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FTO調査におけるモレ防止とノイズ除去の方法について


中国弁理士  王 鈺寧
 
はじめに

自由実施(Freedom to Operate、FTOという。)調査は、新製品を市場に出す前に、第三者の特許を侵害しないかを判断するための調査として重要である。

FTO調査において、コスト制約があるため、対象技術や製品に関連し得る全ての特許(特許出願を含む)を網羅的に調査することは困難である。そのため、調査範囲の決定には2つの大きな課題が伴う。一つは「モレ」である。関連性の高い特許が検索されなかった場合、未知の侵害リスクが生じる可能性がある。もう一つは「ノイズ」で、無関係な特許が多く検索された場合、分析効率が低くなる。本稿では、調査の精度及び効率を向上させる観点から、実務経験に基づき、FTO調査におけるモレ防止とノイズ除去の方法を考察していく。

I. モレ防止

モレの一般的な原因としては、調査対象に対する理解不足やキーワード・分類記号の不適切な選択などが挙げられる。モレを防ぐ鍵は、調査対象の技術的特徴を正確に把握し、完全な検索式を構築することである。以下に、いくつかの効果的な方法を示す。

1.技術的特徴の正確な理解

FTO調査において、調査対象の技術的特徴に対する理解不足は、モレの大きな原因となる。モレを防ぐための第一の防御線として、調査対象の技術の十分な理解、検索要素の正確な判断、多面的な検索方針の策定が必要である。

まず、調査対象のコア技術や革新点を、独立した検索要素として扱う必要がある。

例えば、調査対象がカプセル剤である場合、その技術的特徴は、有効成分の化学構造、結晶形、添加剤、薬剤粒子の特性、カプセル剤形、カプセルシェル、製造プロセスや性能発現などにあり得る。調査担当者は、開発チームと十分なコミュニケーションをとらず、調査対象の「見た目」に囚われ、化合物の構造やカプセルにのみ着目すると、調査の重点を見誤る可能性がある。

調査対象のコア技術が特殊な添加剤の使用である場合、この添加剤を独立した検索要素として扱うべきである。これにより、調査対象の有効成分には触れていなくても同様の添加剤を使用している特許のモレを回避できる。

次に、同じ技術を別の観点から記載する特許文献があり得るため、それに応じて検索要素を拡張する必要がある。

調査対象のコア技術が特定の物性を有する薬剤粒子の形成である場合、薬剤粒子の物性を独立した検索要素として扱うだけでなく、検索要素を適切に拡張する必要がある。この場合、物性評価、物性に基づく機能、物性の達成方法などから、物性の検索要素を拡張することが考えられる。これにより、同様の物性を別の観点から記載する特許のモレを回避できる。

2.キーワード・分類記号の選択と拡張

キーワードは検索の基盤である。検索要素を決定した後、検索要素から主要な用語を抽出し、拡張する必要がある。

通常、同義語、類義語、専門用語、英訳、略語、異体字、一般的な誤記まで拡張する。また、調査対象や分野に応じて、上位概念まで拡張するとともに、国際特許分類(IPC)・共同特許分類(CPC)の分類記号と併用して検索する場合もある。

キーワード・分類記号を適切に選択して拡張することで、より多くの潜在的な関連特許をカバーできるように検索範囲を拡大し、用語の違いによるモレを減らすことができる。

3.複数のデータベースの活用

特許データベースはFTO調査のための重要なツールであるが、単一のデータベースに頼ると、不完全な結果となる恐れことがある。複数のデータベースを用いて照合することで、ヒットされた特許集合の完全性を確保できる。

実務において、同一の検索式でヒットされた特許集合がデータベースによって異なることがよく見られる。検索式が複雑であるほど、この差異は顕著になる。その原因としては、データベースのデータソースやテキストマッチングアルゴリズムの違いなどが挙げられる。

同一の検索式を複数のデータベースで用い、それぞれでヒットされた特許集合を合併することで、データベースに起因するモレを回避できる。

4.競合他社の特許への着目

FTO調査において、競合他社の特許に特に着目する必要がある。関連分野における競合他社の特許に着目することで、検索式でカバーされていなくても、調査対象との関連性が高い特許のモレを防ぐことができる。

関連分野における競合他社の特許ポートフォリオには、先行技術の回避や検索からの回避を目的として、様々な観点から発明を記載し、さらには自ら定義した新しい概念を用いて作成された特許が含まれることが多い。検索式を構築する際、あり得る記載方法をすべて予測することは困難であるため、特別な書き方を使用した特許をカバーできないおそれがある。

