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中国「商標法」第41条1項に対する理解と適用について


北京林達劉知識産権代理事務所
商標部 商標弁理士 肖 暉
 
中国「商標法」第41条は、登録商標の取消審判の基本的な法的根拠である。本文において紹介する判例は、常州誠聨電源製造有限公司と、国家工商行政管理総局商標審判委員会、常州市創聨電源有限公司との、商標行政紛争再審請求に係る事件である。この事件の分析を通して、中国「商標法」第41条1項に対する理解と適用について、皆様と検討していきたい。
 
 事件の紹介(商標権の取消審判請求事件)

1、基本情報
 
事件番号
 
商評字(2005)第2709号「第1981494号商標『誠聨及び図』に関わる係争裁定書」についての行政訴訟事件

一審事件番号:(2005)一中行初字第1088号                  
二審事件番号:(2006)高行終字第283号
再審請求却下通知書番号:(2006)行監字第118-1号
 
当事者
 
再審請求人(一審原告、二審被上訴人):常州誠聨電源製造有限公司(以下「誠聨公司」という)
再審被請求人(一審被告、原審被告):国家工商行政管理総局商標審判委員会(以下「商標審判委員会」という)
再審被請求人(一審第三者、二審上訴人):常州創聨電源有限公司(以下「創聨公司」という)

2、事件の経緯

誠聨公司は、2001年9月29日に国家工商行政管理総局商標局に第9類「電気スイッチ」を指定商品として商標「誠聨及び図」(以下係争商標という)を出願し、2003年2月14日に登録された。その登録番号は1981494で、存続期間は2003年2月14日から2013年2月13日までである。

創聨公司は、2004年3月3日に係争商標に対して取消審判を請求した。その取消審判請求に対して、2005年9月8日、商標審判委員会は、商評字(2005)第2709号「第1981494号商標『誠聨及び図』に関わる係争裁定書」(以下「第2709号裁定書」という)を下し、係争商標の登録は「商標法」第41条1項に定めた「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当すると認定し、係争商標の登録を取り消すと決定した。

誠聨公司は、第2709号裁定書を不服とし、2005年10月26日に北京市第一中等裁判所(以下「一審裁判所」という)に行政訴訟を提起した。一審裁判所は、2006年4月20日に(2005)一中行初字第1088号行政判決書(以下「一審判決」という)を下し、創聨公司が商標審判の段階で提出した関連証拠は係争商標の図形標章を先に使用したことを証明できないと判断し、商標審判委員会の第41条1項に基づく係争商標の登録を取り消す決定は事実根拠を欠如しているとして、第2709号裁定書を取り消した。

創聨公司は、一審判決を不服とし、2006年6月4日に北京高等裁判所(以下「二審裁判所」という)に上訴した。二審裁判所は、2006年8月11日に(2006)高行字第283号行政判決書(以下「二審判決書」という)を下し、創聨公司が新たに提出した常州市天寧区裁判所民事訴訟一審の関連書類を、商標審判の段階で提出した証拠の補強証拠として認め、創聨公司が2000年10月より前に係争商標の図形標章を使用したことを証明できると認定し、係争商標の登録は「商標法」第41条1項にいう「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当すると認定し、上訴人創聨公司の請求を支持し、一審判決を取り消し、第2709号裁定書を維持した。

誠聨公司は、二審判決を不服とし、2008年9月24日に中華人民共和国最高裁判所(以下「再審裁判所」という)に再審を請求した。再審裁判所は、2008年9月24日に(2006)行監字第118-1号再審請求却下通知書を下し、第2709号裁定書及び二審判決は、法律の適用に不適切なところがあるが、判決結果は正確であるので、審判監督プロセスを経て是正する必要がないとし、誠聨公司の再審請求を却下した。

これまで5年間にも亘る商標権の取消審判請求事件はようやく決着がつき、ピリオドを打った。本事件における行政と司法の「商標法」第41条1項に対する異なる理解と適用は、われわれに議論と思考の課題を与えた。

事件経緯の説明図:



3、本件の係争争点

(1)創聨公司は係争商標の図形及び文字標章を先に使用していたか否か

(2)係争商標の登録は「商標法」第41条1項にいう「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当するか否か
 
