化学分野において、「予想外の効果」を有すると唱える特許の無効化は通常、困難である。本件は、参考になれる無効化戦略を示してい...
近日、明陽科技(蘇州)股份有限公司(以下、明陽科技という)の社長一行は弊所にご来訪いただいた。弊所弁理士が同社の無効宣告請...
中国における特許分野の現状


北京林達劉知識産権代理事務所
所長 弁理士 劉 新宇

目次

I. 特許出願状況の概要
II. 中国特許の審査状況
III. SIPOの審査能力
IV. 中国特許の不服審判、無効審判案件の状況の概要
V. 中国特許不服審判、無効審判行政訴訟の状況
VII. 中国特許法第三回改正状況の紹介
 
2001年に中国は、第二回特許法およびその実施細則を改正し、現在の特許法体系を築いた。中国で発生している多くのその他の事情と同様に、2001年に採釈された現行の特許法およびその実施細則が実施されて以来、中国の特許分野の発展は日進月歩であり、その変化は極めて迅速であるといえる。ここでは、2001年以来の中国特許分野の現状を簡単に紹介する。
 
I. 特許出願状況の概要

1. 特許出願状況の概要

1 2007年の特許出願状況の概要

近年の中国特許出願は急速な勢いで増加している。2007年に中国国家知識産権局(SIPO)が受理した発明、実用新案、意匠の特許出願件数は合計で694,153件となり、前年同期の573,178件と比べて、21.1%増加した。そのうち、国内出願は586,734件で、前年同期の470,342件と比べて、24.7%増加し、全体の84.5%を占めた。一方、外国からの出願は107,419件であり、前年同期の102,836件と比べて、4.5%増加し、全体の15.5%を占めた。

2007年に受理された三つの特許出願のうち、発明特許出願は245,161件で、前年同期の210,490件と比べて、16.5%増加し、そのうち、国内出願は153,060件で、前年同期の122,318件と比べて、25.1%増加し、全体の62.4%を占めた。一方、外国からの発明特許出願は92,101件で、前年同期の88,172件と比べて、4.5%増加し、全体の37.6%を占めた。また、実用新案出願は181,324件で、前年同期の161,366件と比べて、12.4%増加した。意匠出願は267,668件で、前年同期201,322の件と比べて、33.0%増加した。

2007年の特許出願には、以下のいくつかの特徴がある。

① 三つの特許出願の合計は、継続して増加しており、前年同期比21.1%増加した。

② 2007年の発明特許出願は国内出願が主体で、国内出願が62.4%を占め、外国からの出願は37.6%であり、国内出願が外国からの出願より約25%多かった。また、国内発明特許出願の増加率は、外国からの出願の増加率を遥かに超えた。すなわち、国内発明特許出願は前年同期比25.1%増加し、外国からの出願は前年同期と比べて4.5%の増加にとどまった。

③ 企業がイノベーションの主体となった。2007年の国内発明特許出願中、企業からの出願が48.3%を占め、前年同期比2.1%増加した。国内企業の特許出願のうち、職務出願の比率は依然として80%以上を維持している。

2007年に受理された三つの特許出願の全体では、職務出願が380,260件で、前年同期の303,174件と比べて、25.4%増加し、非職務出願は313,893件で、前年同期の270,004件と比べて、16.3%増加した。

2 これまでの出願状況の概略

統計によれば、2007年12月31日までに国家知識産権局が受理した特許出願件数は累計4,028,520件であり、そのうち国内出願は3,314,591件で、82.3%を占め、外国からの出願は713,929件で、17.7%を占めている。発明、実用新案、意匠特許の出願件数はそれぞれ1,334,676件,1,471,191件、1,222,653件で、総数に占める比率はそれぞれ33.1%、36.5%、30.4%である。

したがって、2007年12月までに受理された特許出願総数はすでに400万件を超えた。特許出願総数が最初に100万件に達したのは、中国特許法が1985年に実施されてから2000年の初期まで、約15年を要し、第二の100万件は4年2ヶ月を要した。その後、2年3ヶ月で第三の100万件に達し、今回はわずか1年6ヶ月で第四の100万件に達した。

これまでの300万件に比べて、第四の100万件は急速に増加したほか、主に以下の二つの特徴も現れた。

① 発明特許出願の国内比率は急速に増加している。これまでの三回の100万件の発明特許出願の国内比率は、それぞれ47.8%、50.7%と53.4%であったが、第四の100万件では、国内比率は60.8%に達した。年別に見ると、国内の発明特許出願の比率はしだいに増加しており、2006年の国内の発明特許出願は全体の58%を占め、2007年には、さらに上昇し、63%に達した。中国で受理された発明特許出願のうち、国内の発明特許出願の増加率は、外国からの発明特許出願の増加率より顕著に高い。

② 職務出願の比率がしだいに増加している。 これまでの三回の100万件の職務出願の比率は、それぞれ41.8%、49.5%と52.4%であったが、第四の100万件では、職務出願の比率は53.9%に達した。この変化の原動力は、国内の職務出願の比率の上昇によるものである。

3) 特許出願情報の解釈

三種の特許出願と授権の持続的かつ急速な増加は、以下のことを示している。国家イノベーション体系の構築が進展し、国内イノベーション主体の自主的なイノベーションが活躍し、公衆の特許保護意識が顕著に高まってきた。国内の発明特許出願の増加の勢いは、中国の自主的なイノベーションレベルの上昇を示し、発明創造の技術の上昇を証明している。2007年の国内企業の特許出願の比率は国内の全職務出願の80%を超えた。このことは、中国企業が法律によって、自主的なイノベーション成果を保護することをますます重視するようになったことを説明しており、また、自主的なイノベーションにおける主体的地位の強化の現れである。外国企業の中国への特許出願も依然として増加しており、また、ある主要な国の特許出願の増加スピードは本国における特許出願を超えた。このことは、中国の社会主義市場経済体制が日に日に改善され、特許保護の環境が一歩ずつ改善されつつあることにより、外国企業にとって強い求心力を備えてきたことを示している。

しかし、中国の特許の質的レベルはまだ低く、市場との融合もまだまだ不十分である。それは、輸出入貿易における単位あたりの輸出入額に含まれる特許の数に表れている。最新の統計によれば、EUの対中国輸出一億ドルに対する特許出願件数は22.1件であるのに対して、中国の対EU輸出一億ドルに対する特許出願件数は0.5件しかない。

4) PCT国際出願受理に関わる概要

統計によれば、国家知識産権局は、特許協力条約(PCT)の国際特許出願受理局として、2007年に受理したPCT国際特許出願件数は、全体で5,401件となり、前年同期比41.2%増加した。そのうち、国内からの出願は5,211件で、全体の96.7%を占め、国外からのものは180件、3.4%を占めた。中国のPCT国際特許出願は引き続き高成長を保っている。

中国におけるPCT出願の主要な地域は、広東、北京、上海などの東部沿海地域で経済が発達している地域である。2007年には、広東省が一位で2,646件出願され、国内全体の半分以上も占めた。北京は560件で二位であった。上海、台湾、香港はそれぞれ385件、270件、246件で、三位、四位、五位であった。また、江蘇省、浙江省、福建省、遼寧省からのPCT出願も100件を超えた。国内のPCT出願の90%は、上記の地域から、すなわち、沿海地域からのものである。

企業がPCT出願の主体であり、2007年に国内から受理されたPCT出願のうち、企業からの出願が70%を占めた。なかでも、華為技術有限公司のPCT出願件数は1,544件で、一位であり、中興通信株式有限公司は430件で、二位であった。華為、中興などの国内の技術先進企業が特許の国際化に力を入れている。

中国のPCT出願の技術分野は比較的集中している。電気分野の出願が全体の半分以上を占めており、なかでも最も多いのは電気通信技術に関わっている。電気分野は、中国が現在技術イノベーションにおいて最も活発な分野であり、国内企業の一部はすでに自主的なイノベーション能力を保有している。

