この度、弊所が担当した中国発明特許の無効審決取消事件は、二審で勝訴を受け、実施可能要件違反の無効理由が中国最高裁に認められ...
近日、当所が代理したある発明特許に係る無効審判審決取消訴訟は一審で、明細書の開示不十分を理由として対象特許の全部無効に成功...
特許審査指南の改訂(2025年)について


2025年11月10日に「特許審査指南の改訂に関する国家知識産権局の決定」が公表された。改訂に対する一般公衆の理解及び運用を促進するために、以下に改訂の概況及び要点について解説する。

.改訂の概況

(一)改訂の背景

中国共産党中央及び国務院は知的財産活動を非常に重視している。習近平総書記は知的財産権の保護に関する法律・法規を整備し、知的財産の審査の質と効率を向上させる必要があると指摘した。中国共産党第20次全国代表大会報告において、「知的財産権の法的保護を強化し、総合的なイノベーションを支援する基礎制度を構築する」の必要性も指摘されている。中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議は「国民経済及び社会発展第15次5カ年計画の策定に関する中国共産党中央委員会の提案」が審議・採決され、知的財産権の保護及び運用を強化することが強調された。

中国の新分野・新業態の急速な発展及び特許審査業務の進化に伴って特許分野に生じた変化に対応するために、従来の審査業務に対して新たな要求が求められている。

第一に、特許審査のルールを人工知能などの新分野・新業態の急速な発展に適応させる必要がある。第二に、特許審査の権利化・無効審判に関するイノベーターによる合理的なニーズに積極的に応える必要がある。第三に、特許審査実務における有効かつ成熟した経験をさらに定着・普及させる必要がある。

習近平総書記による知的財産活動に関する重要な指示・説明、党中央委員会と国務院の知的財産活動に関する政策決定を実行に移し、特許審査に対する多方面からの新たな要求に応えるために、特許審査指南の改訂が不可欠である。

(二)改訂の経緯

2025年1月に国家知識産権局により審査基準の改訂作業が開始され、イノベーターのニーズ調査、実務上の知見の結集を経て特許審査指南(意見募集案)が作成され、4月30日~6月15日の間で意見募集が行われた。また、大いに注目されている問題について、書面提出や座談会、現地調査により多方面から収集された意見を検討して意見募集案に反映させた。以上を踏まえて、改訂審査基準は国家知識産権局審議会議で審議・採決され、2025年11月10日に第84号局令により公表、2026年1月1日より運用開始となる。

(三)改訂の方針と要点

審査基準の改訂は習近平主席の新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を堅持し、中国共産党第20次全国代表大会、中国共産党第20期中央委員会第2回、第3回、第4回全体会議の精神を貫き、知的財産権の法的保護を強化するためのものである。今回の改訂は実際のニーズからアプローチし、新分野・新業態における特許の審査基準の充実化に焦点を置き、解決が急がれ、かつ意見が成熟して纏まった実務を中心に行われたものである。

改訂の要点は次のとおりである。

1.産業イノベーションを奨励するための新分野・新業態の法制度の整備

第一に、人工知能技術の発展ニーズを満たすために、人工知能倫理に関する審査を強化し、出願書類の作成要件を明確化し、審査事例を明示する。第二に、急速に発展しているストリーミングメディア産業の状況に対応するために、ビットストリーム関連出願の審査のルールを新設し、保護対象の適格性及び出願書類の作成に関する要件を明確化する。第三に、植物品種の定義を明確化し、特許権付与対象の範囲を拡大し、植物新品種保護制度と合理的かつ効果的にリンクさせ、種子産業における知的財産権の保護を強化する。

2.早急な解決が求められる実務問題に関する審査基準・ルールの最適化

第一に、「特実併願」の取扱について、立法趣旨に立ち戻り、実用新案特許権を放棄する場合にのみ、発明特許権を付与することができることを明確化する。第二に、出願書類の作成品質及び審査の品質の向上を図るために、進歩性に関する法律規定の方針と本質的要件に基づき、課題の解決に貢献していなくても請求項に記載された構成は通常、発明・創作に進歩性をもたらさないことを明確化する。第三に、発明者の身分情報の記入要件、出願人の身分情報及び連絡方法に関する特許代理機関の確認義務を明確にし、関連法律規定と効果的にリンクさせて特許代理機関と特許弁理士の業務慣行を標準化し、特許出願の秩序を保つ。第四に、出願人の負担を軽減するために、所定様式で提出されたコンピュータで読み取り可能な配列表の枚数が料金計算の対象外となるように割増料金の算定ルールを調整する。第五に、正確かつタイムリーに費用返還が行われるように費用返還に関する規定を調整する。第六に、特許無効審判制度の濫用をさらに規制するために、審判請求人の真の意思表示でない無効審判請求は受理されないことを明文化する。第七に、理由及び証拠が実質的同一である無効審判請求を受理・審査しないことを規定し、「一事不再理」の原則をいっそう明確にする。第八に、不服審判・無効審判手続において、内容の適正性を確保することを前提に、実質的な争いの解決を特に反映できるように審決の最適化・調整が可能であることを明文化する。第九に、不服審判請求人が提出した新な理由又は証拠に基づいて拒絶査定取消審決が出された不服審判手続において生じる遅延は権利化のための合理的な遅延に該当することを明確化することで、特許存続期間の延長に関する規定を充実化させる。

3. イノベーターへのサービスを向上させるための実務上成熟した運用の定着化

第一に、イノベーターの実際のニーズを満たすために、オンデマンド審査の原則の明確化、快速審査に関する新規定の増設及び「必要に応じる遅速緩急」を可能とするオンデマンド審査サービスを行う。第二に、出願時に優先権主張がなされなかった分割出願に関して、出願後でも分割出願人による優先権主張が可能となるように審査のルールを明文化する。第三に、国内移行後の国際出願及び分割出願の特許登録証明書に記載された出願時の書誌情報の意味を明確にする。第四に、訂正の手法及び内容が明確になるように、無効審判手続における訂正書の提出形態及び審査対象書面の判断方針を明文化する。

二.人工知能関連出願の審査基準の改訂

(一)改訂の背景

人工知能関連出願に関する審査基準の見直しが数回も行われたが、今回の改訂は、2024年12月に公表された「人工知能関連特許出願ガイドライン(試行)」に加え、さらに人工知能技術の発展に適応し、イノベーターと人工知能産業発展のニーズに的確に応え、人工知能分野における出願・審査の実務における課題の早急解決を図るものである。

今回の改訂において、国家知識産権局は近年の特許審査実務及び調査研究に基づき、人工知能関連出願の審査基準の補足・改訂を実施することで人工知能技術の特徴やガバナンスのニーズに合わせて審査体制の整備をさらに推し進めている。

(二)改訂の内容

改訂は審査基準第2部第9章第6節を中心に行われ、下記4つの要点を含む。

1.一目瞭然性を強化するための章・節のタイトルの文言修正

第6節のタイトルは改訂前の「アルゴリズム構成又はビジネスルール・方法を含む特許出願の審査規定」から、「人工知能、ビッグデータなどに係るアルゴリズム構成又はビジネスルール・方法を含む特許出願の審査規定」と改訂された。

【改訂の解説】

本改訂は、第6節のタイトルの冒頭に「人工知能、ビッグデータ等に関わる」という文言を追加することで本節に規定される審査基準の適用範囲を明確にし、人工知能やビッグデータ等の新分野・新業態に着目した本節の先導性を強調するためのものである。