 上記二つの争点に対する行政と司法の異なる認定結果

1、商標審判委員会の判断

(1)創聨公司が初めて前振印刷工場に商標と宣伝資料の印刷を依頼したのは、2000年4月であり、係争商標の出願日(2001年9月29日)より早い。関連領収書には「創聨及び図」の文字が明記されていないものの、創聨公司の商標使用状況及び創聨公司の製品を購入したクライアントが発行した証明書は、創聨公司が設立されてから、係争商標の図形部分と同一の図形部分を含めた商標をその商品に使用したことを証明できる。一方、当時、誠聨公司はまだ設立されていなかった。したがって、係争商標の図形標章は創聨公司が先に使用していた図形標章と認定できる。

(2)臧其準と呉梅芳(臧其準の妻、元は創聨公司の株主である)は創聨公司の重役を務めていた。臧其準は創聨公司のマーケティング部の部長を担当していた。そうとすると、誠聨公司は創聨公司がその製品に使用した標章を知っていたはずである。誠聨公司は創聨公司の商標を知った上で、創聨公司が先に使用していた図形商標を含めた係争商標を登録出願し、同社の使用中の商標「創聨及び図」をも登録出願した。したがって、係争商標の登録は「商標法」第41条1項にいう「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当し、その登録は取り消されるべきである。

2、一審裁判所の判断

(1)創聨公司が提出した係争商標の出願日前の使用証拠には、先に使用した商標の様態を明記する証拠はない。したがって、これらの証拠から先に使用した商標の様態を判明できない。創聨公司が提出した製品宣伝資料には、係争商標の図形標章が掲載されているが、印刷日付と発行日付がないので、当該図形標章を使用し始めた日を確認できない。その他の証拠の作成日付は係争商標の出願日より遅く、かつその内容はすべて以前に発生した事実の思い出であり、その性質は証人証言に該当する。その上、当該証拠には関連会社の法人代表者の署名も証人の署名もなく、かつ、法廷に出頭して証言した証人もいなかった。その他の証左がない状況で、法により当該証拠を採用できない。

したがって、創聨公司が商標取消審判請求段階で提出した上記証拠は、係争商標の出願日前に係争商標の図形標章を使用したことを証明できない。

(2)創聯公司が商標審判請求段階に提出した証拠資料は、係争商標の出願日前に係争商標の図形標章を使用したことを証明できない。そうとすると、商標審判委員会が(2005)第2709号裁定書において、誠聯公司がその他の不正な手段で登録を得たと認定した理由、即ち、誠聯公司が創聯公司の商標を知った上で、創聯公司が先に使用していた図形標章を含めた係争商標を登録出願し、かつ、創聯公司が使用している商標「創聯及び図」をも登録出願したという理由は、成立しない。したがって、商標審判委員会が「商標法」第411項の規定により下した、係争商標の登録を取り消す決定は事実根拠を欠如している。

3、二審裁判所の判断

(1)創聯公司が二審裁判所に提出した証拠1(常州市天寧区裁判所民事訴訟書類)は、既に商標審判請求段階において商標審判委員会に提出されたものである。創聯公司は、別件訴訟において裁判所に提出した証拠の日付をもって、関連商標及び標章を使用し始めた日を立証した。したがって、当該証拠は創聯公司が先に提出した証拠の補強証拠として、採用されるべきである。

創聯公司の製品パンフレットの表紙に係争商標「創聯及び図」を掲載しており、「お問合せ先」のところに「臧様」(即ち、臧其準)の携帯電話の番号が記載してある。当該パンフレットには印刷日付と発行日付は明記されていない。しかし、江蘇省常州市天寧区裁判所が受理した競業禁止紛争の案件において、常州市思達電源有限公司は天寧区裁判所に当該パンフレットを提出した。当該案件の開廷審理期日は200010月であった。したがって、この事実に基づき、創聯公司が200010月より以前に同社の電源製品の販売・宣伝活動において、係争商標の標章を使用したと認定すべきである。一方、誠聯公司が工商行政管理機関の許可を経て登録されたのは、2001年9月であった。したがって、創聯公司が先に係争商標を使用した後に、誠聯公司は係争商標を登録出願した。商標審判委員会が下した(2005)第2709号裁定書において、創聯公司が係争商標を先に使用したことについての証拠はそれほど十分ではないものの、認定の結論は正確である。