2007年に受理した国外からのPCT出願の大部分は、世界的に著名な国際企業からのものである。国家知識産権局を受理局とする国外からのPCT出願は増加しつつある。その原因の一つは、国外企業の研究開発の一部が中国に移転していることであり、もう一つは、特許審査の総合能力の上昇に伴い、国家知識産権局の国際的な影響力が日増しに増加していることである。

2. 国内単位、個人の特許出願状況の概要

以上述べたように、2007年に中国が受理した国内、外国からの発明特許の出願件数は増加の勢いを保持しているが、国内の発明特許の出願件数の増加率は国外からの出願件数の増加率を遥かに超えている。1990年代の初頭に中国が受理した国内からの発明特許の出願件数は全体のわずか40%程度しか占めていなかったが、2003年には50%に上昇し、2007年には60%を超えた。「このことは、中国の自主的イノベーション能力が増加しつつあり、特許出願の質がさらに上昇したことを示している」。

企業が中国の技術イノベーションの主体となり、企業の知的財産の創造と保護意識及びその能力が顕著に増加してきた。2007年の中国の特許出願が高成長を保持している状況下において、特許出願人のタイプも構造的な変化を生じており、職務出願が全体の70%を占め、国内企業の発明特許出願は同期比29.1%増加し、PCTの出願件数は大きく伸び、5,401件に達し、同期比38.1%増加した。

2007年受理された三種の特許職務出願において、国内職務出願件数は276,107件で、国内出願の47.1%を占め、前年同期の203,566件と比べて、35.6%増加した。国内職務出願の中で、企業からの出願は223,478件で、国内職務出願の80.9%を占め、前年同期の166,874件と比べて、42.2%増加した。大学からの出願は32,680件で、国内職務出願の11.8%を占め、前年同期の22,950件と比べて、42.9%増加した。科学研究院からの出願は14,119件、国内職務出願の5.1%を占め、前年同期の9,878件と比べて、42.9%増加した。機関団体からの出願は5,830件で、国内職務出願の2.1%を占め、前年同期の3,864件と比べて、50.9%増加した。

2007年に受理された発明特許の職務出願において、国内の発明特許の職務出願は107,664件で、国内の発明特許出願の70.3%を占め、前年同期の81,485件と比べて、32.1増加した。国内発明特許の職務出願においては、企業からの出願は73,893件で、全体の68.6%を占め、前年同期の56,455件と比べて、30.9%増加した。

国内特許出願における職務出願の比率は一層上昇してきている。国内の三種の特許出願における職務出願の比率は47.1%、同期比3.8%増加した。発明特許出願の職務出願の比率は70.3%で、同期比3.7%増加した。

近年来、国内の単位、個人の特許出願については、その件数が著しく増大しているほか、以下の特徴がある: 

① 発明出願の国内比率は著しく増加している。前記の三つの100万件において、発明出願の国内比率はそれぞれ47.8%、50.7%、53.4%であるのに対して、第四の100万件の中には、60.8%にも達した。これにより、中国が受理した発明特許出願において、国内発明出願の増加の幅は国外の増加の幅を遥かに超えたことが明らかになった。

② 意匠特許出願と実用新案特許出願が主であり、技術のレベルは相対的に低いといえる。

3. 国外企業の特許出願状況の概要

国外企業は知的財産権を通して、中国市場を競う趨勢がますます明確になっている。国外企業が出願した中国特許は主に発明特許であり、発明特許はまた無線電信、携帯通信、テレビシステム、半導体、遺伝子工学などのハイテク分野に集中している。又、それらの分野における国外企業の優位性は明らかであり、あるハイテク分野においては独占的地位をも得ている。

出願件数の面においては、近年来、国内の発明出願件数が上昇すると同時に、中国国家知識産権局が受理した国外発明出願の出願件数は著しく増加している。国家知識産権局の統計によれば、2005年中国に特許出願をしたトップ10位の国家の中には、日本は36,221件で一位、アメリカは20,395件で二位、前年同期比はそれぞれ19%、26%増加した。三位の韓国、五位のオランダ、八位のイタリアの前年同期比は40%増加した。2007年には国外発明出願の出願件数は2006年の88,172件から92,107件までに上昇した。国外企業が出願した中国特許の件数が著しく増加していることは、国外企業の中国知的財産権制度への信頼と中国市場を重視する姿勢の現れといえる。

また、2007年には、国外職務出願は104,153件で、国外出願の97.0%を占め、前年同期の99,608件と比べて、4.6%増加した。これも中国市場を重視する姿勢の現れといえる。
 
II. 中国特許の審査状況

1. 特許審査の概要

情報化建設作業は、新しい進展を得ている。2007年8月1日、中国特許電子審のプロジェクトは、順調に稼動し始めた。中国特許調査とサービス・プラットホーム・テスト・システムは、既に建設され、4月26日より運行している。中国特許調査及びサービスシステムのユーザ・ニーズも既に完成され、データの処理及びデータの加工も全面的に実施し、中国特許データの初加工、同データの更なる加工、中国特許明細書のコード化への転換、中国特許要約書の英訳等の十五個のデータ加工プロジェクトを実施し始めた。この結果、情報化した基礎施設の建設も強化され、15種の情報化基準の制定作業も展開し始め、政府のウェブサイトも、三回目の改正を完成した。これにより、特許調査サービスは、一層改善され、アクセススピードも向上した。

「第11回五年計画」期間における特許業務の主な発展目標は、適合な審査周期を保つことである。特許出願件数の増加及び特許審査能力発展の状況に基づき、社会の実際のニーズに合わせて、特許審査周期及び審査任務を合理的に確定する。「第11回五年計画」期間内に、発明、実用新案及び意匠の三種特許の出願総件数は340万件を超え、発明特許の出願件数は、140万件を超える見通しである。2010までに、発明特許出願の実体審査終結周期を平均24ヶ月程度に安定させるよう努力し、実用新案及び意匠の出願審査周期を平均6ヶ月程度に達させ、特許の不服審判及び無効審判請求案件の審査周期を12ヶ月以内に安定させる。「第11回五年計画」期間において、少なくとも、発明の特許出願70万件、実用新案特許出願89万件、意匠特許出願109万件、特許の不服審判と無効審判請求4.1万件を審理終結する。

世界知的財産権機構は、2月21日に2007年の『特許協力条約』に基づき提出した国際特許出願データを公布したが、2007年の出願総件数は、史上記録である15万6100件に達した。東北アジア諸国の増加率は、四年連続で最高であって、国際出願総件数の25.8%を占め、韓国及び中国は、トップ10位の地位をゆるぎないもとした。

国連ウェブサイトの報道によると、知的財産権機構幹事イドリス氏は、東北アジア諸国の特許出願件数の増加及び全世界の特許活動におけるシェアの際立ちは、全世界イノベーションの構造が正に変化してきている証拠であると表明した。また、東北アジア諸国は順調に国際特許制度でビジネスと経済成長を促進することができるということは非常に鼓舞すべきことであるとも述べた。

2006年に比べ、韓国の2007年の出願件数は、7000件以上であり、増加率は18.8%で、フランスを超えて、既に『特許協力条約』の第4大出願国となっている。中国の出願件数は、5400件以上であり、増加率は38.1%で、オランダを超えて、第七の国となっている。アメリカ(5万2000件以上)、日本(2万7000件以上)及びドイツ(1万8000件以上)は、依然として、トップ三位を保持している。

具体的な特許出願人から見ると、日本の松下(2100件)は、オランダのPhilips(2041件)を超えて、第1位になっている。ドイツのSiemens(1644件)は、第3位を保持している。中国の華為(1365件)は、第4位となっている。

知的財産権機構によれば、電子方式で国際出願を提出する出願人はますます増えている。2007年、半数以上(53%)の出願が電子方式で提出され、その他15%は、電子とペーパの結合方法で、その他32%は、依然としてペーパで提出されている。

