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立体商標の登録可能性に関する分析


北京林達劉知識産権代理事務所
中国商標弁理士 郜宇
1.立体商標の定義
 
『中国商標法』第8条によれば、「自然人、法人又はその他の組織の商品を他人の商品と区別することができるいかなる標章(文字、図形、アルファベット、数字、立体的標章、色彩の組合せ及び音声等、並びにこれらの要素の組合せを含む)は、全て商標として登録出願することができる。」と規定している。立体商標とは、立体的標章又はその他の形状を含む立体的標章で構成された商標である。一般的な立体商標とは以下の2種類に分けられる。一つは、商品自体の形状、商品の包装の立体的標章を商標図形として出願登録する商標であり、もう一つの種類は、製品の形状及び包装以外の立体的標章を商標図形として出願登録する商標である。
 
2.登録が許可される立体商標
 
実務において、様々なタイプの立体商標の登録可能性について、商標主管部門や裁判所は個別の事件において、以下のような観点を提出している。
 
1)商品自体の形状、商品包装の立体的標章は、識別力を有すると一般的に認められないため、出願人は使用によって識別力を獲得したことを立証する必要がある。
 
このタイプの立体的標章は、製品自体の形状及び包装の形状を直接反映しているため、関連消費者は商品自体の形状や包装によって、商標として商品の出所を識別する習慣がないため、立体商標は一般的に識別力を有さないとみなされる。個別の出願人が業界で通用する製品や包装の立体的形状を商標登録することで、この製品と包装の立体的形状を独占することを防ぐために、商標審査主管部門は、このタイプの商標の審査全体を厳しく把握している。一つの立体商標の登録が許可されるまでには、書式査定、実体審査、拒絶査定不服審判、審決取消行政訴訟などの非常に長い手続が必要であり、最終的に立体商標として登録が許可される数はさほど多くないのが現状である。
 
ある程度の独創性を有する商品形状、商品包装は識別力があるか否かにおいて、商標局と商標審判委員会は『商標審査及び審理基準』において、このタイプの立体商標に対して、以下のように規定している。
 
商品自体の立体的形状が業界通用又は常用商品の立体的形状であり、商品の出所を識別する役割を果たせない場合、識別力を欠如することになる。ただし、商品自体の立体的形状が使用を通じて識別力を備えるようになったことを証明できる場合は除く。
 
業界通用又は常用している包装物の立体的形状について、商品の出所を識別する役割を果たせない場合、識別力を欠如することになる。ただし、業界通用又は常用している包装物の立体的形状が使用を通じて識別力を備えるようになったことを証明できる場合は除く。
   
以上の基準から、商標行政主管部門は、指定商品ではない通用又は常用の包装物の立体的形状は識別性を有すると認定したが、指定商品に属する通用又は常用の包装物については例を挙げ、且つ具体的な判断基準を定めなかった。

早い時期の司法実務において、裁判所は、独創性を有する商品の立体的形状について、以下のように認定した。

例えば、ジッポーライターの事件において、裁判所は、その製造業者である美国ジッポー社の第3031816号出願商標のデザイン全体が独創性を有し、本業界の一般的な選択範囲ではなく、その全体的な独創性によってすでに識別力を有するようになったと認定した。



ジッポー社が出願登録した第G783985号立体商標
 
なお、その後の司法実務において、一定の独創性を有する製品形状、外観が識別力を有するか否かの裁判所の判断基準には、若干の変化が生じた。特にファンタのペットボトル第3330291号商標事件において、北京高等裁判所は、「出願商標は、その指定商品の飲料類商品の容器外形であり、そのデザインの独創性はその標章の識別力を証明できず、ユニークな商品容器のデザインは著作権法又は特許法による保護を受けられるが、出願商標が識別力を有する理由にはならない。」と認定した。



コカ・コーラ社が出願登録した第3330291号立体商標
 
そして、テトラパック社の立体商標事件では、原告は出願商標はその独創性を主張し、且つ大量の業界協会の証明書、契約書、注文書、会計審査報告書などの使用証拠を提出し、裁判所もその商標が「液体乳製品」、「果汁」分野において大量に使用されることで、比較的高い知名度を有しているという事実を認定したものの、一審、二審の裁判所は、いずれも該包装製品の関連公衆は液体乳製品や果汁のメーカーに限定されず、指定商品又は指定役務の受け手、即ち、紙、厚紙、厚紙製品、包装紙などの業界分野の生産者と事業者を基準とするため、原告の提出した証拠は出願商標が使用によって関連公衆に製品の出所を識別させることで、識別力を獲得したことを証明するには十分ではないと認定した。



