(2026年2月24日付国家市場監督管理総局令第126号により公布、
2026年6月1日より施行)
第1条 本規定は、中華人民共和国不正競争防止法(以下、「不正競争防止法」という。)に基づいて策定され、営業秘密の保護を強化し、公正な競争に係る市場秩序を維持することを目的とする。
第2条 事業者は、営業秘密の取得、開示、使用、他者への使用許諾を行う場合、自主性、平等、公正、信義誠実の原則に従い、法律、法規、規則及び商業道徳を遵守し、公正に市場競争に参加しなければならない。
本規定にいう「事業者」とは、商品の製造、運営又は役務の提供(以下にいう「商品」には「役務」が含まれる。)に従事する自然人、法人及び非法人団体をいう。
第3条 国家市場監督管理総局は、全国における営業秘密の行政保護の主管及び指導を担当する。
県級以上の地方市場監督管理部門は、それぞれの行政区域内における営業秘密の行政保護を担当する。
営業秘密に係る事件は、通常、地級市以上の市場監督管理部門の管轄となる。ただし、業務の必要に応じて、国家市場監督管理総局の同意を得た上で、相応の法執行能力を有する県級市場監督管理部門の管轄となる場合もある。
第4条 市場監督管理部門は、宣伝や解説、専門研修の実施等を通じて、営業秘密保護制度を構築して整備し、営業秘密保護の意識及び能力を強化するように事業者を指導し、営業秘密保護水準の全体的な向上を促進しなければならない。
営業秘密保護管理体制を構築して整備し、自らの業界特性、技術ニーズ、競争優位性等に応じて、秘密要素の内部統制及びコンプライアンス管理を強化し、営業秘密侵害行為を予防・阻止するための有効な措置を積極的に講じるよう事業者を奨励する。営業秘密保護の形態を革新し、認証、証拠保存等の方法により営業秘密保護を強化するよう事業者を奨励する。
業界団体は、業界の自主規制を強化し、その業界の営業秘密保護基準やコンプライアンスガイドライン等を策定することにより、適法に競争するよう業界内の事業者を指導・規制し、市場競争秩序を維持しなければならない。
第5条 本規定にいう「営業秘密」とは、公然知られておらず、商業的価値を有し、かつ、権利者が相応の秘密保持措置を講じている技術情報、事業情報等の営業情報をいう。
技術に関する構造、原材料、配合、材料、サンプル、パターン、プロセス、方法、データ、アルゴリズム、コンピュータプログラム、コード等の情報は、第1項に掲げる技術情報に該当する。
事業活動に関するアイデア、管理、販売、財務、計画、サンプル、顧客情報、データ等の情報は、第1項に掲げる事業情報に該当する。顧客情報には、顧客の氏名、住所、連絡先、及び取引習慣、意向、内容等の情報が含まれる。
第6条 本規定にいう「公然知られておらず」とは、営業秘密侵害と疑われる行為が発生した時点において、その営業情報が、その分野の関係者に一般に知られておらず、容易に取得可能な状態ではないことを意味する。
次の各号は、その営業情報が公然知られている場合に該当する。
(1)その情報が、その分野における常識や業界慣行である場合。
(2)その情報が、製品の寸法、構造、材質、部品の単純な組み合わせ等のみに関するものであり、その分野の関係者が市販製品を観察することで直接取得できるものである場合。
(3)その情報が、公知刊行物やその他のメディアによって公然開示されている場合。
(4)その情報が、公の報告会、展示会等を通じて公開されている場合。
(5)その分野の関係者が、他の公の経路からその情報を取得できる場合。
公然知られている営業情報の整理、改良、加工により新たな情報が形成され、第1項の要件を満たす場合には、公然知られていないものに該当する。
第7条 本規定にいう「商業的価値を有し」とは、営業情報が、現実的又は潜在的な価値を有し、権利者に資産の増加、営業収益又は利益の増加、ユーザー数の増加、コストの削減、開発時間の短縮、取引機会の増加、商業的信用や商品評判の向上等の商業的利益又は競争上の優位性をもたらすことができることをいう。
事業活動において形成された段階的な成果や失敗した実験データ、技術的解決策等が第1項の要件を満たす場合、商業的価値を有するものに該当する。
第8条 本規定にいう「権利者」とは、営業秘密の所有者と、営業秘密の所有者から許諾又は許可を受けた営業秘密の被許諾者又は被許可者とをいう。
第9条 本規定にいう権利者が相応の秘密保持措置を講じているとは、権利者が営業秘密の漏洩を防止するために、営業秘密及びその媒体の性質、営業秘密の商業的価値等に相応しい合理的な秘密保持措置を講じていることをいう。
次の各号は、権利者が相応の秘密保持措置を講じている場合に該当する。
(1)秘密保持契約を締結したか、又は、契約書に秘密保持義務を規定している場合。
(2)規則や制度の構築、教育の徹底、書面による通知等の方法により、営業秘密へのアクセス又は取得が可能な従業員、元従業員、サプライヤー、顧客、訪問者等に対して秘密保持を要請している場合。