2. 特許権付与の状況概要

1) 2007年の特許授権量の状況概要

特許審査能力も向上し、特許審査の任務も規定の数量を超えて完成された。三種の特許審査終結案件数は、47.5万件で、同期比は、25.3%増加した。

2007年の国家知識産権局に授権された特許権は、合計351,782件であり、前年同期の268,002件に比べて、31.3%増加した。そのうち、国内特許の授権件数は301,632件で、前年同期の223,860件に比べて、34.7%増加し、国外特許の授権件数は50,150件で、前年同期の44,142件に比べて、13.6%増加した。その中で、職務発明の授権件数は、182,340件で、前年同期の135,597件に比べ、34.5%増加し、非職務発明の授権件数は、169,442件で、前年同期の132,405件と比べ、28.0%増加した。三種の特許授権のうち、発明特許の授権件数は67,948件で、前年同期の57,786件に比べ、17.6%増加し、実用新案特許の授権件数は、150,03件で、前年同期の107,655件に比べ、39.4%増加し、意匠特許の授権件数は、133,798件で、前年同期の102,56件に比べ、30.5%増加した。三種の特許授権件数が総件数でのパーセントは、それぞれ19.3%、42.7%、38.0%である。

2007年の特許授権の主な特徴は、下記の通りである。

① 三種の特許の授権件数は、引き続き大幅に増加を続けている。2007年、三種の特許の授権は、同期比31.3%増加し、前年同期の25.2%より6.1%増加した。

② 国内の発明特許授権の増加スピードは、遥かに国外のそれを超えている。2007年に授権された発明特許において、国内が31,945件で、総件数の47.0%を占め、同期比27.4%増加した。国外は36,003件で、総件数の53.0%を占め、同期比10.1%増加した。国内の増加スピードは、国外のスピードより17%も超えているが、国内外の発明特許の授権量の差は徐々に縮小されてきた。

出願人の国別から見れば、2007年にSIPOに授権された特許出願の53%(36,003)は、国外出願人によるものであり、47%(31,945)は、国内の出願人によるものである。

2) ここ数年の特許授権件数の状況の概要

2007年12月31日までに、国家知識産権局に授権された特許は、合計2,089,286件で、そのうち、国内からのものが1,790,379件で、国外からのものが298,907件で、それぞれ85.7%、14.3%を占めた。発明、実用新案、意匠の特許件数は、それぞれ364,451件、988,264件、736,571件であり、それぞれ17.4%、47.3%、35.3%を占めた。最新の統計によれば、実用新案特許の出願人は、ほとんど国内出願人であり、意匠の出願件数についても、国内出願人の数が国外出願人より遥かに多い。

又、2007年に、PCT国際出願調査を完成した件数は、4833件で、同期比52.8%増加した。

上記内容を纏めると、中国の特許審査能力は、日増しに高まり、審査スピードも絶え間なく加速されている。国内発明特許の出願及び授権の良好な増大傾向は、中国の自主的イノベーションレベルが次第に向上し、発明創造の技術実用性も上昇していることを表明できる。

3) 授権特許の維持状況の概要

中国国家知識産権局が先日発布した統計データによれば、2007年末までに、中国で有効な特許が合計85万件以上で、2006年と比べ、約17%増加した。そのうち、国内からのものが70%以上を占める。しかしながら、指摘しておきたい点がある。2007年に有効な特許件数が大幅に増加したものの、当該増加は、ほとんど実用新案と意匠によるという点である。国内からの出願人が実用新案特許及び意匠特許の出願に主体をおいているので、増加した授権件数の多くが国内の出願人によりなされたものである。もうひとつの特徴は、国内の特許の件数が多いのに対し、維持する期間が短いので、質も高める必要がある。最新の統計によると、中国で出願し、且つ授権された特許は、その存続期間を10年とした場合、中国の残存比率は44.1%であるのに対して、国外の特許の残存比率は83%で、中国国内特許の2倍である。存続期間が20年とした場合、中国の特許の残念比率は2.5%で、国外の特許の残存比率は17.8%で、中国国内特許の7倍になる。これは、主に国内特許が実用新案特許と意匠特許であることと関わり、また国内発明特許の質が国外発明特許より低く、市場化への応用力不十分であることにもかかわる。

3. 特許審査、授権の周期の概要

1985年4月1日より特許法が実施されて以来、中国の特許出願件数は毎年増加している。2007年12月31日までに、SIPOに受理された特許出願は、合計4,028,520件である。特許出願件数の迅速な増加及び審査能力の不足により、2000年前後に、審査案件の遅滞が深刻化した。当時、一件の審査案件は、実体審査から授権まで、通常4、5年も掛かり、審査能力の不足と審査案件の著しい増加との歪が日増し際立っていた。ここ数年、SIPOは、力を尽くしていろいろな有効措置を取り、特許審査の質を高め、審査開始から授権までの周期を短縮し、著しい成果を遂げた。審査官を大量に増加し、オフィスオートメーション効率化も高められてきた。上記措置を取ることにより、SIPOの特許審査能力も著しく向上し、審査の周期が短縮され、各種特許の審査スピードも加速傾向を呈している。実体審査の周期に関しては、2005年より既にアメリカの特許庁を上回り、SIPOは世界の特許出願審査の平均審査周期がもっとも短い特許審査機構となった。2006年までに、発明特許の平均審査周期は、2001年の53ヶ月より2006年の22ヶ月に短縮され、著しい成果を得られた。実用新案の審査周期は、9ヶ月までに短縮され、意匠特許の審査周期も6ヶ月までに短縮された。

4. 特許審査品質管理の概要

近年、特許出願件数の大幅の増加、特許審査官の増員につれて、中国国家知識産権局が特許審査品質管理を一層重要な位置に置いた。この三年、国家知識産権局はすでに全面的な審査品質管理体制を設立し、実体審査、方式審査、PCT審査を含む品質管理制度を制定し、局レベルの品質検査グループ、部門レベルの品質検査グループと処レベルの品質検査グループという三段階の品質管理機関を設立し、全範囲、全プロセスで、多段階の品質管理システムを初歩的に形成した。全プロセスをカバーする審査品質評価体制が大体構築された。

『国家知識産権局の2007年の業務重点』は以下とおり指摘している。特許審査品質管理の重点は特許調査と審査等の実体面に置き、審査プロセスの中の実体検査力を高めかつ審査結果に対する実体的な品質管理を強める。全プロセス、各段階をカバーする特許審査品質評価体系を設立し、とりわけ特許審査品質に対する外部からのフィードバック体制の構築を強化する。プロセスの向上をきっかけとして、ノーペーパの案件を分配する管理システムを建設し、全プロセスをカバーする特許業務への評価体系を形成し、審査のメカニズムを順調にさせ、正確化、体系化、基準化された審査業務管理体制を設立する。各仕事を順調に行けるように、学術研究、基準の解釈と改訂、品質管理、審査官トレーニングなどの多くの部分が連動する特許審査のメカニズムを設立する。

具体的な実施状況から見ると、上記述べた要点は過ぎた一年中によく実施され、特許審査品質体系もすでに全面的に設立され、また実行されていた。中国国家知識産権局は所属する各実体審査部門を評価して、品質管理を行っている。それによって、各実体審査部門は大きなプレッシャーを感じる。各実体審査部門も所属する部を評価する。それによって、実体審査官は大きなプレッシャーを感じる。その方法により効果的な成果を遂げた。今年、品質管理体制は特許審判委員会の不服審判案件、無効審判案件の品質管理を強化して、それらを局全体の品質管理体制に導入する。

現在、中国の特許審査はすでに完全的な品質管理体制を形成し、特許審査品質及び審査能力の顕著な向上を基本的に保証できる。中国国家知識産権局の田力普局長は、先進国との差を少なくするために、以下の四つの面に更に力を入れようと述べている。

(1) 科学技術の進歩が速くなり、新しい技術分野が続々出てくることにつれて、今後特許審査は依然として、審査の品質を高めることを業務目標として、世界の主な国家と地域の特許審査機構との協力や交流を強化する。

(2) 全局として人員と規模が増加していることに対し、素質はまだまだ高める必要がある。

(3) 中国情報化のスピードが高まりつつあり、とくに今年中国の特許電子審査システムと中国特許調査サービスが実行する予定である。それによって、特許情報化のレベルを大きく上昇させることができるが、情報化のレベルはさらに上昇する空間がある。