テトラパック社が出願登録した第15485959号立体商標
 
さらに、維布絡安舎公司が商標審判委員会を訴えた拒絶査定不服審判において、原告はその包装はユニークなデザインを有すると主張して、製品販売のデータ、広告掲載数などの証拠を提出することで、その商標が使用によって関連公衆に十分に識別される識別力を獲得したことを証明した。それに対して、裁判所は、該商標の関連デザイン部分は、部分的な細かな特徴に過ぎないとして、関連公衆も包装容器によってこのタイプの商品の出所を識別する生活習慣を欠如しているため、包装瓶の形式で現わされる立体的標章として、出願商標は商品の出所を識別する役割に欠けると認定した。
 
本事件において、維布絡安舎公司は意匠権を取得したことによって、出願商標も新規性と独創性を有することを主張し、且つ広東裁判所がその意匠権を保護した判決を提出した。それに対して、二審裁判所は判決において、「意匠デザインと商標の機能は同じでなく、意匠によって保護される立体的標章は、その商標登録に必要な識別力を有することとは必然的な関係はない。」とはっきりと認定した。



東莞安舎日用品有限公司が出願登録した第7688821号立体商標
 
2017年に施行された『最高裁判所による商標の権利付与・権利確定に係わる行政事件の審理における若干問題に関する規定』の第9条に上述した事件における裁判所の観点、即ちこのタイプの独創性を有する立体商標が識別力を有することを否定することについて明確した。

9 単に商品自体の形状又はその形状の一部を立体的標章として商標出願するものについて、関連公衆は一般的に商品の出所を指す標章だと認識しにくい場合、当該立体的標章は商標としての識別力を具備しないものとする。

当該形状は、その出願人が独創したか、又は、最初に使用したものであっても、商標としての識別力を当然備えることに至らない。

第一項にいう標章は長期又は広範囲の使用により、関連公衆が当該標章で商品の出所を識別できるようになった場合、識別力を備えると認定することができる。
 
商標審判委員会の公開している拒絶査定不服審判の審決を検索した結果、以下のような商標が、商標拒絶査定不服審判段階においても、識別力の欠如という理由によって拒絶査定されている。




ソース:商標審判委員会ウェブページhttp://home.saic.gov.cn/spw/
 
これらのことより、商標拒絶査定不服審判においても、その審決の取消行政訴訟においても、審査官と裁判官は、商標自身の形状、商品の包装物の立体的標章は顕著性を有し、関連公衆に対して、その立体的標章によってその出所を識別できると思わない。したがって、このタイプの立体商標の登録には、出願人は出願商標が使用によって識別力を獲得したことを立証することが必要となる。
 
2)一般的に識別力を有する製品形状と包装以外の立体的形態の商標
 
製品形状と包装以外の立体的形態で構成される立体的標章に対して、『商標審査及び審理基準』は該標章が識別力を備えていれば、登録を許可できると規定している。例えば下記のような例が挙げられる。


一般的に、このタイプの商標は商品又は包装の形状特徴を直接描写していないため、一般的に識別力を有するとみなされる。例えば、商標局は最近以下のような立体商標の登録を許可している。




ソース:中国商標網 http://sbj.saic.gov.cn/sbcx/
 
このタイプの立体商標に対して、商品の形状など特徴を直接描写していないため、登録が許可される。例えば、第21902204号商標は第18、25、28類を指定商品として登録された。商標図柄は以下のとおりである。



第21902204号商標
 
該商標は第18類の「革製かばん、学生かばん」などの商品、第25類の「服装」などの商品において登録が許可されたが、第28類の「玩具」などの商品においては、当該商標は製品自体でのあるようで、製品の標章ではないという理由で、識別力を備えないとして拒絶査定された。
 
同様の理由に基づき、第24441028号商標は商標局に第7類の「ロボット(機械)」、第9類の「人工知能を有するロボット」などの商品において部分的に拒絶査定された。



第24441028号商標
 
以上の事件は製品形状と包装を示す以外に、製品の特徴を描写していない立体商標は登録が許可されやすいものの、一部の事件においては、製品形状と包装以外の立体的形態が識別力を有するか否かに関する紛争になっている。
 
