北京林達劉知識産権代理事務所
1.今回の特許法改正における新規性の改正について
第三次改正特許法は2008年12月17日に採択されました。そのうち、第22条の新規性の定義は大きく改正されています。具体的には、以下のとおりです。
改正前:新規性とは、出願日以前に同一の発明又は実用新案が国内外の出版物に公に発表されておらず、国内において公に実施又はその他の方法で公衆に知られておらず、同一の発明又は実用新案について、他人により出願日以前に国務院特許行政部門に出願されかつ出願日後に公開された特許出願書類に記載されていないことをいう。
改正後:新規性とは、その発明又は実用新案が従来の技術に該当せず、同一の発明又は実用新案について、いかなる機関又は組織又は個人により出願日以前に国務院特許行政部門に出願されかつ出願日後に公開された特許出願書類又は公告された特許書類に記載されていないことをいう。
本法にいう従来の技術とは、出願日以前に国内外で公衆に知られている技術をいう。
改正前後の新規性の定義を比較してみると、現行法では「相対的新規性」の基準が採用されている(すなわち、公然発表されなかった技術が、外国で公然実施されているか又は関連製品が販売されているにもかかわらず、中国国内で公然実施又は関連製品の販売がされていなければ、新規性の要件を満たす)のに対して、改正法では「絶対的新規性」の基準が採用されています(すなわち、国内外でも公然知られていない場合にのみ、新規性の要件を満たす)。つまり、登録基準が高くなっています。このように、改正法では、出願人にとって、登録がある程度難しくなっており、外国で公然実施した発明創造は特許法第22条に規定する新規性の要件を満たさなくなります。
出願人が発明創造を特許出願する前に、それを公然出展することはよくあります。現行法によれば、外国において出展した場合、その後の中国出願の新規性に影響を及ぼしません。しかし、改正法の実施後、外国において出展した場合であっても、その後の中国出願の新規性に影響を及ぼします。そのため、現在、中国特許法の新規性喪失の例外規定、すなわち、特許出願する前に発明創造を公開しても新規性を喪失しない場合に関する規定が広く関心を集めています。この例外規定の適用を受けることにより、発明創造が出願日前に公開された場合でも、中国で順調に特許を受けることができます。
それでは、この中国特許法の新規性喪失の例外規定について、弊所の把握した情報に基づき、以下に紹介させていただきます。
2.新規性喪失の例外に関する規定について
△条文
中国特許法第24条には、新規性喪失の例外について規定されています。具体的には、
「特許出願した発明創造が出願日前の6ヶ月以内に、次の各号の一つに該当するときは、その新規性を喪失しないものとする。
(1)中国政府が主催又は承認した国際展覧会において初めて出展したもの。
(2)指定された学術会議又は技術会議で初めて発表したもの。
(3)他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らしたもの。」
この規定は、今回改正されていません。
△新規性喪失の例外の適用
(1)「中国政府が主催又は承認した国際展覧会において初めて出展した」について
①「中国政府が主催した国際展覧会」とは
「中国政府が主催した国際展覧会」とは、中国国務院、各部・委員会が主催した国際展覧会、又は国務院の許可を得てその他の機関もしくは地方政府が主催した国際展覧会をいいます。
その証明として、展覧会の主催者が発行する証明資料を中国特許庁に提出すべきです。証明資料には、展覧会の開催日、場所、展覧会の名称及びその発明創造の出展日、出展形態及び内容が明記されていなければならず、公印の押印も必要です。
調べによると、現在、中国国務院は、外交部、国防部、国家発展・改革委員会、教育部、科学技術部、国家民族事務委員会、公安部、国家安全部、監察部、民政部、司法部、財政部、人力資源・社会保障部、鉄道部、交通運輸部、国土資源部、建設部、工業・情報化部、水利部、文化部、环境保護部、衛生部、農業部、商務部、国家人口・計画生育委員会、中国人民銀行、監査署等の部門により構成されています。これらの部門が主催した国際展覧会は、「中国政府が主催した国際展覧会」に該当します。
②「中国政府が承認した国際展覧会」とは