(4) 国際交流と協力が強化しつつあるが、国際影響力はさらに拡大させるべきである。そのほか、新たな国際情勢の新たの要求に応じるために、SIPOは引き続き知的財産の関連問題の研究を深め、高い素質の国際交流と協力チームを作るべきである。

すでに設定された「第11回五年計画」によると以下の通りである。特許審査品質を高める。特許審査、プロセス管理、PCT国際調査、方式審査の品質を高める。特許審査のプロセスを管理する上で、特許授権の安定性と社会満足度を高める。2010年までには、特許審査品質を2004年末時の知的財産権(特許)強い局のレベルに引き上げる。

5.特許審査基準の概要

特許審査の基準から見れば、今のところ実体的な審査が行わない意匠と実用新案を除いて、発明特許出願における実体審査過程の審査の基準(あるいは授権基準という)は欧米諸国と比べて厳格か、そうでないのかはそう簡単な問題ではない。審査の基準について言えば根拠となるのは審査指南である。現行の審査指南は2006年6月1日から正式に実施されている。ほかに、まもなく実施される内部の基準-審査マニュアルもある。後者はまだ承認されていないので、ここでは特に評価しない。当事者にも審査官にも法律上の規範性のある審査指南については、その基準はEPOと一致するところが多い。それは中国の審査基準は主にヨーロッパに学ばれたものだからである。その中に、最も影響を与えられた国はドイツであり、その理由はドイツは中国の特許制度の設立に特別な役割を果たしたからである。

政策上から見れば、それらの基準は主に新規性と進歩性に反映される。

新規性の判断には、中国は技術手段の直接な置換で、新規性の適用範囲を広げられる。欧米諸国はこの問題において、比較的には保守の態度を持ち、慣用手段の直接な置換より、進歩性から評価するほうが多い。基準の把握は主に進歩性判断の尺度に体現されている。審査指南の規定によれば、進歩性とは格別の実質的特徴と顕著な進歩を具備することをいうとされる。格別の実質的特徴とは自明でないことをいう。また、顕著な進歩も要求される。法律法規の規定から見れば、より厳しくみえるが、実際には自明でなければ、進歩性があると認められる。そうすると、両者の審査基準は実際的な差はない。

審査基準については、アメリカでは、2007年のKSR International Co. v. Teleflex Inc.という案件においては、以前の「教導-啓示-動機」という進歩性の判断基準を否定しなかったが、厳格にその基準を適用することを否定した。その判決は特許進歩性の判断基準の過度な客観化を否定するものであり、また特許進歩性基準を高めたことを意味するものでもある。進歩性基準について、ヨーロッパ特許裁判所の裁判官は、アメリカの最高裁判所はその案件において、採用した基準はヨーロッパの基準とまったく一致であると認めている。そうすれば、中国の授権基準は欧米の授権基準は実質的には区別がないといえる。

権利化比率から見ても、これらの基準は実質的な区別がない。

授権すべきか、授権すべきではないかについては、国家の政策によるもので、ここでは、分析しないこととした。しかしながら、審査のプロセスからみれば、審査が少々厳しい傾向にある。たとえば、媒質保存設備に関わる審査に対しては、細則第20条1項、第21条2項の把握には、少々厳しい傾向があるようだ。
 
III. SIPOの審査能力

1. 審査官とそのトレーニング

1)審査官の規模と構成

特許出願件数が増加しつつある状況において、審査業務のニーズ及び現在のヒューマンリソースの配置状況にしたがって、科学的に審査官募集の規模を確定し、合理的に職員構造を調整し、経験者、専門の複合的な職員、高学歴のある職員の公募比率を高める。「第11回五年計画」の末ごろ、発明特許の審査官を4000人(審査協力センターも含む)以上、実用新案の審査とプロセス管理者を220人、意匠特許の審査官とプロセス管理者を150人、方式審査とプロセス管理部の審査またプロセス管理を350人、特許審判委員会の審査、応訴を担当する審査官及びプロセス管理者を400人に到達する。情報化、総合管理、文献情報、行政また業務管理の職員の人数を相応に増やす。特許審査の補助者を合理的に配置、増加させられる。

近年、国家知識産権局は毎年300名-500名を公募するスピードで、審査官の人数を増加しつつある。2001年から2006年までの間、国家知識産権局は1358名の発明特許実体審査官を増員した。2006年において、国家知識産権局が公募した各種の審査官は535人であり、年末まで、在職の審査官は累計2170人にも達した。

組織機構と人数: 方式審査またはプロセス管理部310人あまり、電学部340人あまり、バイオ・生物部180人、光電気技術部326人、機械部210人、通信部265人、化学部172人、材料工程部270人、意匠部123人、実用新案部183人、審査協力センター1300人あまり、審判委員会320人。上記なデータは、統計方法の違いにより、多少誤差がある場合もある。人員規模から見れば、2006年国家知識産権局はすでにアメリカ、ヨーロッパの特許庁に次ぎ、第三位の局となった。

2)審査官のトレーニング方法と内容

審査官の急増につれて、SIPOはますます人材の育成とトレーニングを重要視してきている。2005年末、SIPOは『特許人材の育成、トレーニング指南』を制定し、部門に分けて、トレーニングの計画を確立した。入局トレーニング、部門トレーニング、能力向上トレーニング、継続教育、発展トレーニングの五つの段階に分けた。各段階には、若干のモジュールにも分けられる。トレーニングの質を高めるために、すでに規範化かつ標準化された百万字を超える教育概要や教育材料が作成されている。

SIPOは審査官へのトレーニングを強化し、審査官教育トレーニング体制の規範化、制度化、かつ合理化を強めることによって、審査官の総合能力を高め、審査効率も高める。それと同時に、国家知識産権局はヒューマンリソース方面の研究と探索を実施し、審査ヒューマンリソースの効能と審査能力の上昇に力を入れる。

トレーニングのメカニズム: 入局トレーニングは統一的に4ヶ月行う。そして、各部門は続いて、部門内部のトレーニングを行う。それに加え、定期的或いは不定期的に、局又は委員会によるトレーニングもある。

2. 特許審査専用の電子補助システム

国家知識産権局は特許審査プロセスを最適化するための研究と実践を展開し、ペーパーレスプロセス管理と補助審査システムの設置をより一層強化して改善する。調査システムを完璧にし、オフィスオートメーションを高め、もっと先進的な調査システムとデータベースを開発し、審査官の調査手段を豊かにする。それによって、審査官の審査能力と効率を上昇させ、全プロセスの審査周期を短縮し、審査の効率を高める。

国家知識産権局情報化建設の「第11回五年計画」により、国家知識産権局は電子特許審査の全プロセスにおいて、適応性の調整と向上設計を行う。特許出願、プロセス管理、審査、公告、不服審判、無効審判、調査、管理、統計を一体とする新たな中国電子特許審査システムを設立する。このシステムによれば、コード化ファイルの統一、完全で、業務プロセスの貫通する電子特許審査システムに基づいて、特許出願の提出から特許権の失効まで全ての法律プロセス、全プロセス、全方位の電子化とネット化が実現される。

今、SIPOは主にEPOQUE、cprs、paj、cnkiなどの調査システムを有する。また、審査官は全員高性能でスクリーンの大きい液晶コンピューターを有している。各調査システムの紹介は以下とおりである。

EPOQUE: 該システムは国家知識産権局がヨーロッパから導入した英語の調査システムであって、現在は審査官が外国特許文献を調査する際の主なツールとして使用されている。国家知識産権局が導入したEPOQUEシステムは22個のデータベースを有し、その中のEPODOCは要約データベースである。EPODOCはヨーロッパ特許庁によって設立された内部要約データベースであり、現在は54,773,788件の文献が収録されている。要約が付く特許文献は1978年以降のEP特許文献、1978年以降のWO特許文献、1970年以降のアメリカの特許文献、1920年以降のイギリスの特許文献、1969年以降のドイツの特許文献、1971年以降のフランスの特許文献、1971年からのスイスの文献また1987年以降の中国の特許文献を含む。