例えば、小熊の立体商標の拒絶査定不服審判事件において、商標局は識別力を有さないとして、出願商標の登録を拒絶した。商標審判委員会も、小熊の立体的標章の全体的な外観、視覚効果と一般的な小熊との差異が明らかでないとして、トランク、旅行バック、雨傘などの指定商品については識別力を有さないと認定した。その後、一審裁判所は係争商標の使用は、関連消費者に商品の装飾の一部分であるとみなされやすく、商標として識別されないと認定した。なお、二審裁判所は、一審裁判所の認定を否定して、小熊の立体的標章は識別力を有すると認定した。さらに、二審裁判所は一審裁判所の認定を否定して、該標章自体に機能性な役割を有さず、かつ該標章と指定商品には如何なる関連性もないと認定した。立体商標はその商品の出所情報を伝達し、区分する役割を発揮するか否か、関連公衆がそれに対するビジネス認知及びその使用形式などの要素を考慮したうえ、小熊の立体的標章としての識別力があることを認定した。



S.TOUS,S.L.社の国際登録第G1047061号商標 商品第18類のトランク、旅行バック、傘、25類の服装、靴など



小熊立体商標の使用方式
 
つまり、立体商標、特に商標自身の形状、商品の包装物の立体的形態の立体的標章の登録を許可されるのは、ある程度の難しさがある。立体的標章自身の独創性は、商標の登録が許可される先決条件の一つとなっている。しかし、それ自体が独創性を有する立体的標章であっても、出願人が大量の立証によって、出願商標が使用により識別力を獲得したことを証明することが必要である。そのため、立体的標章は独創性が弱くなればなるほど、出願人にとっては立証責任がますます重くなる。
 
3.立体商標の識別力の証明について
 
立体的標章の形式を使用して表される立体商標は、文字商標のように広告、コマーシャル、契約及び販売証書などの方法で、関連公衆の該立体商標の認知程度を直接証明するのは困難である。また、立体商標の使用は通常、文字及び図形商標と一緒に使用されるため、関連公衆は文字及び図形などの要素から離れて、単独の立体的形状によって識別できるか否かということは、証明することが非常に難しい。
 
市場調査の方式によって、関連公衆が立体商標の認知状況を直接証明できるものの、一般的に関連公衆の定義は広範であり、一度の調査によって関連公衆全体をカバーすることは困難である。そのため、市場調査は時間や労力の無駄遣いになるだけでなく、主管機関や裁判所は調査結果の客観性、正確性に対して、往々にして疑うこともある。
 
立体商標は使用によって、識別力を獲得したことを立証するという問題は通常、出願人にとっては非常に頭の痛いことである。以下の事例を以って、少しヒントを提供できれば幸いである。
 
1)「海飛絲」立体商標に関わる拒絶不服審判事件
 
シャンプーボトル「海飛絲」(ヘッド&ショルダー)は、中国の消費者には馴染みのある製品包装であり、中国の公衆は通常該製品の特有包装から、その出所が米国のP&G社であると認識できる。「海飛絲」シャンプーのブルーのボトルキャップ、流線型のボトル本体は、中国消費者に熟知されている。
 


シャンプー包装ボトル「海飛絲」
 
P&G社は2016年2月19日、商標局に第19119659号立体商標を、第3類の「シャンプー」などの商品を指定して登録出願した。商標局は出願商標における立体的標章が商品の普通包装の外観図形としては、商標の顕著性に欠け、商標の識別力を有さないため、『商標法』第11条第1項第(3)号の規定に違反するとして、その登録出願を拒絶した。P&G社は同年12月23日、商標局の当該拒絶査定を不服として、法に基づき商標審判委員会に対して不服審判を提出した。2017年12月1日、商標審判委員会はシャンプー、コンディショナー、ドライシャンプーの商品について予備査定を認める審決を下した。



第19119659商標図形

出願人が拒絶査定不服審判において提出した証拠
 
・公式サイトにおける出願人の「Head&Shoulder」、「海飛絲」ブランドに関する紹介、Head&Shoulder」、「海飛絲」外観包装の製品情報、「Head&Shoulder」、「海飛絲」シリーズ製品の紹介。
 
・「Head&Shoulder」、「海飛絲」というキーワードでネット検索したページ。
 
・ネットなどのメディアの出願人及び「海飛絲」に対する宣伝及び報道。
 
・権利保護情報。
 
・出願人の「Head&Shoulder」、「海飛絲」シリーズ製品の販売データ、宣伝ビデオ及び写真など。
 
不服審判の審決において、商標審判委員会は以下のように指摘している。

出願人が登録し、且つ使用している洗浄製品における「海飛絲」、「Head&Shoulder商標は商標局が制定した19994月、20006月の『全国重点商標保護リスト』に選出されている。シャンプー製品に使用されている「海飛絲Head&Shoulder」商標は200312月、広州市工商行政管理局に「広州市著名商標」に認定された。商標審判委員会は2015年、その審判事件において出願人の第344695号「海飛絲」商標が第3類「コンデショナー、シャンプー」商品において、第15802424「海飛絲」商標が第3類の「コンディショナー、シャンプー」商品において馳名商標を構成していると認定した。
 