2.特許法第5条第1項に対応する審査基準の追加

(1) 人工知能及びビッグデータ関連出願の審査対象の補足

「6.1審査基準」の第一文の「審査は、保護を求める技術的ソリューション、即ち、請求項に規定される技術的ソリューションに対して行うものである。」という記載は、「必要に応じて明細書の内容を審査する」という文言を追加して「審査は、保護を求める技術的ソリューション、つまり請求項に規定される技術的ソリューションに対して行い、必要に応じて明細書の内容を審査するものである。」と改訂された。

(2)特許法第5条第1項に対応する審査基準の新設

「6.1.1 特許法第5条第1項に基づく審査

アルゴリズム構成又はビジネスルール・方法を含む特許出願は、データ収集、タグ管理、ルール設定及び決定推奨等には、法律、社会道徳に違反するか、又は公共の利益を害する内容が含まれている場合、特許法第5条第1項に基づき、特許を受けることができない。」
本改訂に合わせて改訂前の第6.1.1節から第6.1.3節までを順次繰り下げる。

【改訂の解説】

人工知能技術が「インテリジェンス・フォー・グッド」を指向し、関連する特許出願の内容が国の法律・法規及び社会倫理の要求に適合するように、本節は特許法第5条第1項に対応する審査基準を導入し、人工知能及びビッグデータに係る発明・創作は個人情報保護法等の法律規定を厳格に遵守すべきであり、法律、社会道徳に違反するか、又は公共の利益を害することができないことを明確に規定している。

また、特許法第5条第1項に規定する審査対象は出願書類全体を含んでいる点に則って請求項に記載の技術的ソリューション及び明細書の記載の両方を審査する必要があることから、第6.1節に「必要に応じて明細書の内容を審査する」という内容を追加した。

(3)特許法第5条第1項に対応する審査事例の明示

「6.2 審査事例」において、特許法第5条第1項の審査基準に基づき、【事例1】「ビッグデータに基づくショッピングモールにおけるマットレス販売支援システム」、【事例2】「無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法」の2つの審査事例を追記した。

【改訂の解説】

【事例1】は人工知能及びビッグデータ関連出願が国の法律を遵守しなければならないことを示すものである。人工知能技術の実施が関連法律に違反した場合、特許法第5条第1項に規定する法律に違反した発明・創作に該当するため、特許を受けることができない。

新設【事例1】は、ビッグデータに基づくショッピングモールにおけるマットレス販売支援システムであり、マットレスに関する顧客のリアルな感想を把握し、的確なマーケティングを実現することを目的に、公共の場所に設置されたカメラを用いて顧客に知られることなく顔の特徴を撮影し、顧客識別情報を取得するものである。ショッピングモールなどの営業場所において画像撮影や顔認識によりマットレスの的確なマーケティングを行うことは、公共安全維持に必要ではない。また、出願において、データの取得又は情報収集が顧客の同意を別途得るなど適法性が示されていないため、当該発明・創作は個人情報保護法に違反するものである。

新設【事例2】は人工知能及びビッグデータ関連出願がアルゴリズムによる差別を避けるべきであることを示すものである。不確実な状況下で最適な意思決定を行う際には、アルゴリズムの根拠となる意思決定メカニズムは倫理的でなければならず、差別的又は偏ったアルゴリズム規則を設定してはならない。そうでなければ、特許法第5条第1項に規定する社会道徳に反する発明・創作に該当し、特許を受けることができない。【事例2】は無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法であり、歩行者の性別と年齢を用いて意思決定モデルを訓練し、緊急時の意思決定が行われる際、歩行者の性別と年齢に基づいて保護対象と衝突対象が区別される。当該発明は性別と年齢に基づいて異なる意思決定を行うことから、生命尊重とすべての人が平等であるという基本的な社会論理に反している。実質上、アルゴリズムモデルを介して社会的偏見を固定化・増大させ、性別と年齢による差別を強化し、社会集団間の公平性と調和を損ない、社会道徳に反するものである。

3.審査例の追加による人工知能技術の進歩性判断基準の明確化

「6.2審査例」欄において、進歩性審査の事例として、【事例18】「船舶数を識別する方法」、【事例19】「鉄スクラップの等級分け用ニューラルネットワークモデルの構築方法」が追加された。

【改訂の解説】

追加された2つの審査例は、人工知能関連出願の進歩性の審査基準をより明確にし、適用場面や処理対象の違いによって生じる進歩性判断の疑問の解消を図るものである。

新設【事例18】は適用場面が異なるが、アルゴリズム又はモデルが同一である場合の進歩性判断の考え方とルールを示すものである。請求項に係る発明に含まれるアルゴリズム又はモデルが、適用場面及び処理対象において先行技術と異なるものの、アルゴリズムフロー、モデルパラメータなどの要素に実質的な変更がない場合、当該発明は通常、進歩性がないものと判断される。【事例18】の船舶数を識別する方法は通常のディープラーニングによりモデルを訓練して船舶数を識別するものであり、引例1は木上の果実を識別対象とするものであり、両者は識別対象のみが相違する。船舶と果物は外観や大きさ、置かれている環境などが異なるが、かかる出願から識別対象の相違によるディープラーニング、モデル構築又は訓練プロセスの調整・改善を確認できず、また、識別対象が異なっていても、情報のラベル付けやデータセットの分割、モデルの訓練など個数識別に必要な操作の実質的な差異がないことは公知である。したがって、かかる出願は進歩性を有しないものである。

新設【事例19】は適用場面が同様でアルゴリズムやモデルが異なる場合の進歩性判断の考え方とルールを示すものである。請求項に係る発明は、先行技術と比較して適用場面が同一又は類似であっても、アルゴリズムフロー、モデルパラメータ、又はその他の側面において実質的な変更があり、当該変更について先行技術の示唆もなく、加えて、かかる出願が課題を解決することができ、有利な効果を達成できる場合、その進歩性が認められるものである。【事例19】の鉄スクラップの等級分け用ニューラルネットワークモデルの構築方法は、畳み込みニューラルネットワークの学習により、等級分け出力を有する等級分けニューラルネットワークモデルを構築するものであり、鉄スクラップの等級分けの効率と精度を向上させることができる。引例1は種別判定済みの鉄スクラップの画像データから特徴抽出してモデル訓練を実施することで鉄スクラップの種類を識別するものである。かかる出願は、引例1とは適用場面が類似している(いずれもスクラップ鋼種の識別用である)が、解決する課題及び技術的手段は引例1と異なっている。かかる出願では、鉄スクラップの形状と厚さを識別するために鉄スクラップの色、エッジ、テクスチャなどの特徴抽出が必要であり、抽出・学習される特徴の相違に応じて畳み込み層及びプーリング層のライン数や層設定の変更や改良もなされている。これらについて先行技術に示唆はない。よって、かかる出願は進歩性を有するものである。

4.出願書類の作成基準の適正化による出願の品質向上

(1) 人工知能関連出願の明細書作成要件の新設

「6.3.1 明細書の作成」欄に以下の規定を追加した。

「当業者が明細書の記載に基づいて発明を実施できるように、人工知能モデルの構築又は訓練に関する場合、通常、モデル構築に必要なモジュール、層別又は接続関係、モデル訓練に必要な具体的な手順、パラメータなどを明細書に明記する必要があり、特定の分野又は場面への人工知能モデル又はアルゴリズムの適用に関する場合、通常、モデル又はアルゴリズムがどのように特定の分野又は場面に適用されるか、アルゴリズム又はモデルの入出力データの内的関連性を示す構成などを明細書に明記する必要がある。」