PAJ: 日本の特許英語要約調査システム。1999年3月31日から、日本の特許庁(JPO)産業財産権電子図書館(IPDL)はインターネットで無料に民衆にサービスを提供しており、便利で、効果的な調査、日本産業財産権の文献を手に入れることができる。最近、JPOはサービスを増やすことを決めた。審決結果の声明(JPO審判委員会の審決公報)データベースのデータ入力方法の簡略化、日本特許の英語要約(PAJ)の調査エンジンの変更(N-GRAM方式からWORD-GRAM方式への変更)、コンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)の調査を増加。上記改善と、増加された新しいサービスは2003年3月24日から開始しており、JPOのIPDLの使用に関する諮問E-MAILは: helpdesk@ipdl.jpo.go.jp 。日本の英語要約(PAJ)は1976年以来公布された未審査の日本特許出願明細書の英語の記載項目、英語の要約と主な図面を収録している。

CPRS: 中国の特許調査システム。1985年以降中国のすべての三種の特許調査データ、1985年以降中国のすべての発明、実用新案の明細書全文を収録している。

CNKI:中国定期刊行物全文データベース。CNKIは世界最大の連動して更新される中国定期刊行物全文データベースであり、国内の8200種類あまりの重要な定期刊行物を収録している。学術、技術、政策指導、高等科学普及および教育を主として、基礎教育、大衆科学普及、大衆文化および文芸作品も収録して、内容は自然科学、工程技術、農業、哲学、医学、社会科学などを含む。全文文献の量は2200万篇を超えている。文献は中国国内8200種余りの総合中国定期刊行物と専攻特色中国定期刊行物からなるものである。

3.授権許可制度の試しについて

それは制度建設上にSIPOの審査能力を支える。SIPOは2001年5月に特許審査協力センターを設立した。該センターはSIPOの依頼を受け入れ、発明特許出願の実体審査などの業務の一部を担当して、企業に特許出願と保護に関する技術上と法律上の問い合わせサービスを提供して、特許の審査スピードを更に加速させた。

2007年の年末までに、そのセンターの審査官はすでに1300人余りに達し、審査量はSIPOの審査総量の40%をも占めている。また、そのセンター以外の機関に対して特許を調査させ関係報告を提出させる業務も行っている。
 
IV. 中国特許の不服審判、無効審判案件の状況の概要

1. 不服審判案件の概要  

(1) 不服審判案件の受理件数と審決件数

2002年以来、特許審判委員会が受理また審決した案件の状況は以下のとおりである。

2002年: 961件、審決785件;
2003年: 1813件、審決1235件;
2004年: 2768件、審決1447件;
2005年: 3230件、審決1576件;
2006年: 2894件、審決2663件;
2007年: 2562件、審決3514件。

以上のデーターから見れば、2002年から2005年まで不服審判案件の増加量が非常に多いことに対し、2005年以後、案件の増加量が緩やかな下落している。その後の二三年間は、不服審判案件の件数が2000-3000件ぐらいを維持されると予想できる。件数が下落しているといっても、それは非常に膨大な量である。しかし、処理量は一貫して増加しており、特に最近の2年間は増加のスピードが速い。それは、特許審判委員会の審査官が大幅に増加したためである。また、最近の2年間は不服審判案件に対し審査期限管理を実施していることにも関係がある、ということがわかるようになった。

(2) 不服審判案件の審査周期

次に不服審判案件の審査周期について解説する。先にも述べたとおり、特許審判委員会の職員が増加している。例えば、2007年の年末までに、専門の審査官は300人あまりであることに対して、2002年の年末には専門の審査官はただ60人しかいなかった。そして、いまの案件の審査周期は指標のひとつとして審査期限が管理されるから、近年来の不服審判案件の審査周期はだんだん短くなっている。このことは当事者にとって歓迎すべきことである。いま、大部分の不服審判案件において、前置審査意見の通知を受け取った後、三ヶ月以内に合議体が設立される。そして合議体を設立してから、一年以内に審決することができる。予想できるのは、特許審判委員会の審査官の増加、審査官の能力の上昇につれて、不服審判案件の審査周期がもっと短なるということである。

2. 無効審判案件の概要

(1) 無効審判案件の受理量と審決量

2002年以来、特許の不服審判委員会が受理、審決した無効審判案件は以下のとおりである: 

2002年: 1752件,審決1402件;
2003年: 1813件、審決1617件;
2004年: 1904件、審決1667件;
2005年: 2087件、審決1643件;
2006年: 2468件、審決2022件;
2007年: 2183件、審決2522件。

上記のデータにより、2002年から2006年まで、無効審判の案件は増加していたが、昨年はやや下落の兆しが見えてきたことがわかる。今後の二三年間は無効審判案件の件数は2000-3000件ぐらいを維持するものと見られる。一方、審決の件数は増加しており、特にこの二年間は、増加スピードが非常に速い。興味深いことは、2007年には、初めて審決された案件の件数は受理された案件の件数を超え、案件の遅滞状況が緩和された。これは特許委員会の審査官の人数の大量の増加、また、この二年間の無効審判案件の管理に関係している。

(2) 無効審判案件の審査周期

無効審判案件の審査周期も不服審判案件と同様に審査官の増加と審査期限管理により、短縮されている。無効審判案件の審査周期から見れば、審査官の人数の大量の増加また、案件の審査周期を重要な指標として管理することによって、近年来、無効審判案件の処理周期はだんだん短くなり、当事者は非常に満足しているようである。いま、無効審判案件の大部分は前置審査意見のお知らせを受け取った後、三ヶ月以内に合議体を設立する。合議体が設立されてから、9ヶ月以内に審決することができる。今年、特許審判委員会の目標は大部分の無効審判案件を合議体が設立してから6ヶ月以内に審決すること。それは難しいが、予想できるのは無効審判案件の審査周期をもっと短くすることができる。

3 無効審判案件の審査に現れている特徴

何年前までは、外国企業または個人(企業)が国内外の特許権者に提出した特許無効審判は急速に増加していたが、2005年以後の二年間、その増加は大体緩やかになっている。それはこの数年間の無効審判案件の総量の変化に基本的に一致している。

現在、無効審判案件は以下の特徴がある:
 
① 外国企業と個人が無効審判を請求するのは主に技術レベルの高い発明特許で、技術レベルの低い実用新案特許に対する請求は少ない。

② 外国企業と個人を無効審判被請求人とする案件は主に発明特許である。それは外国企業と個人が中国で出願した特許は主に発明特許で、実用新案特許が少ないからである。

③ 請求人と被請求人の双方ともが外国企業または個人である無効審判の請求が出現した。外国企業または個人が中国の無効審判制度を信頼していることを反映している。

④ 外国企業と個人は一部の案件において、自らの名で無効審判請求を提出せずに、国内個人、企業の名で提出したので、実際に外国企業が無効審判請求人としての案件はもっと多いと予想される。

V. 中国特許不服審判、無効審判行政訴訟の状況

1. 不服審判行政訴訟の紹介

1 案件の受理量

2001年: 一審2件、二審1件;
2002年: 一審11件、二審5件;
2003年: 一審17件、二審6件;
2004年: 一審17件、二審21件;
2005年: 一審17件、二審11件;
2006年: 一審40件、二審21件;
2007年: 一審38件、二審20件。

2) 案件の審理周期

詳しいデータがないが、近年来、審理周期は大幅に短縮される傾向にある。2004年前に、一審の期間はおおよそ一年程度、二審の期間は一審よりも短い。最近の二三年、大部分の案件が半年以内に結審できるようになった。それは審査官の増加、審査官のレベルの向上、また特許不服審判行政の審理モデルの変化に深く関わっている。

3)案件審理の特徴

不服審判行政案件のひとつの際立った特徴は、行政訴訟の提出がかなり少ないことである。2002年に特許審判委員会が審決した不服審判案件は785件で、2007年は3514件であった。それに対して、2007年に提出された一審行政訴訟は11件、2007年は38件しかなかった。以上のことから見れば、特許審判委員会の審決に不服とし、訴訟を提起するのがかなり少ないことがわかった。特許審判委員会の審決が発効される比率は高い。

