審査内容が追加された。立体商標の識別力の審査について、識別力欠如の状況が更に細分化された。

特に、三次元標識とほかの平面要素とを組み合わせた立体商標の識別力の判断基準が追加された。識別力の弱い三次元標識と識別力のある平面標識より構成された立体商標は、識別力を備えているが、当該商標が登録された後、その商標専用権の保護範囲は識別力を備えている平面要素に限られ、且つ予備的査定公告公報及び商標登録証に明記するとの内容が示された。立体商標の同一又は類似の審査について、「立体商標は識別力を備えている三次元標識と識別力を備えている平面要素より構成され、当該平面要素は平面商標の識別力を備えている部分と同一又は類似し、商品又は役務の出所について関連公衆に混同や誤認を生じさせやすい場合、同一又は類似商標に該当する」との内容が追加された。

色彩組合せ商標について、改正後の「基準」には、方式審査において提出される商標見本の仕様の内容が追加された。つまり、商標見本は普通の色彩の組合せを示す図面だけではなく、色彩の使用場所を示す図形の輪郭も追加された。また、当該図形の輪郭は商標の構成要素ではなく、破線で表示しなければならなく、実線で表示してはならないことも明示された。また、出願にあたり、商業活動における当該色彩組合せ商標の具体的な使用方式を明記しなければならないと明確に要求された。色彩組合せ商標の識別力について、下記のことが明示された。普通の場合、色彩組み合わせ商標は、長期間の使用を通じて、はじめて識別力を備えるようになる必要がある。商標局は審査意見書を下して、出願人に使用証拠の提出、及び当該商標が使用を通じて識別力を備えるようになったことに関する説明を要求することができる。

音声商標について、改正後の「基準」には、関連方式審査及び実体審査の内容が追加された。色彩組合せ商標とはほぼ同じく、改正後の「基準」にも、出願人が商標出願の時、商標の使用の説明を提出しなければならないとのことが明示された。また、音声商標が長期間の使用を通じて、識別力を備えるようになる必要もあり、商標局は審査意見書を下すことができることも明示された。

団体商標、証明商標の部分について、主な変更点は、地理的表示の団体商標、証明商標の生産地域の範囲への審査は、元々の「省クラス又は省クラス以上の主管部門より発行される証明書をもって確認する」という内容から、「県誌、農業誌、製品誌、年鑑、教科書で表示された地域範囲でもよいし、地理的表示で示された地域の県クラス以上の人民政府又は人民政府の上級主管部門より発行される地域範囲の証明書をもって確認することもよい」に修正された。また、行政区画も生産地域範囲に入った。

5商標代理機構による商標出願に関する審査基準の追加

改正「商標法」と「商標法実施条例」に基づいて、改正後の「基準には、商標代理機構による商標出願に関する審査基準が追加された。「基準」によれば、商標代理機構の代理サービスは、「類似商品及び役務の区分表」(第10版)の類似群4506の役務に暫定されている。

6.商標類似判断の基準にいう「誤認」から「混同」への改正

今回の改正後の「基準」では、商標同一又は類似判断の審査基準の内容には大きな改正点がない。主な改正点は、商標同一又は類似判断基準について、「商品又は役務の出所について関連公衆に誤認を生じさせやすい」から「商品又は役務の出所について関連公衆に混同を生じさせやすい」へ改正された。混同の基準は、商標類似判断の依拠とすることが一層明らかになった。なお、改正後の「基準」では、一部の内容の表現が更に改善され、規定の順序が調整され、商標類似判断の新しい事例も追加された。

7.「商標法」第50条の適用に関する規定の追加

改正後の「基準」には、「商標法」第50条の適用に関する規定が追加された。正当な理由がなくて、継続して3 年間使用しないため取り消された登録商標について、不服審判請求期限が過ぎてから、元の権利者は不服審判を請求しない場合、引用しないことが明示された。また、権利者が当該商標を再出願する場合、「商標法」第50条の規定を適用しないことも明示された。

8.審査意見書の適用状況の追加

改正後の「基準」には、審査意見書の適用状況が追加された。下記の状況について、審査意見書を適用することが明示された。例えば、「商標法」第10条1項2、3、4号、2項の但し書きにある登録できるもの、且つ出願人の説明により予備的査定される可能性がある場合、第11条2項に定められた登録できるもの、且つ出願人の説明により予備的査定される可能性がある場合、色彩組合せ商標、音声商標について、出願書類だけをもって、識別力を備えるかどうかは判断しにくいが、出願人が使用証拠を補足して長期間の使用により識別力を備えるようになり、予備的査定される可能性がある場合など。また、審査意見書の実体審査についても詳細な規定が定められた。