【改訂の解説】

本改訂は、人工知能関連出願によく見られる二つのパターンに関して、アルゴリズム又はモデルの「ブラックボックス」的な性格、内部構造及び動作メカニズムの直接的観察が困難であるなどの特徴に着目し、実施可能要件を満たすべく明細書の作成基準をより明確化した。これにより、出願の品質向上を促進し、関連技術が一般公衆に十分に知られるようにすることで人工知能技術の普及と革新を加速させるためのものである。

具体的には、人工知能モデルの構築又は訓練に係る特許出願の場合、モデルの中核アーキテクチャを定義するモジュール構成、階層設計及び接続関係、また最適化の手法を反映する具体的な訓練手順、パラメータなどを明細書に記載する必要がある。人工知能モデル又はアルゴリズムの具体的な応用に係る特許出願の場合、モデル又はアルゴリズムがどのように特定の分野又は場面に適用されるか、アルゴリズム又はモデルの入出力データの設定が発明の中核であると考えられるため、明細書に明記する必要がある。」

(2) 実施可能要件の審査事例に関する節の新設

「6.3.3 審査事例」を新設し、特許法第26条第3項に対応する事例として、【事例20】「顔の特徴を生成する方法」及び【事例21】「生体情報に基づく癌の予測方法」を挙げた。

【改訂の解説】

新設【事例20】は、人工知能アルゴリズム又はモデルを特定の分野の課題を解決するための手段として使用する場合、その技術的手段が出願書類に明記されていなくても、この分野において当該課題を解決するための技術常識であると認められる場合、明細書の記載がなくても実施可能要件違反に該当しないという判断方針を示すものである。【事例20】は顔の特徴の生成方法であり、顔画像生成の精度を向上させるという課題を解決するために、顔画像の特徴領域を特定するように第一畳み込みニューラルネットワークに空間変換ネットワークが配置されている。第一畳み込みニューラルネットワークにおける空間変換ネットワークの具体的配置位置について明細書には記載はないが、空間変換ネットワークは画像の特徴領域の認識に影響を与えず、全体としてモデル内の任意の位置に挿入できることが当業者に知られていることから、かかる発明は実施可能要件違反に該当しないものである。

【事例21】は、人工知能アルゴリズム又はモデルを特定の分野の課題を解決するための手段として使用する場合、その技術的手段(入出力の内的関連性を含む)が出願書類に明記されておらず、技術常識でもなく、明細書の記載に基づいて発明を実施してその課題を解決することができない場合、出願書類には特許を求める発明が十分に開示されていないと判断すべきであるという判断方針を示すものである。【事例21】は生体情報に基づく癌の予測方法であり、悪性腫瘍の予測精度の向上を課題とし、訓練済み強化スクリーニングモデルに対して、スクリーニングモデルの入力データとして血液検査値、顔画像特徴などを入力し、悪性腫瘍の罹患率予測値の出力データを得る発明である。しかし、どのような血液検査指標や顔画像特徴が悪性腫瘍の判断の精度に関わるかについて、明細書には記載はなく、当業者も把握できないため、この発明は実施可能要件違反に該当するものである。

(三)小括

今回の改訂は、近年の人工知能及びビッグデータ関連出願の審査基準の整備に関する取り組みの一環であり、人工知能産業の発展ニーズ及び審査実務の課題に基づき、倫理性、進歩性及び実施可能要件などを明文化することにより、イノベーター及び審査官に明確な指針を提供している。

改訂後の特許審査指南は、人工知能関連出願の審査基準がより整備されており、技術発展のニーズへの適応度の向上、審査品質・効率の向上に寄与し、技術革新への奨励にも繋がるものでる。

三.ビットストリーム関連出願の審査基準の改訂

(一)改訂の背景

ストリーミングメディア産業は、文化産業の高度化を牽引する重要な原動力であり、デジタル経済の新たな成長点となっている。現在、インターネットトラフィックの80%はビデオエンコード技術を用いて圧縮されたビットストリームとして生成されているものである。ビデオエンコード・デコード技術は、保存・伝送コストを大幅に削減しながら、ビデオの鮮明度を確保し、ライブビデオストリーミング、ビデオ会議、クラウドゲーム、バーチャルリアリティといった新分野・新業態の急速な発展を支える技術基盤であり、重要な保証となっている。

ストリーミングメディア産業が知的財産権を核とした新質の生産力を構築し、公正で競争的な市場環境を整えることを支援するため、本改訂は技術進歩を図る観点から「ビットストリーム」関連出願の審査基準及び作成要件を新設する。これにより、ストリーミングメディア産業における技術革新要素の知的財産保護を強化し、新分野・新業態のイノベーターが特許制度をより有効に活用できるよう導き、ストリーミングメディア産業における技術革新を支える基本制度の構築を支援する。

(二)改訂の内容

ストリーミングメディア業界及び技術の発展動向に対応するため、国家知識産権局は複数回にわたる調査を実施し、ストリーミングメディア業界の権利者及び実施者の要望を広く聴取し、「ビットストリーム」クレームに関する世界の主要な知的財産審査機関の審査及び保護の規定を体系的に検討した。ストリーミングメディア業界の権利者、実施者及び消費者の間で得られたコンセンサスに基づき、業界の発展ニーズに鑑み、「審査基準」第二部第九章に第7節を追加した。この節は、ビットストリームを含む特許出願の発明適格性の審査、明細書及びクレームの作成について規定するものである。改訂要点はは以下のとおりである。

1.単純なビットストリームクレームの記載要件の明確化

審査基準の第二部第九章「7.1.1 特許法第25条第1項第2号に基づく審査」において、クレームの主題が単純なビットストリームのみに関する場合、当該クレームが特許法第25条第1項第2号に規定する知的活動の法則及び方法に該当するものであり、特許の保護対象ではないことを明確化した。

【改訂の解説】

ビデオエンコード方法によって生成されるビットストリームは、予め定義された文法とデータ構造を介して復号側でビデオデータを復元する機能性データである。特許の保護対象の観点では、ビットストリームは、データの編成方法を定義するためのデータ構造、及び物理的特性や情報伝達機能を強調するための信号と機能的に類似している。現在、データ構造及び信号は特許対象として認められないものである。したがって、今回の改訂で単純なビットストリームが特許の保護対象ではない旨を明確にした。

2.ビットストリームの保存・伝送方法に関するクレームの記載要件の明確化

審査基準第二部第九章「7.2.2クレームの記載」において、ビットストリームの保存・伝送方法に関するクレームには、ビデオエンコード方法を実行するステップと、当該ビデオエンコード方法によって生成されたビットストリームの保存・伝送とが含まれなければならないことを明確に規定している。具体的な記載例は以下のとおりである。

「請求項1に記載のビデオエンコード方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを保存することを特徴とするビットストリームの保存方法。

請求項1に記載のビデオエンコード方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを伝送することを特徴とするビットストリームの伝送方法。」