不服審判行政案件に関し、もうひとつ際立った特徴は、審決が維持される比率が高いことである。80%以上も占め、特に化学、生物、通信などのハイレベル分野において、比率はもっと高い。その原因は、特許審判委員会の審決の質が高いほか、不服審判案件自身の専門性が高い、特許審判委員会の審査官が高度な知識をもっていて、技術問題に対しての理解が比較的によい、裁判所の裁判官は比較的に技術上のバックグラウンドに不足があり、技術問題について、把握できないところもある。そのほか、不服審判行政案件は典型的な行政案件であり、審判部門は裁判所の行政裁判廷である。行政訴訟法に従って、行政機構(特許審判委員会)が専門的な問題においての自由裁判権にかなり大きな尊敬と支持を与えている、というのもその原因の一つである。

もうひとつの特徴は、審判モデルが普通の行政案件とは違うことである。裁判中、主に原告が提出した異議のある点に対して審理を行う。それは審理の効率を高めることもでき、原告の権利に実質的な障害を起こすこともない。

2. 無効審判行政訴訟案件の紹介

1)案件の受理量

2001年: 一審31件、二審1件;
2002年: 一審167件、二審46件;
2003年: 一審221件、二審100件;
2004年: 一審289件、二審216件;
2005年: 一審248件、二審196件;
2006年: 一審335件、二審218件;
2007年: 一審478件、二審258件。

2)案件の審理周期

詳しいデータがないが、近年来、無効審判行政案件の周期が徐々に短縮される傾向がある。審判の期間は不服審判案件とおおむね同様である。それは行政裁判官の増加とレベルの向上、また無効審判行政案件審理モデルの変化に関わっている。

3)案件審理の特徴

無効審判行政訴訟案件を不服審判行政訴訟案件と比べると、その際立った特徴は行政訴訟の提出比率が多いことである。2002年に、特許審判委員会が審決した無効審判案件は1402件で、その後、年々増加し、2007年に審決された案件は2522件に達した。2002年に提出された一審行政訴訟は167件で、2007年には478件であった。したがって、特許審判委員会の審決に不服し、訴訟を起こしたケースが多かった。

無効審判行政訴訟案件を不服審判行政訴訟案件と比べると、もうひとつの特徴は、大部分の無効審判の審決は維持されたが、その比率は不服審判の審決が維持された比率と比べてまだ低いことである。原因は、無効審判行政訴訟案件は特許審判委員会の中立で言い渡され、また、無効審判の審決と関わる証拠の問題が多いが、特許審判委員会の審査官は証拠の把握という面においては裁判官と格差がある。また、一部の無効審判行政案件は裁判所内部の民事裁判廷に裁判され、民事裁判廷の裁判官は行政訴訟案件を審理する際に民事訴訟の処理方法を使いがちになり、実体問題の認定にも力を入れてしまうことに関係がある。

目下、特許審判委員会の無効審判の審決に不服し、行政訴訟を起こす案件のうち、半分ぐらいは民事裁判廷において審理される。案件を区分する基準は以下のとおりである。民事権利侵害紛争にかかわる行政訴訟案件は民事裁判庭に審理され、民事権利侵害紛争と関係ない行政訴訟案件は行政裁判廷に審理されることとなっている。実は、どちの裁判廷に審理されてもメリットもあり、デメリットもある。しかしながら、ひとつの裁判廷に同じ規則で審理できないことは合理ではない。実務上、もたらされた最大の問題は行政訴訟の原告が訴訟を起こすとき、裁判廷を選択することである。それによって、案件の審理結果は統一できず、原告、第三者、被告に困らせている。この問題は2001年に新しい特許法が実施して以来ずっと存在し、そのデメリットが日増しに増加しつつあるが、今の法律枠のもとに、一時的に解決しにくい。根本的に言えば、その問題は全体の特許の無効審判審査モデルの位置づけと構築に関連し、法律的な障害が数多く存在し、実務家も、理論界も、認識がまだ一致していないという状況にあるため、解決するにはまだまだ時間が掛かりそうである。その問題については、後述べるように第三次特許法改正の紹介における特許無効審査モデルに関わる内容を参考していただきたい。

不服審判行政訴訟案件のもうひとつの特徴は、その裁判モデルが普通の行政訴訟案件の裁判モデルと異なることである。つまり、原告が主張したところのみに対して審理を行う。目的としては、審理の効率を向上し、また原告の権利に実質的な損害を与えないことにある。これは、民事裁判廷の審理過程に著しく表れている。

上記述べたように、2007年に提出された無効審判行政訴訟案件の量は前の三年の量と比べて、大幅に増加した。その主な原因は訴訟の費用が1000元から100元に下がったことである。それによって、訴訟費用に極めて関心を持つ国内当事人の積極性を強めた。これらの国内当事者は訴訟過程において、コストを配慮し、代理人を任用しないことが多い。さらに案件の実情も比較的に不利な面があるので、勝訴の比率はかなり低い。よって、現行の無効審判行政訴訟の費用が低すぎて、特許司法、行政資源を無駄していて、裁判所の受理費用を高めるべきだとする意見も存在する。
 
VI. 中国知的財産紛争案件の状況

1. 知的財産紛争案件の概要

1 この五年間の状況の紹介

この五年間で、中国の裁判所において審理された知的財産権に関わる刑事、民事、行政の案件は大幅に増加し、71633件に達した。2004年、最高裁判所、最高検察院の知的財産権侵害刑事案件の審理に関する司法解釈を実施して以来、知的財産権侵害訴訟案件の結審率が増加しつつあり、22.69%の年平均増加率を遂げた。五年間で、知的財産権侵害罪を構成すると判決された犯罪者は9656人に達した。過去の五年間に結審された知的財産権侵害罪に関する案件は合計2962件であり、前の五年の1.33倍となった。知的財産権侵害罪を厳格に判断すると同時に、不法経営、粗悪商品の生産、販売に関する訴訟事件の中で知的財産権犯罪を厳しく判断する傾向が増加し、審決した案件は3288件となった。

近年、最高裁判所が不正競争案件、インターネット著作権紛争案件、植物新品種紛争案件の審理に適用される司法解釈を相次いで公布した。過去五年間、処理された知的財産権の民事案件は62218件になり、前の五年の1.5倍に上昇し、訴訟の標的金額は133億元で、同期比70%増加した。五年間で、各級の裁判所が審理した知的財産権の行政案件は3165件になり、前の五年の4.87倍に上昇した。

外国知的財産権案件については、中国の対外開放と対外貿易の発展につれて、外国知的財産権の紛争が大幅に増加を続け、関係案件の処理について国内外から注目されるようになっている。2001年から2007年まで、全国各地方裁判所が審理した外国知的財産権の民事一審案件は1634件で、57.96%の平均増となり、増加の幅が知的財産権の全体の二倍以上となった。中でも2007年に審理されたのは668件で、2006年と比べて、89.24%増であった。しかし、外国知的財産権案件が知的財産権の全体に占める割合は、まだ少なく、全体の約3%である。

最近、最高裁判所が『民事案件の事由についての規定』を公布した。知的財産権紛争を婚姻家庭の相続、物権、債権などと一緒に一級の事由として並べて、その下に、「知的財産権契約紛争」、「知的財産権利帰属、侵害紛争」及び「不正競争、独占禁止紛争」という三つの二級の事由を設け、また33の三級の事由と86の四級の事由を設けた。そのほか、「特殊のプロセスに適用する事由」の一級の事由の部分には、「訴訟前侵害停止の申請」など三つの知的財産権訴訟前の一時的な措置に関わる三級の事由も設けられた。気をつけるべきは、元の『民事案件の事由規定(試行)』と比べて、新しい規定が企業名称(商号)、特殊な標章、コンピューターのドメインネームに関わる契約書及び侵害紛争を全て知的財産紛争の範疇に入れ、知的財産代理契約、特別許可経営契約などの知的財産に関する契約紛争を知的財産権契約紛争に入れ、特に営業秘密契約書を単独で列挙し、暫時的な措置を申請することで起こった損害賠償に関する紛争を知的財産権利侵害の範疇に入れた。しかも権利非侵害確認訴訟を単独の知的財産権侵害紛争の一類に入れる。不正競争防止法と知的財産保護との密着の関係、と2008年8月1日に施行される独占禁止法と不正競争防止法のシステム性を配慮しながら、新しい規定を設け、関係のある独占禁止紛争、不正競争紛争を知的財産紛争に取り入れることとなった。