また、商標審判委員会は以下のように認定した。

出願商標のボトルの立体的形状は、出願人がシャンプー、コンディショナー、ドライシャンプーの商品の包装の立体的形状を長期にわたり、大量に使用して、すでに一定の市場知名度を有している。ボトル全体の外形はユニークで、左側に流線造型が展開され、厚さも右側よりやや薄く、ボトルキャップは青色で、形状は不規則である。さらに、当委員会が調査により知りえた事実により、出願人の「海飛絲」商標は「シャンプー、コンディショナー」商品において馳名商標を構成し、商品が比較的高い知名度を有している状況下で、製品の外包装を分割できない一部分として、関連公衆は該立体商標を見たら、その区分商品の出所の商標であると識別でき、且つ出願人と一対一の対応関係を確立している。したがって、出願商標はシャンプー、コンディショナー、ドライシャンプーの商品において識別性を有しているべきであり、『商標法』第11条第1項第(3)号に規定の状況を構成していない。
 
本事件から分かるように、出願人は不服審判段階で提出した主な証拠は、その文字商標「海飛絲」、「Head&Shoulder」の使用、知名度及び保護の状況を証明する証拠であった。また、商標審判委員会は審決を出した時に、出願人の「海飛絲」、「Head&Shoulder」商標が主管機関から馳名商標、著名商標などを含めた保護を受けている状況の記録も参考にした。さらに、不服審判の審決において、「海飛絲」シャンプーボトル製品の包装本体が一定の独創性及び識別力を有すると認定されたことを前提にして、商標審判委員会が、製品が比較的高い知名度を有していると認定した状況下で、製品の外包装も分割できない一部分として、出願商標がシャンプー、コンディショナー、ドライシャンプーの商品において使用されたことで、商標は識別性を有しているべきだと推定できる。このことから、商標審判委員会は、本事件の立体商標拒絶査定不服審判事件の審理において、一方では、海飛絲シャンプーボトル自体の独特のデザインを考慮し、もう一方では出願人の製品包装上の文字商標の使用状況及び知名度を結び付けた。
 
2)ディオール「香水ボトル」立体商標の拒絶不服審判に係る審決取消行政訴訟事件
 
ディオールの香水ボトル立体商標の再審事件は、中国において昨今、立体商標に関する事件として広範な注目を集めた。本事件の係争商標はまだ最終的に登録されていないものの、最高裁判所は審理過程において、請求人、被請求人及び最高裁判所の裁判官は、立体商標の識別力への見方に注目した。
 
PARFUMS CHRISTIAN DIOR(以下、ディオール社という)の「真我」シリーズの香水は中国で一定の知名度を有し、その香水包装は一定の特徴を有する。
 




2014年8月8日、ディオール社は、マドリッド・プロトコル経由で、第G1221382号国際登録商標を、第3類の「香水」を指定して中国で登録出願した。



第G1221382号国際登録商標 
 
商標局は、出願商標が識別力に欠けるとして、『商標法』第11条第1項第(3)号を引用し、出願商標の登録を拒絶した。その後、拒絶不服審判、審決取消行政訴訟の一審、二審を通じて、出願商標の登録はいずれも裁判所より認められなかった。そのため、ディオール社は最高裁判所に再審を請求し、最高裁判所より受理された。最高裁判所は審理を経て、二審、一審の判決、商標審判委員会の審決を取消し、商標審判委員会に対して改めて審決を下すことを命じる判決を言い渡した。
 
本事件において、出願商標の識別力の問題について、請求人は再審審理において以下のような理由を主張した。

「真我」香水製品のデザインはユニークである。請求人は第3類製品に本事件の商標と同一の第7505828号商標を登録した。「真我」ボトルのデザインは香水及び関連分野の独特性において、すでに関連公衆の普遍的な認可を獲得し、請求人との間で直接的な関係を確立している。被請求人はこれに対して立証すべきである。色は商標の構成要素の一つであるが、本事件では色については考慮しなかった。それに、色を考慮しなくても、識別力を有するべきである。出願商標は長期の使用によって、中国消費者に熟知され、関連公衆は出願商標によって関連製品が請求人に由来することを識別できる。