【改訂の解説】

ビデオエンコード技術は効率的な圧縮アルゴリズムを通じて、画質を確保しつつ元のビデオのデータ量を大幅に削減し、超低遅延、高解像度、スムーズなビデオインタラクションを実現している。ビデオエンコード方法の実行手順は、ビットストリームの保存・伝送に関するリソースの効率的配置を実現するための技術的基礎であり、肝心な保証でもあり、ビデオデータの保存スペースと伝送に必要な帯域幅を大幅に削減できる。これは、ビットストリームの保存・伝送に関する発明に不可欠なステップである。また、クレーム解釈の観点から、ビデオエンコード方法を実質的に使用せずにビットストリームの保存又は伝送のみを行う発明と区別する必要がある。

今回の改訂はビットストリームの保存・伝送方法に関するクレームの記載要件を明確化し、ビットストリームを生成する特定のビデオエンコード方法のクレームをベースに、当該方法クレームを引用するか、または当該方法クレームのすべての構成を含めるようにビットストリームの保存・伝送方法に関するクレームの書き方を規定した。

3.ビットストリームを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関するクレームの記載要件の明確化

審査基準の第二部第九章「7.2.2クレームの記載」において、ビットストリームを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関するクレームは、「媒体+プログラム・命令+ビットストリーム+プログラム・命令を実行してビデオエンコード方法を実施してビットストリームを生成する」を含む必要があることを規定している。具体的な記載例は以下のとおりである。

「コンピュータプログラム・命令及びビットストリームを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、

前記コンピュータプログラム・命令がプロセッサによって実行されると、請求項1に記載のビデオエンコード方法が実行されて前記ビットストリームが生成されることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。」

【改訂の解説】

「ビットストリーム」に関連する発明の包括的な保護を実現し、発明者に保護の選択肢として方法と製品の両方を提供している。権利行使を容易にするため、今回の改訂では、ビットストリームを含む物クレームの記載方式と要件を明確化した。具体的には、物クレームはビットストリームを含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の方式でなければならないと規定した。これは、審査基準の第二部第九章の既存の規定と一致している。また、この分野の技術的特徴に基づき、「媒体+プログラム・命令+ビットストリーム+プログラム・命令を実行してビデオエンコード方法を実施してビットストリームを生成する」という方式を満たす物クレームのみ記載要件を満たすものとする主旨が強調されている。

(三)小括

本改訂はストリーミングメディア業界における技術革新に対する特許保護の強化に向けた制度的基盤を築くものであり、新分野・新業態における知的財産保護を強化し、新質の生産力を促進するための重要な措置である。

.生物育種分野における特許出願の審査基準の改訂

(一)改訂の目的

植物新品種の開発には多額の投資と長い期間を要する。中間育種素材は新たしい品種を育種するための鍵であり基盤であるが、容易に複製され、失われてしまう。近年、育種分野における遺伝子組み換え技術や遺伝子編集技術の大規模な応用に伴い、育種過程において育種的価値や経済的価値を持つ中間素材が大量に開発されている。改正後の植物新品種保護条例は、2025年4月29日に公布され、2025年6月1日より施行されている。改訂前の審査指南では、「植物品種」の定義と種子法及び植物新品種保護条例における品種の定義との整合性が十分に取れておらず、中間育種素材の知的財産権保護が十分に図られていなかった。今回の審査指南の改訂により、「植物品種」の定義が明確になり、関連法規との整合性が図られ、イノベーターの要望にも応えるようになった。

(二)改訂の内容

1.「植物品種」の定義について

審査指南第2部第1章第4.4節「動物及び植物品種」に「植物品種」の定義が追加され、即ち「特許法でいう植物の品種とは、人為的な育種又は発見及び改良により得られた、形態的特徴及び生物学的特性が一貫して遺伝的形質が比較的安定している植物群をいう。」と改訂された。

【改訂の解説】

審査指南における「植物品種」の定義を種子法における関連定義と一致させることで、特許制度と植物品種制度との整合性をとり、種子産業のイノベーションにおける知的財産保護の空白の発生を回避する。上記の改訂は、中国が加盟している「植物新品種の保護に関する国際条約」(1978年)の要件及び特許法の立法趣旨に合致しており、生物育種産業の発展をより一層促進することができる。

2.「天然に存在する野生植物は科学的発見に該当する」規定について

審査指南第2部第10章第9.1.2.3節「動物と植物の個体及びその構成部分」において、「自然界から発見され、技術的に加工されていない、天然に存在する野生植物は、特許法第25条第1項第(1)号に規定する科学的発見に該当するため、特許を受けることができない。ただし、人為的な育種又は改良が行われた野生植物であって、産業上の利用可能性を有するものである場合、その植物自体は科学的発見の範囲に該当しない。」という規定が追加された。

【改訂の解説】

今回の審査指南の改訂では、人為的な育種や改良が行われておらず、人為的な介入も行われていない、天然に存在する野生植物は科学的発見に該当し、特許の保護対象ではないことが明確化された。野生微生物及び自然界の天然形態で存在する遺伝子又はDNA断片に関する審査指南の規定を参酌して、「自然界から発見され、技術的に加工されていない、天然に存在する野生植物」が科学的発見に該当し、特許を受けることができない一方、「人為的な育種又は改良が行われた野生植物であって、産業上の利用可能性を有するものである場合」は科学的発見に該当しないと改訂された。

3.「植物品種」の判断原則について

審査指南第2部第10章第9.1.2.3節「動物と植物の個体及びその構成部分」には、「本部分の第1章の第4.4節に記載の『植物の品種』の定義に基づいて、人為的な育種、又は、発見された野生植物の改良により得られた植物及びその繁殖材料は、群全体にわたって一貫した形態的特徴及び生物学的特性又は比較的に安定な遺伝的形質を備えていなければ、『植物の品種』とみなされないため、特許法第25条第1項第(4)号に規定する場合に該当しない。」と定められている。

【改訂の解説】

今回の審査指南の改訂では、「植物品種」の判断方針が明確に規定されている。具体的には、保護を求める主題が「植物品種」に該当するか否かを判断する際に、請求項に係る発明について、出願書類に開示された内容に基づいて実質的な判断を行う必要がある。主に、植物又はその繁殖材料が、群全体にわたって主要な特性の一貫性と安定性を有しているかどうかを判断する。一貫性とは、予測可能な自然変異を除き、植物群内の個体間で関連する特徴又は特性が一貫して現れることを指す。安定性とは、繰り返し繁殖させた後又は特定の繁殖周期を経過した後においても、植物群の主要な特性が変化しないことを指す。審査実務においては、「植物品種」の判断は、個別のケースごとに行うことができる。

例えば、請求項において、「遺伝子組み換え大豆品種」など、植物品種またはその繁殖材料を明記している場合、それは植物品種の範囲に該当する。

保護を求める植物またはその繁殖材料が無性生殖および育種により得られ、すべての個体が同一の形質を持つ親植物のクローンである場合、上記植物またはその繁殖材料は、群全体にわたって一貫性および安定性を有しており、植物品種に該当する。

請求項において、例えば、「大豆中黄 13を形質転換受容体とし、配列番号1に示される遺伝子組み換えイベントを含む遺伝子組み換え大豆系ZUTT-32」や「Xinluzao 9を雄親、Jimian 169を雌親とし、交雑および戻し交雑スクリーニング3回と自殖2回により得られた高収量ワタ」のように、特定の植物群又はその繁殖材料が規定されている場合、群全体の特性の一貫性や安定性を達成するために必要な育種条件及び方法プロセスは植物によって異なるため、当業者が、出願書類に記載された育種方法のみから、当該植物群の特性が一貫しているか否か、安定しているか否かを判断することは困難である。出願人が、保護を求める植物群またはその繁殖材料の特性が一貫しておらず、かつ/又は安定していないことを証明する十分な証拠を提示できない場合、当該植物群又はその繁殖材料は植物品種に該当すると判断される。