五年間で、中国検察機構は知的財産権侵害への取り締まりを強化し、知的財産権の司法保護を強化してきた。最高人民検察院の贾春旺検察長は2008年3月に全国人民代表大会に報告した内容は以下のとおりである。

五年間で、全国検察機構が逮捕した登録商標の偽造、著作権侵害など知的財産権侵害を犯す容疑者は6339人で、公訴したのは7448人である。

五年間で、全国の関連部門が調査して処分した知的財産権侵害の案件は16万件で、提訴した案件は8400件あまりで、審決したのは7300件あまりである。五年間で、商務部は関連部門と一緒に知的財産権への保護を行い、「知的財産権保護網プロジェクト」を実施し、全国で50の総合的な告発サービスセンターを設立した。調査して処分した知的財産権侵害の案件は16万件で、提訴したのは8400件、審決したのは7300件あまりである。

(2) 2006年の状況の紹介

2007年の最終の統計が未完了のため、2006年の中国知的財産権に関わる案件の状況を以下のように紹介する。

2006年、全国各地方の裁判所が受理及び結審した知的財産権に関する民事一審案件はそれぞれ14,219件及び14,056件で、それぞれの同期比5.92%及び4.95%増加した。その中には、受理及び結審した特許案件はそれぞれ3,196件及び3,227件で、商標案件は2,521件及び2,378件で、著作権案件は5,719件及び、5,751件で、技術契約書案件は681件及び668件で、不正競争案件は1,256件及び1,188件で、他の知的財産案件は846件及び844件であった。受理及び結審した知的財産権民事二審案件は2,686件及び2,652件で、昨年と比べて、それぞれ13.74%及び12.07%の減。行政訴訟案件は42件で、昨年と比べて、3件の減で、結審したのは42件である。

2006年には、全国裁判所が受理した外国また香港、マカオ、台湾に関する知的財産案件が著しく増加した。結審された外国知的財産権民事一審案件は353件で、同期比52.16%増加した。香港、マカオ、台湾に関する知的財産権民事一審案件は229件、同期比34.71%増加した。また、2006年1月から10月まで、全国裁判所が受理及び結審した三資企業に関する知的財産権民事一審案件は752件及び447件である。その中には、受理及び結審された外資案件は533件及び398件であり、香港、マカオ、台湾の投資に関する案件は219件及び139件である。そのような外資要素のある案件はかなりの比率を占めた。

裁判所は特許、商標などの授権案件と知的財産権行政執法案件の行政訴訟の役割を真面目に履行し、法律に基づいて、行政機構を監督する。2006年、全国各地方裁判所が新たに受理した一審知的財産権行政案件は1,396件で、結審したのは1,436件である。その中には、特許案件は458件で、昨年と比べて36.72%増加した。商標案件は235件で、昨年と比べて12.44%増加した。著作権案件は10件で、昨年と比べて67.74%の減。技術監督案件は690件で、ほかの案件は3件である。

知的財産権の刑事司法保護においては、2006年に全国各地方裁判所が結審した知的財産権刑事案件は2,277件で、判決により法的効力が発生したのが3,508人で、その中での有罪判決は3,507人である。その中には、知的財産権侵害罪として判決されたのは769件で、判決が発効したのは1,212人で、昨年と比べてそれぞれ52.28%及び62.21%増加したである。偽物生産、販売罪(知的財産権侵害に関わる)として、判決されたのは437件で、判決が発効したのは766人である。不法経営罪(知的財産権侵害に関わる)として、判決されたのは1,066件で、判決が発効したのは1,525人である。ほかの罪として判決された知的財産権に関する案件は5件で、判決が発効したのは5人である。

2. 北京の知的財産権侵害案件の概要

北京は中国で知的財産権紛争案件をもっとも多く受理しているところであり、裁判所の裁判官のレベルも中国で最高であると認められ、中国知的財産業界において極めて重要な地位を占めている。北京市知的財産案件審理座談会の情報により、2007年に北京市裁判所が受理した一審知的財産紛争案件は2940件であり、同期比10.9%増加した。その中には、著作権案件は65%を占め、不正競争案件の比率は5%、残りは商標と特許案件であった。受理した二審の知的財産紛争案件は710件で、結審したのは704件である。受理、審決した案件は過去最高であった。理由のない審査周期を超える案件はなかった。一審で審決した案件の比率は92.6%に達し、9100件あまりの裁判公文書がネットで通報され、2件の知的財産案件は最高裁判所に公布された全国トップ10の知的財産権ケースの中に選ばれた。

3. 中国特許侵害訴訟案件の特徴

今、国内特許侵害訴訟案件は以下の特徴がある: 

(1) 往々にして特許無効紛争と一緒に関わる案件が多い。訴訟の戦略として、成功かどうかはとにかくとして、特許侵害と訴訟された側は特許審判委員会に無効審判を請求する傾向がある。成功できなくても、特許侵害の責任をとる時間がだいぶ短くなる。それはある程度で、特許侵害側にメリットをもたらし、被害者への保護にデメリットをもたらす。本当の特許侵害を打撃することに有利ではない。

(2) 高レベルの代理人の参与が少ないこと。それは現在の中国で、特許知識があり、訴訟のテクニックにも精通し、また専門的な技術知識と法律知識のある代理人(代理弁護士)が少ないことと関係がある。また、当事者(主としての国内当事者)の考え方にも関係がある。たとえば、弁護士の費用を惜しむとか、代理人の役割が少ないと思うとか。実際の案件には、代理人の不適当な処理で、深刻なミスを犯し、ひいては敗訴したことも少なくない。

(3) 訴訟の標的が増大する傾向がある。今各地の裁判所は標的が億元にも達する特許権侵害紛争の案件を受理し、以前より大きく向上している。2007年10月、温州中等裁判所は、世界の低圧電気界の大手企業シュナイダーの中国での合弁会社及びシュナイダー製品の販売会社が正泰集団に3.3億元を賠償するようという一審判決を下した。それは中国において、賠償額のもっとも多い特許権侵害賠償の判決である(まだ発効していない)。商標権と著作権の侵害案件から見れば、そのような大きな標的はまだない。標的の増大は産業規模の拡大、特許技術にもたらされた付加価値が、訴訟の標的を増加させるほか、個別の当事者の理由のない主張にも関係がある。

(4) 侵害認定のプロセスには新しく、難しい問題が多い、各地の処理方法はまだ統一されていない。例えば、原告の独立クレームが無効と宣告された後、プロセス的にはどう処理すればいいか、またサブクレームの侵害になるかどうかを判断するにはどのような影響をもたらすのか。訴訟の認定基準の濫用とどのように特許権者の濫用を規範するか。現在、原告が訴訟を濫用するため、被告に賠償すると判決されたケースがすでに出てきた。
 
VII. 中国特許法第三回改正状況の紹介

1. 特許無効審判の審査モデルの変化

現行特許法には、特許無効案件の審査モデルは以下の通りである。請求人は特許審判委員会に無効審判請求を提出しなければならない。特許権者と請求人は案件の当事者であり、特許審判委員会が審査を行う。そのプロセスは行政プロセスであり、関係法律(特許法)、法律規定(特許法実施細則)、審査基準は審査の根拠として適用する。特許審判委員会の審決に不服がある場合、北京市第一中等裁判所に訴訟を提出し、特許審判委員会は被告として、無効審査プロセスのもうひとつの当事者は第三者として訴訟に参加する。その訴訟は一審の行政訴訟である。一審の判決に不服がある場合、北京市高等裁判所に訴訟を提出する。それは二審行政訴訟である。2006年末に国家知識産権局が国務院に報告した特許法改正案送審稿(以下は送審稿と略称する)には、特許無効審判の審査モデルの改正に触れなかった。しかし、国務院法制委員会の審査プロセスには、上記述べた特許無効審判の審査モデルは時間もかかるし、デメリットも多いため、改正したほうがいいと指摘した。それで、各方面の意見を基に、国家知識産権局が2008年2月の特許法改正案(改正稿)には、特許法第46条2項を以下のように改正している。