競合他社の特許に着目することで、検索式でカバーされていない関連特許を補完することができる。さらに、競合他社の特許を分析することで、関連分野におけるその特許の記載方法を把握し、必要に応じて検索式の調整や追加検索を行うことができる。これにより、最初に構築した検索式の不足を補うことができる。

5.ファミリー特許の追跡

特許文献のファミリーは、モレを防ぐための重要な情報源である。複数の国でFTO調査を実施する場合、各国での調査結果を照合することで、関連特許のモレや誤判定による除外を防ぐことができる。

複数の国でFTO調査を実施する場合、国ごとに調査担当者、検索式及びデータベースが異なるため、同じファミリーに属する特許は、一部の国でのみヒットされ、調査対象が抵触し得るものであると判断されることがある。この場合、他国における当該ファミリーの特許を追跡し、ヒットされなかった原因や、調査対象が抵触し得るものと判断されなかった理由を分析することで、検索・スクリーニング方針を最適化することができる。

II.  ノイズ除去

ノイズ除去は、検索結果のS/N比(信号対雑音比)を高め、分析の焦点を関連性の高い特許に絞り込むことを目的とする。以下に、いくつかの効果的な方法を示す。

1.検索要素及びキーワードの取扱い

FTO調査において、検索式は低いS/N比の主因となる。調査担当者は通常、自分の経験に基づき、コストと効率のバランスを考慮しながら、検索要素及びキーワードを適切に選択し、S/N比の高い検索式を構築する必要がある。

検索要素を選択する際に、調査対象のコア技術や革新点とは無関係の、または関連性の低い技術要素は通常、検索要素として採用しないか、又は他の検索要素と併用する。これにより、非関連特許のヒット件数が少なくなる。

キーワードの選択及び拡張においては、ノイズを多く招く用語を回避することも重要である。文字数の少ない用語はノイズを多く発生させる可能性があるため、通常は回避するか、又は加工する必要がある。例えば、「超純水」を検索要素として用いる場合、通常、その上位概念である「水」をキーワードに含める必要があるかどうかは特に慎重に検討する。これは、「水」を単独で用いると、「非水溶媒」や「水酸化鉱物」などに関するノイズ特許が多くヒットされるおそれがあるためである。上位概念である「水」で検索する必要があると判断された場合、その他の検索要素(分類記号等)と組み合わせたり、データベースが対応可能な場合に英語のキーワードに置き換えたりすることが考えられる。これにより、非関連特許のヒット件数が少なくなる。

検索要素及びキーワードを適切に選択することにより、検索の初期段階でノイズを低減でき、それに続くスクリーニング作業の負荷を軽減することが可能となる。 

2.ステータスに基づくフィルタリング

FTO調査において、通常、検索の初期段階でステータスフィルターを用いて、権利消滅で脅威とならない特許を除外し、存続中の特許及び係属中の特許出願のみをスクリーニングや検討の対象とすることができる。

なお、ステータスは動的に変化する可能性がある。そのため、FTO調査、特に長期プロジェクトでは、ステータスを随時更新することで、調査範囲をさらに狭くし、無効なデータの分析を回避することができる。

3.技術的特徴に基づくクラスタースクリーニング

FTO調査において、同じ構成要件により抵触性なしと判断できる複数の特許が存在することもよくある。このような特許をクラスター分析することで、ノイズを一括して迅速に除去できる。

例えば、アルコール度数が高い白酒に関するFTO調査において、スクリーニング対象となる特許集合には、白酒と同じ分類に属するウイスキーやウォッカのような蒸留酒に関するノイズ特許が多く含まれている可能性がある。そのため、ウイスキーやウォッカ等をキーワードとして用いることで、関連する特許クラスターを抽出することができる。さらに、スクリーニング対象となる特許集合には、浸薬酒に関するノイズ特許も多く含まれている可能性がある。浸薬酒に用いられる薬剤や、ノイズ特許を多く持つ出願人をキーワードとして用いることで、関連する特許クラスターを抽出することも可能である。このようにして抽出した特許クラスターを一括して分析することで、ノイズを迅速に特定し、スクリーニング効率を向上させることができる。

まとめ

FTO調査は綿密な作業である。モレ防止とノイズ除去には技術に対する深い洞察と柔軟な調整が必要である。開発チームとの積極的なコミュニケーション、多面的な検索方針の策定、科学的なフィルタリング方法により、調査の正確さ及び効率を大幅に向上させることができる。

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