請求項が、特定の特性を有するDNA又は機能性タンパク質配列のみによって規定される広範な植物群又はその繁殖材料に関するものであり、かつ、植物全体の構造構成及び全体のゲノム情報について規定していない場合、改変された遺伝子又はタンパク質及び目的とする特性は、多数の植物群または個々の植物に適用し得る。しかしながら、上記の植物群又は個々の植物は、請求項に係る遺伝子又はタンパク質を除き、同一または非常に類似した遺伝的背景を有していないことから、かかる植物群またはその繁殖材料は、その主要な特性において一貫性及び安定性を有していないと言える。クレーム全体から判断すると、その主題は植物品種の範囲に該当しない。例えば、請求項が「配列番号1に示される外因性挿入遺伝子を含む耐乾燥性イネ」に関するものである場合、その発明の主題は、植物品種に該当しない。

4.遺伝子組み換え植物が「植物品種」に該当するか否かの判断に関する規定

審査指南第2部第10章第9.1.2.4節「遺伝子組み換え動物と植物」において、「それ自体が依然として本部第1章第4.4節でいう『動物品種』又は『植物品種』の範囲に該当する場合」の前に「仮に」という文言が追加された。

【改訂の解説】

今回の審査指南の改訂により、「植物品種」の範囲が狭められ、「群全体にわたって一貫した形態学的特徴及び生物学的特性を有し、かつ比較的安定した遺伝的形質を有する」遺伝子組換え植物のみが「植物品種」として認められるようになった。したがって、場合によって判断する必要があることを強調するために、「仮に」という文言が追加された。

(三)小括

今回の生物育種分野における特許出願審査基準の改訂は、問題指向アプローチを徹底し、生物育種の技術革新に対する特許保護を効果的に確保し、育種産業の質の高い発展に対してより強力な法的保護を提供する。

. 発明実体審査の一般規定の改訂

(一)「特実併願」の取扱いの見直し

1. 改訂の目的

同一の出願人が同日(出願日を指す。)に同一の発明・創作について実用新案出願と発明特許出願の両方(以下、「特実併願」という。)を行った場合の取扱いをさらに標準化し、審査実務の運用をより一層、中国の現在のイノベーション発展実務のニーズ及び特許法の立法趣旨に合致させるため、今回の特許審査指南の改訂では、「特実併願」として出願し、且つ先に取得した実用新案権がまだ消滅していないという具体的な状況について、実体審査手続きにおける当該発明特許出願の取扱いを調整した。

2. 改訂の内容

今回の改訂は、特許審査指南第2部第3章の6.2.2の「1件の特許出願と1つの特許権の取扱い」について、「特許法実施細則(以下、「細則」という。)第47条に基づき、出願時に同一の発明・創作について特実併願したことをそれぞれ説明しなければならない。説明しなかった場合、特許法第9条第1項の「同一の発明・創作に一つの特許権しか付与されない」という規定に基づいて扱う。説明した場合、そして、発明特許出願が実体審査を受けて拒絶理由が見つからなかった場合、出願人に所定期間内に実用新案権を放棄する旨の意思表示を提出するよう通知しなければならない。出願人が放棄に同意しない場合、当該発明特許出願は拒絶査定される。出願人が所定の期間内に応答しなかった場合、当該発明特許出願は取り下げられたものとみなされる。」と明確にしている。この改訂に合わせて、「特実併願」における発明特許出願を補正することで発明特許権を取得できるという選択肢を削除した。

【改訂の解説】

特許法第9条は、同一の発明・創作に一つの特許権しか付与されないと規定しており、この法律上の規定は二重特許(ダブルパテント)禁止の原則を具体的に反映したものである。1990年代半ば、我が国の発明特許出願審査の滞積問題が深刻化している中、国家知識産権局は、この問題を緩和するために、出願人が同日に同一の発明・創作について実用新案出願と発明特許出願の両方を行うことを許可した。これにより、実用新案出願で早期に権利化して保護を受ける一方で、発明特許出願の実体審査を待つ。発明特許出願が登録要件を満たしていると判断された場合、出願人は既に取得した実用新案権を放棄することで、発明特許権を取得することができる。当初、「特実併願」制度は、出願人がその発明・創作について権利保護をタイムリーに得られるようにするための仮措置に過ぎなかった。2008年に行われた特許法の第3次改正では、「特実併願」制度について十分な議論及び調査研究を行った上で、特許法第9条第1項の「同一の発明・創作には特許権が1件のみ付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明・創作について実用新案特許出願と発明特許出願の両方を行い、先に取得した実用新案特許権が消滅しておらず、かつ出願人が当該実用新案特許権を放棄する旨の意思表示を行った場合、発明特許権を付与することができる。」という規定を追加した。

現在、特許出願及び審査の状況は大きく変化しており、我が国は知的財産権の輸入国から創造国へと変貌を遂げつつあり、知的財産業務は量の追求から質の向上へとシフトしている。まず、新分野や新ビジネスモデルの急速な発展に伴い、人工知能、ビッグデータ、遺伝子技術などの新技術・新分野に焦点を当てた特許出願が増えている。統計データによると、イノベーターからの「特実併願」のニーズは年々減少している。次に、国家知識産権局の特許審査効率が継続的に向上しているにつれて、発明特許出願の審査期間は大幅に短縮され、同一審査制度下では国際的に最も速いレベルに達している。さらに、近年、国家知識産権局は特許審査体制の構築及び改善を継続的に進めており、出願人が「特実併願」以外のルートを通じて迅速に保護を受けることが可能となっている。

2008年に改訂された特許法第9条第1項の「特実併願」制度をより適切に運用し、公衆が特許出願に関する情報をタイムリーに把握できるようにするとともに、情報不足による権利侵害の訴えを未然に防止するために、2010年の細則改正時に、第41条(現行細則第47条)に第2項から第5項を追加し、「特実併願」制度の詳細な手続きとそれに伴う法的結果を規定した。特に、第2項と第4項では、それぞれ「特実併願」として出願したことを説明する義務と実用新案権を放棄することで発明特許権を取得する手続きについて厳格な規定を設けた。第2項では、「特実併願」について、国家知識産権局がタイムリーに公表できるように、出願人が出願時に「特実併願」として出願したという事実をそれぞれ説明しなければならないことを明確にした。これにより、公衆が登録実用新案を見たときに、「特実併願」として、発明特許権を受ける可能性がある発明特許出願も存在することを知ることができる。また、出願時に「特実併願」として出願したという事実を説明した場合、発明特許出願の審査官にも明確な提示を提供することができ、これにより、発明特許出願の実体審査中に、二重特許を回避するために、審査官は、出願人に既に取得した実用新案権を放棄するよう速やかに通知することができる。説明しなかった場合、たとえ「特実併願」における発明特許出願に拒絶理由が見つからなかったとしても、特許法第9条第1項に基づき、当該発明特許出願を拒絶査定する。さらに、第4項は、「特実併願」における発明特許出願に特許権を付与する前に、出願人に実用新案権を放棄するよう通知する手続きを規定しており、具体的には、「発明特許出願が実体審査を受けて拒絶理由が見つからなかった場合、出願人に所定期間内に実用新案権を放棄する旨の意思表示を提出するよう通知しなければならない。出願人が放棄に同意しない場合、当該発明特許出願を拒絶査定する。」と規定している。つまり、特許法及びその実施細則の規定に基づき、「特実併願」における発明特許出願が他の登録要件を満たしていると判断された場合であっても、発明特許権を取得するためには、出願人は、実用新案権を放棄する手続きを厳格に行わなければならない。