(2)誠聯公司の呉梅芳、臧其準は創聯公司に勤めていたことがある。臧其準は創聯公司のマーケティング部の部長を担当していた。前記の係争商標を掲載したパンフレットには臧其準の携帯電話番号が記載してある。その上、誠聯公司は創聯公司の商標標章を知った上、創聯公司が先に使用した係争商標だけではなく、同社の使用している商標「創聯及び図」をも登録出願した。したがって、係争商標の登録は「商標法」第411項にいう「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当する。商標審判委員会が法により下した係争商標の登録を取り消す決定は正確である。

4、再審請求に対する最高裁判所の判断

(1)創聯公司が二審段階で提出した新たな証拠は、商標審判段階で提出した証拠一が遅くとも20008月までに印刷され、かつ、使用されていたことを、さらに証明するための補強証拠に属するが、二審裁判所が当該証拠を採用したことに問題はない。商標審判委員会と二審裁判所の創聯公司の先使用に関する認定は正確である。

(2)「商標法」第41条1項において、「この法律第10条、第11条、第12条の規定に違反する場合」と、「欺瞞的な手段又はその他の不正な手段で登録を得た場合」とが並列している。これらは、商標登録取消の絶対的な事由に該当する。それらの行為は公共秩序又は公的利益を害し、若しくは商標登録出願の管理秩序を妨害する。そのため、同項の規定に従い、商標局は職権に基づき、直接商標の登録を取り消すことができるし、その他の事業単位又は個人は商標審判委員会にそれについて登録取消審判を請求できる。しかも、期間の制限はない。一方、第41条2項の規定は、商標の登録が特定の権利者の民事権利を害した相対的な取消し事由である。権利者の意志を尊重し、かつ、権利者にタイムリーな権利保護を督促するために、請求しないと取り合わない原則を採用し、かつ、5年間の期間制限を規定している。(悪意により、他人の著名商標を冒認登録した場合は当該期間制限を受けない。)かつ、取消審判の請求権を有する主体は、商標権者と利害関係人だけに限定されている。したがって、特定の権利者の民事権利を害した相対的な取消し事由に該当する場合、その登録取消しについては、「商標法」第41条2項、3項の規定を適用すべきである。誠聯公司の、「商標法」第411項が係争商標の登録を取り消す法的根拠にならないという理由は成立する。本件は、他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で登録したものに該当するから、「商標法」第31条と第412項を適用すべきである。商標審判委員会の決定と一審裁判所、二審裁判所の判決は、法律の適用が妥当でない。

(3)創聯公司が本件係争商標の登録取消し請求の法的根拠には、第31条が含まれている。同社は先に使用した証拠と、その商標が一定の影響力を有する証拠を提出した。臧其準は創聯公司の投資者の一人として、及び高級管理者として、創聯公司が係争商標の図形標章を使用していたことを知った上で、同一の業務を取り扱う会社を設立し、かつ、同一種類の商品において創聯公司が使用している商標及び商標図形を先取りして出願したものである。誠聯公司が設立され、かつ、創聯公司が先に使用した商標を先取りして出願したとき、臧其準はまだ創聯公司の高級管理者として務めていた。したがって、誠聯公司は明らかに不正な手段で係争商標を登録したといえる。本件の実情に鑑み、創聯公司の先に使用した商標は一定の影響力を有すると認定し、「商標法」第31条と第412項を適用し、係争商標の登録を取り消すべきである。
 
 本件に対する分析

上記のそれぞれ異なる判断を踏まえて、本件は主に以下の2つのみどころがあると思う。

1、先に使用した事実を証明できる完全な証拠チェーンを形成したことが、本件において創聯公司が最終的に勝訴したキーポイントである。



上表に示したとおり、創聨公司は、係争商標を先に使用したことを立証するために、取消し審判の段階で数多くの関連証拠を提出した。そのうち、製品パンフレットはとても重要な証拠の一つである。当該パンフレットには係争商標の図形標章が掲載されているものの、印刷日付と発行日付がないため、客観的に当該図形を使用し始めた日を証明できない。一方、創聨公司が提出した成電公司の証言、前振印刷廠が発行した商標印刷証明書、及び愛立徳公司、常州市電子研究所、成電公司、天馬輝公司、太極先行公司が2004年に発行した証明書などの証拠は、証人証言に属し、その他の証左がない。したがって、一審裁判所では、それらは有力な証拠として認められず、一審裁判所の支持を得られなかった。