II商標審理基準について

今回の改正後の「審理標準」は元々の8つの部分から10の部分に増えた。追加された2つの部分は特定関係者が他人の先行使用商標を冒認出願すること及び利害関係者の認定に関する審理基準である。具体的には下記のとおりである。

1.他人の著名商標を複製、模倣又は翻訳する審理基準

「商標法」第13条の適用の審理基準について、今回の改正により一部の内容が更に補充・完善された。主には下記のとおりである。

(1) 著名商標の認定原則が導入された。

(2)「無形資産の価値評価報告」という方式の証拠が削除された。「業界におけるランキング又は市場シェア、国家発明の特許と自主イノベーション、商標を使用した商品又は役務の技術は国家標準、業界標準とされる」などという方式の証拠が追加された。

(3)証拠の提出への要求は厳しくなった。例えば、企業の年報、納税額などの証拠は原本又は公証本を提出する必要がある。販売契約又は販売領収書などの証拠を提出して、商標を使用した商品・役務が多数の県で販売・経営されたことを証明しなければならない。

(4) 著名商標の使用期間に関する要求が明示された。かかる商標は未登録商標である場合、5年以上継続に使用していることを証明できる証拠を提出しなければならない。商標は登録商標である場合、登録されてから少なくとも3年間又は5年以上継続に使用していることを証明できる証拠を提出しなければならない。

(5)混同又は誤認の可能性を明確に区別され、混同又は誤認に該当する状況についてもそれぞれ規定を定めた。

(6)非同一または非類似の商品・役務において登録済みの著名商標への保護範囲を拡大した前提を「混同、誤認を生じさせる可能性がある」から「公衆に誤認を生じさせやすく、同著名商標権者の利益に損害をもたらす可能性がある」へ修正された。

2.授権を得ずに、被代理人又は被代表者の商標を先取して出願したことに関する審理基準

「商標法」第15条第1項の適用について、改正後の「基準」の改正点は、主に、「代理、代表関係を築くための協議中の段階、代理人、代表者が被代理人或は被代表者の商標を先取して出願した行為、商標出願人が代理人又は代表者と共謀して被代理人或いは被代表者の商標を先取して出願した行為」も適用範囲に入った。また、代理人、代表者が商標を出願する権利を得たことに関する認定について、今回の改正後の「基準」には、「被代理人或いは被代表者は関連事情を知りながら、合理的な期間内に異議を提出しない場合」及び「被代理人或いは被代表者の事後の反言」との内容が追加された。

3特定の関係者が先行使用者の商標を無断で出願した行為に関する商標審理基準

「商標法」第15条2項の適用について、今回の改正後の「基準」には、特定の関係者が先行使用者の商標を無断で出願した行為への商標審理基準が追加された。改正内容によれば、「契約、業務往来の関係」は、売買関係、委託加工関係、業務視察、関係を築くための協議関係などを含む、並びにありふれた親属関係、隷属関係なども含む。また、規定にいう「先行使用」について、実際に商品又は役務に使用される状況を含むだけではなく、中国市場に進出するために行われた準備活動も含まれる。改正後の「基準」では、先行使用者は商標を使用したことのみを証明すれば十分で、商標は使用により一定の影響力を有するようになったことを証明する必要がない。

4.他人の先行権利を侵害することに関する審理基準

「商標法」第32条にいう「他人が現有する先行権利を侵害してはならない」との内容について、改正後の「基準」は下記の通り改正した。

(1)屋号権(改正前の「基準」には「商号権」という」

屋号権について、改正後の「基準」の改正により、係争商標が関連公衆に混同、誤認を生じさせる可能性の認定要素は、「原則として、係争商標は先行屋号と同一又は基本的に同一であり、係争商標の指定商品・役務は屋号権者の実際の経営商品/役務と同一又は類似する商品に限られるが、個別の案件において、係争商標の独創性、知名度及び両方の商品/役務の関連性に基づいて保護範囲を確定することができる」に修正された。