現行特許法: 

特許審判委員会の特許権無効の決定又は特許権維持の決定に不服があるときは、通知を受領した日から3ヶ月以内に、裁判所に訴訟を提起することができる。裁判所は無効審判請求の相手方当事者に第三者として訴訟に参加することを通知しなければならない。

20082月の改正稿: 

特許審判委員会の特許権無効の決定又は特許権維持の決定に不服がある場合は、通知を受領した日から3ヶ月以内に、『中華人民共和国行民事訟法』に基づいて裁判所に訴訟を提起することができる。

上記の改正が実現できれば、中国の現行特許無効審判の審査モデルが大きく変わる。まずは、一つの審査の段階が減少される。一級行政審査、二級行政訴訟審査という三つの段階から一審と上訴審査という二つの段階へ変え、効率がかなり高められる。それと同時に、いま特許審判委員会に行われた行政審査を初審の性質のある準司法審査と位置づけ、特許審判委員会の地位も今の行政属性から準司法属性に変わる。その変化からのメリットが著しいが、法律上の障害も多くある。行政属性のある特許審判委員会に行われた審査を司法一審として認めることは、現行の法律体制を大きく突き破るが、今の人民法院組織法の関連規定と不調和的な要素もいくつかある。実現するかどうかはまだわからない。筆者はその改正に賛成するが、少し調整する必要があると考えている。すなわち、特許審判委員会に行われた審査を一級司法審査として認めるうえで、有限三審制度を設立する。

つまり、最高裁判所に自発的に二次審査の結果に不服し、上訴する案件を受理するか否かを決める権利を付与する。それは食い違いを一致させ、法律実施の一致性を保つことである。当然ながら、それは現行の司法体系にとっては、もうひとつの突破である。

2. 絶対的新規性基準の確立

目下、中国では新規性に対して複合的な判断基準を採用している。その基準は総体から言えば、発明創造にデメリットを起こすし、ある製品あるいは方法が国外で公に使用または販売され、ほかの国の民衆が使用できるが、中国においては特許権となり、中国の民衆にとって不公平だといわざるを得ない。今の国際趨勢から見れば、出版または公に使用、販売するには、絶対的な新規性を採用することはグローバルにおいて明確な傾向である。国内の実際的なニーズと調和発展の観点から見れば、新規性に対する判断基準を絶対的な新規性に調整する必要がある。送審稿は以下の調整を行った。

現行特許法: 

新規性とは、出願日以前に同一の発明又は実用新案が国内外の出版物に公に発表されておらず、国内において公に実施又はその他の方法で公衆に知られておらず、また同一の発明又は実用新案について他人が国務院特許行政部門に出願しておらず、かつ出願日後に公開された特許出願書類に記載されていないことをいう。

送審稿: 

新規性とは、その発明又は実用新案が従来技術に属さず、また同一の発明又は実用新案について他人が出願日前に国務院特許行政部門に出願しておらず、かつ出願日後に公開された特許出願書類又は公告された特許書類に記載されていないことをいう。

本法にいう従来技術とは、出願日前に同一の発明又は実用新案が国内外の出版物に公に発表され、公に実施され又はその他の方法で公衆に知られている技術をいう。

上記の改正は動向であるが、積極的な意味があり、社会全体がそれに対する認識も比較的一致しているためその改正が認められる可能性が高い。

3.意匠権に関する改正

送審稿には、意匠制度の改正が注目されている。主に以下の五点がある。

(1)意匠権の付与対象を適当に制限すること。平面印刷物の模様、色彩、またその組み合わせが標識の役割を果たすにすぎないデザインに対しては、意匠権を付与しない。その理由としては、平面印刷物のデザインは主に標識として存在し、製品の外観に対する改善ではない。また、標識の役割を果たすにすぎないデザインは、商標権、著作権との不必要な権利の重複をもたらす。

(2)意匠権を付与する条件を高めること。現行特許法の規定では、意匠権を付与するには従来意匠と同一または類似であってはいけない。改正案には、従来意匠また従来意匠の組み合わせと比べて、明らかな相違を有しなければならない。

(3)関連意匠の出願を許可すること。現実には、基本的な意匠ができた後、その意匠を中心として類似する意匠のデザインがある。関連意匠の出願を許可するのは、出願人がより効果的に類似する意匠のデザインを保護できる点で有利である。すなわち、セットになっている意匠の製品の出願を提出したあと、関連する、また類似の意匠に対しての出願の提出を許可する。

(4)調査報告制度を設立すること。今のように、意匠、実用新案に対し、初歩的審査のみを行い、権利者がその権利を濫用して、公共利益にデメリットをもたらさないように、意匠権者または実用新案権者が権利を行使したり、侵害訴訟を提出したりする場合、司法機構また特許行政部門に意匠また実用新案の調査報告を提供しなければならない。

(5)意匠の出願書類には、簡単な説明は図面または写真の解釈に用いられ、意匠権の保護範囲の確定をより科学的で信頼できる方法を提供する。

上記の改正は、意匠審査の基準を高める極めて重要な意味を持っている。

現行特許法: 

特許権を付与する意匠は、出願日以前に国内外の出版物に公に発表され又は国内で公に実施された意匠と同一でも類似でもなく、また、他人が先に取得した合法的権利と抵触してはならない。

送審稿: 

特許権を付与する意匠は、従来意匠に属さず、また同一の意匠について他人が国務院特許行政部門に出願しておらず、かつ出願日後に公開された特許出願書類又は公告された特許書類に記載されていないものでなければならない。また、従来意匠又は従来意匠の組合せに比べて、その分野に属するデザイナーにとって明らかな相違がなければならない。

特許権を付与する意匠は、平面印刷物の模様、色彩またはそれらの組合せについて作成された主に標識の効果を有するものであってはならない。

特許権を付与する意匠は、他人が先に取得した合法的権利と抵触してはならない。

本法にいう従来意匠とは、出願日前に国内外の出版物に公に発表され、公に実施され又はその他の方法で公衆に知られている意匠をいう。

送審稿は、権利化できる意匠は、当業者にとって、従来意匠また従来意匠の組み合わせと明らかな相違を有しなければならないと規定している。それは発明、実用新案と似た進歩性を要求し、従来意匠と同一または類似していないという現行の規定に比べて、かなり高められた。

4. 特許代理に関する改正

以下は現行法と改正案の対照である。

現行特許法: 

第19条 中国に通常の居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が、中国で特許出願し、その他の特許事務手続をする場合、国務院特許行政部門が指定する特許代理機構に処理を委任しなければならない。

中国の機関又は組織又は個人が国内で特許出願し、その他の特許事務手続をする場合、特許代理機構に処理を委任することができる。

送審稿: 

第19条 中国に通常の居所又は営業所を有しない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が、中国で特許出願し、その他の特許事務手続をする場合、法により設立された特許代理機構に処理を委任しなければならない。

中国の機関又は組織又は個人が国内で特許出願し、その他の特許事務手続をする場合、法により設立された特許代理機構に処理を委任することができる。

上記の規定は実際上渉外特許代理機構を取り消すことになっている。それは以下の理由があるからである。中国特許制度と特許事業の発展につれて、特許代理業も大きく発展して、渉外特許が代理できる代理機構がますます増えてきた。公平的な競争環境を作り、代理機構の業務能力を向上させ、また特許出願人により優れたサービスを提供させるため、今回渉外代理に関する規定を取り消す。言い換えれば、外国出願人が中国に特許出願する際、指定された渉外代理機構に限らず、いかなる国家知識産権局に許可された代理機構に委託してもよいことになる。
 
(2008)

ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
ホットリンク:北京魏啓学法律事務所
©2008-2025 By Linda Liu & Partners, All Rights Reserved.
×

ウィチャットの「スキャン」を開き、ページを開いたら画面右上の共有ボタンをクリックします