二審において、創聨公司は、常州市天寧区裁判所の民事訴訟書類を提出した。2000年10月に江蘇省常州市天寧区裁判所が受理した競業禁止紛争の案件において、常州市思達電源有限公司が天寧区裁判所に提出したパンフレットをもって、創聨公司が係争商標を使用し始めた日を証明することができた。二審裁判所はこの証拠に基づき、創聨公司が2000年10月より以前にその電源製品を販売、宣伝したとき、係争商標の標章を使用したと認定し、係争商標に対する先使用を認めた。

なお、二審裁判所は次のとおり表明した。一審判決において、創聨公司が商標審判段階で提出した関連証拠は、係争商標の標章を先に使用したことを証明できないので、商標審判委員会の「商標法」第41条1項による係争商標の登録取消し決定は、事実根拠が欠如していると認定したのは妥当である。しかし、二審で、創聨公司が係争商標の図形と文字標章に対する先使用を証明できる証拠を提出したことにより、案件の事実認定について、根本的な変化を生じたとして、一審判決を変更した。ここから見れば、二審において創聨公司が新たに提出した補強証拠は、関連証拠からなる完全な証拠チェーンを形成し、創聨公司が最終的に勝訴できた肝心なポイントだと思う。したがって、今後、このような案件において、どのように完全な証拠チェーンを形成するかは、当事者が慎重に検討しなければならない課題である。

2、「商標法」第411項に対する理解と適用

本件において、誠聨公司の総経理臧其準は創聨公司のマーケティング部の部長を担当していた。前記の係争商標を掲載した製品パンフレットにも臧其準の電話番号が記載されている。したがって、誠聨公司は、明らかに創聨公司がその商品において使用した図形標章を知っていたはずである。誠聨公司は、創聨公司の商標を知った上で、創聨公司が先に使用した図形標章を含めた係争商標だけでなく、創聨公司が使用している商標「創聨及び図」をも登録出願した。すなわち、係争商標の登録には明らかに不正性がある。したがって、商標審判委員会と二審裁判所はともに、係争商標の登録が「商標法」第41条1項にいう「その他の不正な手段で登録を得た場合」に該当すると判断し、本件が第41条1項を適用し、係争商標の登録を取り消すと決定し、判決を言渡した。

しかし、(2006)行監字第118-1号再審請求却下通知書における最高裁判所の「商標法」第41条1項に対する理解は、商標審判委員会と二審裁判所とまったく異なっている。最高裁判所は、本件において、「商標法」第31条と第41条2項を適用して、係争商標の登録を取り消すものとし、誠聨公司の再審請求を却下した。また、最高裁判所は、以下のことを明確に表明した。「商標法」第411項は商標の登録を取り消す絶対的な事由に関連している。特定の権利者の民事権利を害した相対的な取消し事由に該当する場合、その登録取消しについては、「商標法」第412項、3項を適用すべきである。

本件において、最高裁判所は、「商標法」第41条1項は商標の登録を取り消す絶対的な事由に関連していると認めているが、筆者は商標審判委員会と二審裁判所の観点に賛成する。実務において、現行「商標法」第13条、第15条、第31条を適用し不正な登録行為を阻止できないケースは少なくない。もし、このような案件がすべて第41条1項を適用できないならば、商標法の立法趣旨にも合致しないし、明らかな悪意による不正競争行為の阻止にも不利である。したがって、商標法の改正案が可決されるまで、事情を斟酌し、不正な手段で他人の商標を先取りして出願登録した相対的な事由に対して、第41条1項の規定を適用すべきだと思う。
 
