化学分野において、「予想外の効果」を有すると唱える特許の無効化は通常、困難である。本件は、参考になれる無効化戦略を示してい...
近日、明陽科技(蘇州)股份有限公司(以下、明陽科技という)の社長一行は弊所にご来訪いただいた。弊所弁理士が同社の無効宣告請...
中国商標案件の滞留問題の解決動向


北京林達劉知識産権代理事務所
商標弁理士 耿 秋
 
中国商標局が公表した統計データによると、中国の商標登録出願件数は年々大幅に増加しており、2002年から2007年まで年につき約10万件も増加し、これまでの商標登録出願総件数は500万件に達し、有効な商標登録件数は300万件に達したそうである。そして、2007年の新規商標登録出願件数は70.8万件に達し、6年間連続して世界のトップに位置している。

一方、現在中国商標局の職員は210人しかおらず、そのうち、審査官は144人である。商標局は、審査の効率を高め、商標の審査件数を増やすよう努力しており、2007年には、商標の審査件数は40.5万件に達したにもかかわらず、審査が完了した件数より、新規商標出願件数のほうがはるかに多い。したがって、中国商標局に滞留している出願件数はおよそ200万件あると思われる。

中国の市場経済の発展に伴い、今後2年間、新規商標出願件数は依然として増加すると思われる。しかし、商標局の審査官の人数は大きく変化することはないので、案件の滞留はますます増加し、滞留問題はますます厳しくなり、商標局が直面している国内外からの圧力もますます大きくなり、審査官の負担もますます重くなっていく。それゆえ、商標局は既に耐えられない状況に追い込まれている。また、商標出願件数の増加に伴い、商標異議申立、商標審判の案件も増加している。したがって、異議申立と審判案件の滞留問題も同様に厳しい状況にある。通常、異議申立又は審判案件について、審理終了までは3年~4年の期間が必要で、異議審判又は商標係争のような複雑な案件については、当事者は5年又は6年後に裁定を入手することになり、長々と待っているうちに、そのビジネスチャンスの多くを失ってしまうことになる。

したがって、商標審査案件と商標審判案件の滞留問題を解決するのは、中国国家工商行政管理総局商標局と商標審判委員会が現在直面している、非常に厳しく、かつ、喫緊の課題である。

2006年から、中国商標局と商標審判委員会は、一連の改革案を実施してきた。例えば、オンライン商標調査と商標出願を開始することによる、インターネットを利用した商標局スタッフの負担の軽減や、内部の構成と人員配置の調整などが挙げられる。しかし、それらの一連の手段によっても、案件の滞留問題を根本的に解決するには至っていない。2008年に、中国商標主管機関は、3年以内に商標案件の滞留問題を徹底的に解決することとした。その主な措置は、次に掲げる3つである。

1.スタッフを多く募集する

商標局が2008年4月6日に公表した情報によれば、国家工商行政管理総局の直属事業機関としての通達商標サービスセンターは、労働契約制の商標補助スタッフを400人募集するとのことである。その内訳は、商標審査の補助スタッフが300人、商標審判の補助スタッフが100人である。審査官、審判官を増員することは、案件の滞留問題を解決する基本となる。

2.任務を規定する

2008年3月27日に、中国国家工商行政管理総局副局長の付双建は、総局を代表して商標局、商標審判委員会と、商標登録審査案件と商標審判案件の滞留問題を解決する目標責任書を締結した。

報道によると、「商標登録審査案件の滞留問題を解決する目標責任書(2008-2010年)」と「商標審判案件の滞留問題を解決する目標責任書(2008-2010年)」に従い、商標局、商標審判委員会は、3年以内に滞留問題を解決することを目標として、年度ごとの作業任務と品質管理システムを制定し、商標審査と審判の効率を高め、2011年の年初までに商標審査と商標審判を正常な軌道に乗せなければならないとのことである。

3.法律を改正する

現在、「中国商標法」の三回目改正案が準備されている。その改正案の内容によれば、商標審査手続きを簡素化し、商標審判委員会の準司法的地位を確立し、商標権にかかわる紛争を明確に民事紛争の一つとすることが、今回の改正の要点となっている。

例えば、商標局が新規商標登録出願を審査するにあたっては、相対的理由(すなわち、出願商標が先願商標と抵触するか否か)について審査しないこととなる。これにより、商標審査の作業が大幅に軽減されることとなり、審査期間が短縮され、多くの商標がより早く登録されることとなる。

次に、異議申立制度を改正し、簡潔な異議申立制度とする。異議案件は、直接商標審判委員会が審理することとなる。そして、異議申立に十分な理由と確実な証拠が欠けている場合には、商標審判委員会は、直ちに異議申立は成立しないとの決定を下すことができることとなる。こうすることにより、被異議申立人に異議申立通知書を転送する必要がなくなり、被異議申立人も異議に対して答弁する必要がなくなるので、審査期間を短縮することができる。一方、商標審判委員会が、異議申立が成立する又はその一部の理由が成立すると認める場合には、被異議申立人に答弁通知書を送付する。異議申立が成立し、被異議申立人がその異議決定に不服がある場合、裁判所に提訴することができる。

また、商標法を改正することにより、できるだけ商標行政機関をわずらわしい行政訴訟から解放するように努力している。双方の当事者にかかる商標権紛争事件について、一方の当事者が行政裁定に不服がある場合、裁判所に訴訟を提起することができるが、この場合には、商標審判委員会は訴訟の当事者にならず、当該訴訟にかかる相手方の当事者が被告となり、かつ、民事訴訟法が適用されることとなる。

これらの措置により、中国商標審査及び審判の作業効率が大幅に高められ、当事者の合法的権利が有効に保護されることになると思われる。また、上述の内容のほかに、中国商標主管機関がより有効、かつ、積極的な措置を取ることにより、国内外の関心を集めてきた商標案件の滞留問題を一日も早く解決し、商標大国として、中国の商標制度が向上していくことを期待している。
 
(2008)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
×

ウィチャットの「スキャン」を開き、ページを開いたら画面右上の共有ボタンをクリックします