(2)著作権

著作権について、商標登録証及び係争商標の出願日以降の著作権登録証は単独として、著作権を有すると認定する決定的な証拠とされてはならないことが明示された。

(3)意匠権

意匠権の部分について、主な改正点は元々の「係争商標が意匠とは同一又は類似商品に使用される」との適用の条件が削除された。

(4)氏名権

氏名権の部分について、変更点は以下の通り。改正前の「基準」にある「係争商標と他人の氏名と同一である」との適用の条件を「関連公衆の認識上、係争商標の文字は当該氏名権者を指す」に改正された。「係争商標が他人の氏名権を侵害するかを認定する時は、氏名権者の社会公衆の間における認知度を考慮しなければならない」との内容が削除された。また、係争商標が他人の氏名権を侵害するかを認定する範囲を「係争商標と他人の氏名と同一であることを含むだけではなく、係争商標が他人の氏名とは文字構成の差異があるが、他人の主な特徴を表して、公衆の認識上、当該氏名権者を指すことも含まれる」まで拡大された。

(5)肖像権

肖像権の部分の変更点は、他人の肖像の写真、肖像画をもって商標を登録出願した場合、肖像権への損害に関する認定が区別されたことである。即ち、肖像の写真に対して、他人が社会公衆の知名度を有するか否かは保護の前提とされないが、肖像画に対して、普通の場合、他人の社会公衆の知名度を考慮した上、個別の案件において保護範囲を確定する必要がある。

(6)合法的な先行権益への保護が追加された

伝統的な先行権利への保護以外、今回の改正では知名商品や役務の特有の名称、包装、 装飾が先行権益として保護する審査基準が追加された。それと同時に、「他の保護しなければならない先行権益」との内容も追加され、他の合法的な先行権益の適用のためにスペースを設置しておいた。

5.欺瞞的な手段又はその他の不正な手段により商標を登録した審理基準

「商標法」第44条1項の適用について、今回の改正後の「基準」には、「その他の不正な手段により商標を登録した」の適用の条件が大きく調整された。「商標法」第44条第1項にいう「その他の不正な手段により商標を登録した行為」は「係争商標の登録出願人は欺瞞的な手段以外の商標登録秩序を混乱させ、公的利益を損害させ、公的資源を不正に占め又は他の方式で不正な利益を図ることなどの他の不正な手段により商標を登録した行為」を定義した。また、係争商標の登録出願人は多数の商標を登録出願し且つその商標が他人の強い識別力を備える商標、屋号、企業名称などと同一又は類似する状況、係争商標の登録出願人は大量の商標を登録出願し且つ真実な使用意思がない状況も適用の範囲に入った。

6登録商標取消の案件に関する審理基準

登録商標取消の案件に関する審理基準の主な改正点について、継続して3 年間使用しない状況の認定において、商標法上における商標の使用と見なされない証拠及び状況の具体的な内容が追加された。「基準」には、使用証拠にある登録商標の要部及び顕著な特徴が変更されたら、登録商標の使用と見なされないこと、商標権者はその権利商品に商標を使用した場合、当該商品と類似する商品についての登録を維持することができるが、権利商品以外の類似商品に登録商標を使用したら、登録商標の使用と見なされないことも明示された。

7.使用により識別力を備える標章に関する審理基準

使用により識別力を備える標章について、改正後の「基準」には使用により識別力を備える考慮要素にある「当該標章が使用されている商品や役務の生産、販売、広告宣伝状況」を「販売額、売上、市場シェア及び広告宣伝の状況と地理的範囲」に細分化された。今回の改正により、証拠資料は使用した商標、商品や役務、使用日付及び使用者を示すことができるものでなければならないと要求された。当該商標の使用者について、商標権者又はライセンシーが含まれる。また、異なる案件の商標の事実状態も区別された。拒絶不服審判、登録不許可不服審判請求の案件において、審理する時の商標の事実状態を基準とし、無効宣告審判請求の件において原則として商標を出願した時の事実状態を基準とする。

8.利害関係者の認定

今回の改正後の「基準」には、元々各項規定に分散された利害関係者の認定に関する内容が削除された同時に、単独の部分として利害関係者の認定の内容が追加された。当該部分では、先行権利のライセンシー、合法的な継承者及び質権者は利害関係者に該当することが明示された。また、出願する時に利害関係がないが、案件審理の時に既に利害関係を有する場合、利害関係者に該当することも明示された。
 
(2017)

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©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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