したがって、特許出願と審査業務における新たな情勢と特徴を踏まえ、特許法及びその実施細則の規定に基づき、当初の立法趣旨に立ち返り、特許審査指南における「特実併願」の取扱いについて調整を行う必要がある。「特実併願」制度は、二重特許禁止という原則の例外となるものであり、今回の改訂では、出願人が「特実併願」制度の利便性を享受しつつも、法的手続き上の義務を履行しなければならないことを強調している。改訂後の内容は、出願人が「特実併願」として出願したことを説明する義務を履行した場合と履行しなかった場合の取扱いをそれぞれ明確化しており、手続き上の要件を強調している。今回の改訂は、制度設立の本来の趣旨に立ち返り、特許法及びその実施細則の規定をより正確に反映し、特許権者と一般公衆との利益のバランスを取るものとなる。

(二)進歩性の判断基準の見直し

1. 改訂の目的

特許審査の質及び審査効率をさらに高め、質の高い審査を通じて高度なイノベーションと効率的な運用を促進し、特許審査の「双方向伝達」機能を効果的に発揮させるため、今回の改訂では、進歩性の判断基準を見直した。特許法における進歩性に関する法律規定の方針と本質的要件に基づき、進歩性の審査において留意すべき事項をさらに明確化したり提示したりすることで、出願人が出願書類を作成する際に、発明の本質内容の説明をより重視するよう導き、これにより、真の発明・創作がより良く、よりタイムリーに権利化できるようにし、イノベーションの活力をさらに喚起することができる。

2. 改訂の内容

今回の改訂は、特許審査指南第2部第4章の6.の「進歩性の審査において留意すべき事項」の6.4の内容を見直した。改訂内容は以下のとおりである。第一に、課題の解決に貢献していなくても請求項に記載された構成は、一般的に発明の進歩性に影響を与えないことを明確にし、上記の原則を例を挙げて説明した。第二に、6.4における発明全体の評価に関する記述の位置を調整した。

【改訂の解説】

進歩性の判断は、特許審査指南第2部第4章の3.に規定されている審査の原則及び基準に従って行われるべきであり、今回の改訂は、進歩性を判断する方法及び方針を変更するものではなく、進歩性を評価するにあたり、発明を正しく理解し、請求項の発明を全体的に考慮した上でその本質を捉えるべきことを強調するとともに、「相違点の数」や「請求項のクレーム範囲の広さ」を進歩性の有無と直接関連づけることを避け、登録となった請求項が発明の先行技術に対する真の貢献に相応することを確保することを目的とする。

なお、改訂内容における「課題」とは、一般的には、審査中に判断された発明が実質的に解決する課題を指す場合もあれば、明細書に記載されているような、発明が解決しようとし、かつ解決できる課題を指す場合もある。課題の解決に貢献していない構成を認定する際には、当業者の視点から、出願内容、先行技術、出願人の主張などを全体的に考慮して判断しなければならない。

(三)小括

今回の特許審査指南における発明実体審査の一般規定の改訂は、主に「特実併願」および進歩性に関する規定に関するものである。「特実併願」に関する規定の改訂は、特許法第9条第1項及び細則第47条における、「特実併願」として発明特許出願と登録実用新案が併存する場合の取扱いのルールを厳格に運用しているものであり、これにより、「特実併願」制度の立法趣旨に立ち返り、行政及び司法資源を節約し、特許権者と公衆との利益バランスをより良く図る。進歩性に関する規定の改訂については、審査において発明を正しく理解し、発明の本質を正確に捉える重要性を強調しながら、発明の進歩性を客観的かつ公正に判断し、登録となった請求項が発明の先行技術に対する真の貢献に相応することを確保する。また、公衆に向けて、「進歩性が発明・創作のレベルに対する法的要件であり、請求項に課題の解決に貢献していない構成がどれだけ含まれていたとしても、それらは発明に進歩性をもたらすものではない」ということを明示する。これにより、出願人が請求項を合理的に作成するよう導き、発明・創作がより良く保護されるよう促す。

. 不服審判請求及び無効審判請求の審理に関する規定の改訂

(一)改訂の目的

特許審査指南における不服審判請求及び無効審判請求の審理に関する部分の改訂は、審決の構成、無効審判手続きに関する審理の原則、無効審判請求人の資格、無効審判手続きにおける特許書類の訂正書の提出などに関するものである。今回の改訂では、審査実務の経験をまとめた上で、審査の質及び審査効率をさらに高めるために、従来の規定の内容をさらに詳しく説明したり最適化したりするとともに、イノベーターの要望に積極的に応え、高品質な発展を支援するために、関連法的規定の適用をさらに明確化した。

(二)改訂の内容

1. 審決の構成について

特許審査指南第4部第1章の6.2において、「審決は、以下の部分を含む」という記載を「審決は、通常、以下の内容を含む」に変更するとともに、「拒絶査定を取り消す旨の審決において、経緯部分の簡略化又は省略は可能である。」という記載を削除した。

【改訂の解説】

上記の改訂は、審決の構成に関するものであり、全体的な要件として、この6.2に記載の事項は、審決の決まった構成ではなく、通常の構成であり、個々の案件の状況に応じて最適化できることを明確にした。また、全体的な要件に相応するように、拒絶査定を取り消す旨の審決のみに関する経緯部分の簡略化や省略の規定を具体的な内容から削除した。審決の作成を最適化したり調整したりすることで、審決の内容の標準化を確保した上で、実質的な争いの解決にさらに注力し、審査の質及び審査効率を高めることができる。

2. 「一事不再理」の原則について

特許審査指南第4部第3章の2.1及び3.3において、「同一の理由及び証拠」という記載を「同一又は実質的に同一の理由及び証拠」に変更した。

【改訂の解説】

細則第70条第2項は、「一事不再理」の原則を規定しており、具体的には、「国務院特許行政部門が無効審判請求について審決をした後、同一の理由及び証拠に基づく無効審判請求がさらに行われた場合、国務院特許行政部門は不受理とする。」と規定している。また、特許審査指南第4部第3章の無効審判手続きに関する「審理の原則」及び「無効審判請求の範囲、理由及び証拠」の部分にも関連規定がある。したがって、同一の特許権に対して複数の無効審判請求が行われた場合、「一事不再理」の原則を適用することで、無効審判請求の審決間の矛盾を防止し、当該審決の既判力を維持するとともに、当事者の訴権を制限し、特許権者に不必要な抗弁の負担をかけるのを避け、行政資源の浪費を防ぐことができる。

上記規定における「同一の理由及び証拠」とは、「理由及び証拠が同一又は実質的に同一である」という意味として理解されるべきであり、この点は業界内の共通認識となっている。しかし、実務上、無効審判請求の理由及び証拠について合議体が審決を下した後、請求人が無効審判請求の理由及び証拠の形式について簡単な調整・変更を行っただけで、再度無効審判を請求するケースも依然として存在する。したがって、特許審査指南の改訂によりこの点を明確にする必要がある。今回の改訂により、請求人が無効審判を適法かつ合理的に請求するよう導くだけでなく、特許権者が不必要な訴訟によって煩わされることを防止することができ、審理の質と効率の全体的な向上には有利である。