 現行「商標法」第411項の由来及び改善提案

12001年の現行「商標法」第411項の由来
 
1982年
「商標法」第27条
登録商標について異議があるとき、当該商標の登録日から一年以内に、商標審判委員会に取消審判を請求できる。商標審判委員会は審判請求を受理してから、関連当事者に通知し、定めた期間で答弁するように通知する。
1988年
「商標法実施条例」第25条
不正な手段で登録を得た商標(取消審判で裁定された商標を除く)について、何人も「不正登録商標に対する登録取消審判請求書」一部を商標審判委員会に提出し、取消審判を請求できる。
商標審判委員会が登録を取り消すと裁定した場合、商標局に移送して、公告されると同時に、移送を許可した機関にも送付する。元の商標権者は登録取消裁定書を受け取ってから15日以内に、元の「商標登録証」を、現地の移送を許可した機関を経由して商標局に返送する。
1993年
「商標法」第27条
登録された商標がこの法律の第8条に違反  している場合、又は欺瞞的な手段又はその他の不正な手段で登録を得た場合、商標局はその登録商標を取り消す。その他の事業単位又は個人は、商標審判委員会にその登録商標について取消審判を請求することができる。
1993年
「商標法実施細則」第25条
(1)虚構、事実、真相の隠蔽又は願書及び関係書類を偽造して登録を得ること。
(2)信義誠実の原則に反し、複製、模倣、翻訳などの方法で公衆によく知られている他人の商標を使って登録を得ること。
(3)権限を授けられていない代理人がその名義で商標登録を得ること。
(4)他人の合法的な優先権を犯して登録を得ること。
(5)その他の不正手段で登録を得ること。
2001年 
現行「商標法」
上記(2)法律に上昇⇒
「商標法」第13条(著名商標の保護)と第31条(他人が先に使用しており、かつ、一定の影響力のある商標の保護)に変更
上記(3)法律に上昇⇒
「商標法」第15条(代理人又は代表者が商標権者の商標を先取りして登録する行為を禁止)に変更
上記(4)法律に上昇⇒
「商標法」第31条(先に存在する他人の合法的権利を侵害することを禁止)に変更
上記(5)⇒
「商標法」第41条1項(登録された商標がこの法律第10条、第11条、第12条の規定に違反している場合、又は欺瞞的な手段又はその他の不正な手段で登録を得た場合、商標局はその登録を取り消す。その他の事業単位又は個人は商標審判委員会に登録取消審判を請求することができる)

上表に示したとおり、現行「商標法」第41条1項は、1993年「商標法」第27条の規定を踏襲しているが、「商標法実施細則」第25条(5)項の包括的な条項は採用していない。そのうえ、第41条1項は包括的な条項であるべき規定「その他の不正な手段で登録を得た場合」を、使用禁止条項、顕著性などの絶対的な事由と並列しているから、法律適用の困難を引き起こしたのである。

2、「商標法」第411項の「その他の不正な手段で登録を得た場合」に対する二つの提案

(1)中国はWTO加盟に伴い、経済のグローバル化を全面的に進めている。欺瞞的又はその他の不正な手段で他人の商標を先取りして登録するケースが次々と現れて尽きない。現在までに、商標審判委員会と北京高級裁判所などの一部の裁判所は、「商標法」第41条1項を適用し、数多くの商標冒認出願の不正競争行為を効率的に阻止し、真の商標権者に有力な法律支援を与えた。したがって、商標法の更なる改正案が可決されるまで、実務において、第41条1項の適用を一概に否定せず、現行商標法のその他の条項に優先して適用し、誠実信用の原則、悪意出願の証拠が十分でありながら、商標法のその他の条項で適用できない不正な登録行為について、第41条1項を適用することを提案する。これこそ、法律の公平さを十分に体現し、商標法の立法趣旨に合致すると思われる。

(2)現行「商標法」は列挙の方法で、実務におけるありとあらゆる不正登録の行為をすべて挙げかねるから、今回の商標法改正案において、「その他の不正な手段で登録を得た場合」という包括的な条項を、第41条2項の「第31条」の後に調整することを提案する。即ち、第41条2項を、「登録された商標がこの法律第13条、第15条、第16条、第31条の規定に違反している場合、又はその他の不正な手段で登録を得た場合、その商標の登録日から5年以内に、商標権者又は利害関係人は商標審判委員会にその登録商標の取消しについて審判を請求することができる。ただし、悪意による登録、著名商標の所有者は、5年の期間制限を受けない。」と改正することを提案する。

上記の改正により、長期に亘って行政執法と司法審査を困らせている「商標法」第41条1項の「その他の不正な手段で登録を得た場合」の条項を私的権利の保護に適用できるか否かという難題を、有効に解決できるし、また、当該条項に対する異なる理解と適用により異なる判断が下されるのを回避できると思われる。
 
(2009)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
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