請求人第7505828号登録商標の図形 商品:エッセンシャルオイル
      
出願商標の使用状況を証明するため、請求人は以下のような事実を主張し、且つ関連証拠を提出し証明した。

該商標は1999年に中国に入り、「真我」シリーズ製品に使われ、いずれも本事件の造型デザインに統一使用された。2001年「真我」香水は中国メディアに広く報道された。2001年に香水業界のオスカーFIFI大賞を獲得したが、その瓶の造型デザインがその賞を獲得するために役に立った。2008年、中国市場におけるシェアが1位になり、販売量は連続10年上位を占め、10年近く広告費は毎年1億元近くに達した。2011年から2016年まで、国内の知名メディアで連続してビューティー化粧大賞を獲得した。中国における数十の都市において広範な販売、宣伝を行い、2010年から2016年にかけての一部分の販売契約とインボイスを証拠とした。「真我」香水は中国において新聞、雑誌、インターネットなど様々なルートで、数十の都市で広く広告を展開した。中国国家図書館は「J’Adore」又は「迪奥真我」を検索ワードとした文献の検査結果を提出した。
 
最高裁判所は再審判決において、出願商標の識別力について、最終的な認定をしなかったものの、商標審判委員会に対して、新たに不服審判の審決を下す際に、以下の要点を考慮するように指摘した。

まず、出願商標の識別力と使用によって獲得した識別力についてである。もう一つは、審理基準の一致性の原則である。本事件の商標と同一の商標はすでに登録されており、個別の事件の審理で法執行の基準の統一性の問題を無視することはできない。
 
本事件の出願商標が最終的に登録されるか否かということは、商標審判委員会による新たな審理及び後続の手続きの最終結果による。しかし、本事件において注意すべき点は、請求人は、本事件と同一の第7505828号立体商標がすでに商標局に登録を許可され、次いで審理基準の一致性に基づき、出願商標も同様の保護を得られることを要求した。商標局は過去の審査実践において、識別力も含めて文字部分の立体商標に対して、その全体的な識別力を認めている。したがって、文字部分「J’Adore」の第7505828号立体商標は拒絶されずに、登録が許可された。また、現在の改正後の『商標審査及び審理基準』によると、商標局は識別力のない立体的標章及びその他の識別性の要素を組み合わせた商標について、請求人は出願時又は『審理意見書』に応答する時、識別力のない立体的標章の部分の専用権を自主的に放棄する以外、立体的標章は識別力を有さないとして、出願商標の登録を拒絶される。本事件の文字部分を含まない出願商標に対して、最高裁判所は、「請求人の過去に出願が許可された立体商標を本事件の商標登録の参考要素とすることができるが、個別の審理原則の理由で簡単に採用しないことはできない」と認めた。商標審判委員会が新たに不服審判の審決を下す際に、請求人のすでに登録されている立体商標を参考にするか否かについては、さらなる進展が期待される。
 
また、請求人は本事件において、出願商標の実際の使用において付属の文字部分である「J’Adore」、「迪奥真我」の広告、宣伝報道の状況、製品の販売状況を商標の使用による識別力の獲得を証明するために提出している。最終的に該立体商標の登録を許可されるか否か、今度の進展に期待したいものである。
 
4.まとめ

立体商標の登録出願は現在、商標登録の一つの課題となっている。立体商標の登録の条件及び使用により識別力を獲得したことを証明することについて、現在はまだ統一した基準がないため、商標主管機関と裁判所によるさらに進んだ対策が待たれる。本稿が、読者の皆さんの立体商標問題の理解の一助になれば幸いである。
 
参考文献:
 
1.馮術傑『立体商標の識別性の認定』-2014年『法学』第6期
 
2.常俊虎『深い分析!立体商標章別性の問題』-2016年4月27日 超凡知識産権ウェイシン公式アカウント 
 
3.俞恵斌『立体商標の識別性の有無の判断』-『裁判官の解釈商標の典型的な事件』中国工商出版社
 
4.『立体商標の識別性の判断-維布絡安舎(広東)日用品有限公司と国家工商行政管理総局商標審判委員会との間の商標出願拒絶裁定不服審判に係る審決取消行政事件』-『北京裁判所商標に係る難事件の裁判官の解釈第4巻』法律出版社
 
5.張玲玲『立体商標の特有の識別性の判断-聖托斯有限公司が商標審判委員会を訴えた商標出願拒絶査定不服審判に係る審決取消行政紛争事件』-2018年8月21日中日華商標雑誌ウェイシン公式アカウント
 
6.『第19119659号立体商業商標拒絶査定不服審判の審決書』-商標審判委員会のウェブサイト
 
7.『終審判決、最高裁判所陶凱元大裁判官本日の開廷審理と判決「ディオール立体商標事件」』-2018年 4月26日知識産権界ウェイシン公式アカウント
 
8.林丹『審理事件から見る立体商標の識別性問題』-商標審査協作中心ウェブサイト。
 
(2018)
 


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