以下、2つの事例を挙げて「実質的に同一の理由及び証拠」についてさらに説明する。1つの事例では、先の請求人は、請求項1の構成Bが複数の実現手段をカバーしているが、明細書にはこれらの実現手段のうち1つしか記載されていないため、請求項1が明細書によってサポートされていないと主張した。先の審決において、先の請求人の主張が成立しないと判断された。これを背景に、後の請求人は、請求項1の構成Bが機能的表現であり、その機能を明細書に記載されていない他の代替手段で達成できることは当業者には不明であるため、請求項1が明細書によってサポートされていないと再度主張した。先の請求人の主張した理由と後の請求人が主張した理由は、表現が異なっても、実質上同一である。もう1つの事例では、先の請求人は、請求項1が証拠1及び技術常識に対して進歩性を有しないと主張した。先の審決において、請求項1は証拠1に対して相違点を有し、進歩性を有すると判断された。後の請求人は、請求項1が証拠1に対して新規性を有しないと主張した。先の審決において「請求項1は証拠1に対して相違点を有する」と判断されたことは、実質的に「請求項1は証拠1に対して新規性を有する」ことを認めたことを意味する。したがって、後の請求人の主張した新規性に関する無効理由及び証拠は、先の審決において既に結論が出された、進歩性に関する無効理由および証拠と実質的に同一である。

3. 無効審判請求人の資格について

特許審査指南第4部第3章の3.2の「無効審判請求人の資格」欄に新たな記載を追加し、「無効審判請求人が真意でない場合は無効審判請求が受理されない」ことを明確にした。また、受理されない事由については、「原則を先に、詳細を後に」の順序で、上記追加事項を第(2)号として記載している。

【改訂の解説】

特許法第45条の規定によれば、無効審判請求人はいかなる機関又は組織又は個人であってもよいが、「その特許権の付与が本法の規定に合致しないと認める」という真の意思表示を有しなければならない、言い換えれば、無効審判請求人が真の意思表示を有することこそが、特許法第45条の趣旨である。実務上、他人の名義で無効審判請求を行うケースがある。このような場合、この無効審判請求は請求人の真の意思表示に基づくものではなく、請求書や委任状などの関連資料の偽造を伴う場合が多い。このような行為は信義誠実の原則に違反し、無効審判制度の信頼性と市場競争秩序を損なうものである。

4. 無効審判手続きにおける訂正書の提出について

特許審査指南第4部第3章の4.6の「無効審判手続きにおける特許書類の訂正」の部分に「4.6.4 訂正書の提出」という新たな節を追加し、訂正書の提出形態に関する規定と、複数の訂正書が提出された場合における審査の対象となる書面を決定するルールを明確化した。

【改訂の解説】

無効審判手続きにおいて、特許権者は登録クレームを訂正することができる。しかし、特許審査指南には、この段階における訂正書の提出形態や決定ルールについて具体的な規定がないため、特許権者が訂正書の提出時に請求項の訂正内容を明確に説明しなかった場合、その権利の実現に影響を及ぼす可能性がある。また、審査実務においては、特許権者が訂正期間内に複数の訂正書を提出するケースもあり、その結果、当事者双方が審査の対象となる書面を明確に把握することができない場合がある。これは、無効審判請求人の法的対応に支障をきたすだけでなく、審理の効率にも影響を与える。したがって、特許審査指南において、上記の2点を明確化する必要がある。

訂正書の提出形態については、特許審査指南第2部第8章の5.2.4.1の実体審査手続きにおいて出願書類を補正する時の「差し替え用紙の提出」に関する規定を参照し、以下のことを明確にした。特許権者は無効審判手続きにおいて「全文の訂正差し替え用紙及び修正履歴付き用紙の提出」という方法により請求項の訂正手法及び内容を明確に説明すべきである。特に、修正履歴付き用紙は、特許権者が各請求項の訂正内容を整理し、特許権者の当初の意図と一致しない訂正を回避することに役立つ。

複数の訂正書が提出された場合の審査の対象となる書面を決定するルールについて、特許審査指南の改訂において、特許権者が同一の無効審判請求の審理手続きにおいて提出した複数の訂正書がすべて4.6.3の「訂正手法の制限」の規定に適合している場合、特許権者が最後に提出した訂正書を審査の対象書面とし、その他の訂正書は放棄されたものとみなすことを明確にした。この改訂により、当事者双方が審査の対象となる書面を明確に把握することができるとともに、案件審理の効率を効果的に高めることができる。

(三)小括

今回の特許審査指南における不服審判請求及び無効審判請求の審理に関する部分の改訂は、審査の質及び審査効率の向上、および法的規定の適用の明確化という2つの主要目標に密接に沿っているものであり、これらの訂正により、今後の審査業務により明確な運用ガイダンスを提供するとともに、イノベーターにより良いサービスを提供することができる。

.方式審査及び事務処理等の関連規定の改訂

(一)改訂の目的

イノベーション主体のイノベーション成果をさらに保護し、出願人の利便性向上を図るため、「審査指南」第1部第1章「発明特許出願の方式審査」、第3部第1章「国内段階に移行した国際出願の方式審査及び事務処理」、および第5部分「特許出願及び実務処理」について調整・整備を行った。

(二)改訂の内容

1.発明特許出願の方式審査に関する規定

(1)願書の発明者の身元情報及び代理人の義務について

審査指南第1部第1章第4.1.2節「発明者」において、まず、「虚偽の発明者を記載してはならない」、また、審査官は「一般的に」、願書に記載された発明者が当該規定を満たしているか否かを審査しないが、「ただし、願書に記載された発明者がかかる規定を満たさない証拠がある場合を除く」、さらに、発明者が個人「(即ち自然人)」でなければならない、「願書に全ての発明者の身元情報を記載し、その情報が真実であることを確保しなければならない」旨改訂された。

審査指南第1部第1章第4.1.6節「特許代理機関、特許代理人」において、「特許代理機関は、特許出願人が提出した願書における出願人の身元情報及び連絡先を確認しなければならない」、および「特許代理機関又は特許代理人が自身の名義で特許出願をするか、又は特許権の無効審判を請求する場合は、特許代理条例に基づいて扱う」と明確化された。

【改訂の解説】

今回の改訂は、発明者およびその情報の真実性に関する要件を強化するとともに、特許代理機関の身元情報および連絡先の確認義務を強化している。また、関連法規と効果的に整合させ、特許代理機関および弁理士の業務行為を適正化している。

(2)分割出願の優先権主張について

審査指南第1部第1章第6.2.1.2、6.2.2.2節「優先権主張の声明」には、「分割出願の原出願が優先権を主張しているにもかかわらず、出願人が分割出願の際に願書に当該優先権主張を記載していない場合、分割出願は当該優先権を主張していないものとみなされ、審査官は優先権の主張をしていないとみなされる旨の通知書を発行しなければならない。」と改訂された。

【改訂の解説】

改訂後の審査指南では、原出願が優先権を主張しているにもかかわらず、分割出願の願書に優先権主張を記載していない場合、審査官は優先権の主張をしていないとみなされる旨の通知書を発行すべきであることが明確化された。この改訂により、出願人は審査指南第1部第1章6.2.6.1節に基づき、分割出願の優先権の回復をタイムリーに請求できるようになり、出願人が法に基づいて権利を回復するタイミングが明らかになった。