「中国政府が承認した国際展覧会」とは、中国国務院およびその各部・委員会が承認した外国で開催された国際展覧会をいいます。
ある展覧会が、中国国務院およびその各部・委員会が承認した国際展覧会であるか否かをどのように判断するかについて、現在のところ参酌できる具体的な資料や事例がないので、明確な結論は出せませんが、弊所が知っている中国特許庁の審査方法によれば、まず主催国が博覧会国際事務局のメンバーでなければならず、次にその展覧会の詳細な資料(例えば、主催者、開催日、場所、展覧会の名称等)を国務院の関連部門に提出して審査を請求する必要があります(例えば、通信分野の製品の場合は工業・情報化部に提出する)。そして、審査に合格した場合に、それが中国国務院およびその各部・委員会が承認した国際展覧会であると確認されます。
中国特許庁に提出する証明資料は、上記①の証明資料と同じ要件を満たすほか、さらに国務院の関連部門の公印が押印されていなければなりません。
③「初めて出品した」とは
「初めて出品した」とは、その文字どおりの意味で、最初の出品をいいます。つまり、数回出品した場合、2回目以降の出品は、新規性喪失の例外の適用を受けることができません。
(2)「指定された学術会議又は技術会議で初めて発表した」について
①「学術会議又は技術会議」とは
「学術会議又は技術会議」とは、国務院の関係主管部門又は全国的な学術団体が主催した学術会議又は技術会議をいい、省以下の学術会議又は技術会議と、国務院各部・委員会もしくは全国的な学術団体の委託を受けて又はその名義で主催した学術会議又は技術会議は含みません。
証明資料は、会議を主催する国務院の関係主管部門又は全国的な学術団体が発行するものです。証明資料には、会議の開催日、場所、会議の名称及びその発明創造の発表日、発表形態及び内容が明記されていなければならず、公印の押印も必要です。
調べによると、国務院の主管部門や全国的な学術団体は非常に数多くありますので、ここでは一々挙げません。
②「初めて発表した」とは
「初めて発表した」とは、その文字どおりの意味で、最初の発表をいいます。つまり、数回発表した場合、2回目以降の発表は、新規性喪失の例外の適用を受けることができません。「発表」とは、口頭による発表と書面による発表を含みます。
(3)「他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らした」について
「他人が出願人の同意を得ずにその内容を漏らした」とは、他人が明示又は黙示された秘密保持の約定に違反して発明創造の内容を公開したか、又は他人が脅威、詐欺、スパイ活動などの手段により発明者又は出願人から発明創造の内容を知った後にそれを公開したことをいいます。
いずれにせよ、この(3)に該当するかどうかを判断する際には、次の3つの要件に注意する必要があります。すなわち、
①公開された内容が直接的又は間接的に出願人から得られたものでなければならない。
②その内容を漏らした者が出願人本人であってはならないが、発明者(実用新案の場合は考案者、意匠の場合は創作者)であってもよい。
③発明創造の内容を漏らすことが出願人の明示又は黙示した意思に反していることを裏付ける証拠や理由がなければならない。
中国特許庁に提出する証明資料には、漏らした日、漏らした手段、漏らした内容を明記すべきであり、証明者の署名又は捺印が必要です。
△費用
新規性喪失の例外の適用を主張する場合、上記(1)~(3)のいずれであっても、官庁手数料を支払う必要はありません。
△法的効力
新規性喪失の例外の法的効力は、優先権と比較して異なっています。
新規性喪失の例外は、上述した3つのいずれかに該当する場合に、出願可能期間の猶予を与えるものであり、「自己に対抗する」効力しか有さず、「他人に対抗する」効力を有しません。すなわち、新規性喪失の例外は、発明創造が不可避的又は無意識に公開された場合の救済手段にすぎず、その出願の出願日を発明創造の出展日、発表日、他人が漏らした日に繰り上げることはできません。また、新規性喪失の例外の適用に関する上述の説明のとおり、その適用条件は非常に厳しいです。したがって、新規性喪失の例外規定を適用することについては慎重に考え、出願前の発明創造の出展や発表をできるだけ回避し、また、その漏洩を防止すべきです。
(2009)