2.国内段階に移行した国際出願の審査に関する規定について

(1)優先権譲渡証明書の署名・捺印について

審査指南第3部第1章第5.2.3.2節「優先権証明書」において、「譲渡人」から「先願のすべての出願人」へ改訂された。

【改訂の解説】

優先権主張を審査する際には、後願と先願の出願人が同じであるか否かを判断する必要がある。出願人が異なり、後願の出願人が譲渡により優先権を享受する場合、先願の出願人全員が署名または捺印した優先権譲渡証明書類を提出する必要がある。

今回の審査指南改訂による「譲渡人」から「先願のすべての出願人」への変更はより一層、法律法規に合致し、第1部第1章第6.2.1.4節、第6.2.2.4節、および第3部第1章第5.2.6節の関連規定と一致している。

(2)配列表の割増料金の算定ルールについて

審査指南第3部第1章第7.3節「その他特殊な費用」における400頁を超える配列表の手数料算定に関する規定が削除された。また、審査指南第5部第2章第1節「手数料の納付期限」に、「所定の様式に従って提出されたコンピュータ読み取り可能な配列表については、頁数は算定しないものとする」と追加された。

【改訂の解説】

今回の審査指南の改訂では、配列表に関する費用の算定ルールについて、「所定の様式に従って提出されたコンピュータ読み取り可能な配列表については、頁数は算定しないものとする」と改訂された。また、国内段階に移行した国際出願の400頁を超える配列表の手数料算定に関する規定も削除された。これにより、国内出願における配列表の手数料の算定ルールと、国内段階に移行した国際出願の算定ルールとを一致させ、配列表の手数料算定に関する国際慣行との整合性を図れる。

なお、紙で行われる国内出願の場合は依然として、紙の配列表の頁数に基づいて割増料金が算定される。

3.特許出願及び事務処理に関する規定について

(1)費用返還について

審査指南第5部第2章第4.2.1.2節「特許庁が自発的に費用を返還する場合」の内容は全部、第4.2.1.1節「当事者が返還を請求できる場合」に組み込まれ、「特許庁が自発的に費用を返還する場合」は削除された。また、分割出願における返還を請求できる場合が追加された。

【改訂の解説】

特許庁が自発的に費用を返還する場合、出願人が提出した情報が足りないか変更されたなどの問題により、費用が返還できないケースが多くある。返還の正確性と適時性を確保するため、今回の改訂では、特許庁が自発的に費用を返還する場合の規定が全部、「出願人が返還を請求できる場合」に組み込まれ、自発的な返還に関する規定が調整された。

さらに、審査実務との整合性を確保するため、実体審査段階に入っていない分割出願については、当該分割出願が未提出とみなされた場合、すでに納付された実体審査手数料も、当事者が返還を請求できる対象に含まれる。

(2)審査の順序について

まず、審査指南第5部第7章第8.1節「一般原則」において、「出願人の請求に基づき、特許出願の優先審査、快速審査、又は遅延審査を含め、必要に応じる審査を行うことができる。」と追加された。

また、審査指南第5部第7章第8節において、「8.3 快速審査」、「国家知識産権保護センター又は迅速権利保護センターの予備審査に合格した特許出願については、快速審査に関する規定に適合する場合、快速審査を受けることができる」と新設された。

【改訂の解説】

近年、国家知識産権局(SIPO)は、オンデマンド審査チャネルを継続的に拡充し、優先審査、特許審査ハイウェイ(PPH)、快速審査といった迅速審査ルートを最適化し、必要に応じて集中審査や遅延審査といった審査政策を導入してきた。そのため、審査指南には関連内容が追加され、出願人の「必要に応じる遅速緩急」を可能とするオンデマンド審査方針がさらに反映されている。

さらに、SIPOは、保護センターや迅速権利保護センターの設立を積極的に進めており、関連業界の地方関連主体に予備審査などの公共サービスと専門サービスを提供することで、イノベーションの質の向上と産業発展の促進を目指している。そのため、審査指南には快速審査に関する内容が追加され、制度枠組みがさらに整備された。

(3)特許公報における一部の項目名称について

まず、審査指南第5部第8章第1.3.2.6節「特許権存続期間の補償」において、「特許権存続期間終了日」が「特許権存続期間満了日」に改訂された。また、審査指南第5部第8章第1.3.2.7節「特許実施許諾契約登録の発効、変更および抹消」において、「譲渡人」から「許諾者」に、「譲受人」から「被許諾者」に改訂された。

【改訂の解説】

改訂後の「特許権存続期間満了日」の文言は、審査指南の他の章の文言と一致している。また、改訂後の「許諾者」および「被許諾者」の文言は、民法典等の法令の文言と一致している。

(4)特許証書の構成

審査指南第5部第9章第1.2.1節「特許証書の構成」において、「国際出願または分割出願について、特許証書に記載されている特許出願日時点の発明者または設計者の氏名、出願人の氏名または名称とは、国際出願が中国国内段階に移行した時点あるいは分割出願が提出された時点の発明者または設計者の氏名、出願人の氏名または名称をいう。」という規定が追加された。

【改訂の解説】

中国国内段階に移行した国際出願及び分割出願の場合、出願日時点の書誌情報とは、実際には国際出願が中国国内段階に移行した時点及び分割出願が提出された時点の情報を指す。この点について、審査指南では、関連説明が追加された。

(5)特許権存続期間の補償について

審査指南第5部第9章第2.2.1節には、「不服審判請求人が陳述した新たな理由又は提出した新たな証拠に基づいて拒絶査定を取消す不服審判手続き」による遅延は、特許法実施細則第78条第3項第(3)号に規定する合理的な遅延に該当する、と明記されている。

【改訂の解説】

特許法実施細則第66条に基づき特許出願書類を補正する不服審判手続による遅延は、特許の権利付与の過程における合理的な遅延に該当する。ただし、不服審判手続きにおいて、出願人は出願書類の補正に加え、「意見の陳述」や「証拠の提出」によって拒絶査定に指摘された不備を解消する可能性がある。出願人が実体審査手続きにおいてこれらの意見や証拠を提出せず、不服審判手続きにおいて初めて提出し、かつ、拒絶査定を取り消す審決がこれらの意見や証拠に基づいてなされた場合、当該遅延は特許の権利付与の過程における合理的な遅延に該当し、特許権存続期間の補償は与えられない。

(三)小括

今回の審査指南の改訂は、方式審査および事務処理に関する関連規定をさらに洗練・明確化し、出願人の利便性向上を図るとともに、方式審査プロセスの質と効率を向上させる。

上述のように、習近平主席の新時代の中国の特色ある社会主義思想に基づく今回の審査指南の改訂は、人工知能、ビットストリーム、生物育種といった新興分野や新たなビジネスモデルに対する保護制度を整備し、産業イノベーションをさらに促進する。また、審査実務における喫緊の課題に対処するために審査基準と審査規定を最適化し、特許審査の質を向上させる。さらに、成熟した審査慣行を定着させ、イノベーション主体へのより良いサービスを提供する。これにより、知的財産権の法的保護が強化され、社会全体のイノベーションが促進される。
 
発表日:2025年12月4日
ソース:中国特許庁


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