(3)秘密に関わる工場、作業場、実験室、事務所等の事業施設への立ち入りを禁止若しくは制限しているか、又は個別に管理している場合。
(4)リモートワークや多国間分業等において、階層的なアクセス管理、データの匿名化、操作ログの記録等の技術的な秘密保持措置を講じている場合。
(5)マーク付け、分類、隔離、暗号化、封印を行ったり、営業秘密及びその媒体へのアクセス又は取得が可能な者の範囲を制限したりすることにより、営業秘密及びその媒体を個別に管理している場合。
(6)営業秘密へのアクセス又は取得が可能なコンピュータ装置、オンライン装置、記憶装置等について、その使用、アクセス、記憶、複製を禁止又は制限するなどの措置を講じている場合。
(7)退職する従業員に対し、アクセス又は取得した営業秘密及びその媒体の登録、返却、削除、破棄を行って秘密保持義務を負い続けるよう要請している場合。
(8)その他の合理的な秘密保持措置を講じている場合。
第10条 事業者は、窃盗、賄賂、詐欺、強要、電子的侵入又はその他の不正な手段により権利者の営業秘密を取得してはならない。
次の各号は、本規定にいう不正な手段に該当する。
(1)権利者の管理下にある、営業秘密を含む又は営業秘密を導き出せる文書、商品、材料、原材料等の媒体に、許可なく、又は許可の範囲を超えて、不正にアクセスしたり、保有したり、複製したりすること。
(2)金銭又はその他の財産上の利益を提供したり、個人の安全を脅かしたりして、権利者の従業員、元従業員、その他の機関・組織又は個人に賄賂を贈ったり、強要したり、欺いたりして、営業秘密を取得すること。
(3)許可なく、又は許可の範囲を超えて、権利者のデジタルオフィスシステム、サーバー、電子メールアドレス、クラウドストレージ、アプリケーションアカウント等に不正にアクセスするか、又は、悪質なプログラムを仕掛けたり、脆弱性を攻撃したりするなどの技術的手段により営業秘密を取得すること。
(4)許可なく、許可の範囲を超えて、又は許可期間の満了後に、権利者が管理していない電子メールアドレス、クラウドストレージ等のオンラインストレージスペース又は電子機器に営業秘密をダウンロード又は送信すること。
(5)その他の不正な手段により権利者の営業秘密を取得すること。
第11条 事業者は、不正な手段により取得した権利者の営業秘密の開示、使用、又は他者への使用許諾を行ってはならない。
本規定にいう「開示」とは、営業秘密を権利者以外の第三者に漏らすか、又は、営業秘密を、関係公衆が一般に知り得る若しくは容易に取得できる状態となるように公開することをいう。
本規定にいう「使用」とは、営業秘密を直接使用すること、又は営業秘密を修正若しくは改良して使用すること、又は営業秘密に基づいて関連する事業活動を調整若しくは改良することをいう。
第12条 事業者は、秘密保持義務又は営業秘密の保持に関する権利者の要請に違反して、自ら保有する営業秘密の開示、使用、又は他者への使用許諾を行ってはならない。
秘密保持義務又は営業秘密の保持に関する権利者の要請としては、一般的に次の場合が挙げられる。
(1)労働契約、秘密保持契約、売買契約等の契約には、営業秘密の保持に関する規定がある場合。
(2)契約上の合意がなくても、契約の性質、目的及び取引慣行、商業道徳等から、信義誠実の原則に従って営業秘密を保持する義務がある場合。
(3)権利者は、営業秘密を知っている関係者に対し、秘密保持を要請している場合。かかる関係者としては、契約関係を通じて営業秘密を知っている者、開発、製造、検査、認証等の活動への参加を通じて営業秘密を知っている者等が挙げられるが、これらに限定されない。
(4)契約上の合意がなくても、権利者が従業員、元従業員、パートナー等に対し、規則や制度、又は合理的な秘密保持措置を通じて営業秘密を保持するよう明示的に要請している場合。
(5)秘密保持義務を負っているか、又は権利者が営業秘密の保持を要請しているその他の場合。
第13条 事業者は、秘密保持義務又は営業秘密の保持に関する権利者の要請に違反して権利者の営業秘密の取得、開示、使用、又は他者への使用許諾を行うように、他者を教唆、誘導又は幇助してはならない。
次の各号は、営業秘密を侵害するように、他者を教唆、誘導、又は幇助する行為に該当する。
(1)明示的又は暗黙的な手段により、営業秘密を侵害するよう他者を扇動又は支配すること。
(2)物質的な報酬や仕事の約束等、明示的又は暗黙的な手段により、営業秘密を侵害するよう他者を誘導すること。
(3)他者が営業秘密を侵害することを知りながら又は知り得たにもかかわらず、資金、技術、装置等の便宜を提供すること。
(4)営業秘密を侵害するように、他者を教唆、誘導又は幇助するその他の行為。
第14条 事業者以外の自然人、法人又は非法人組織が本条例第10条から第13条に掲げる違法行為を行った場合、営業秘密を侵害したものとみなされる。
第三者が、営業秘密権利者の従業員、元従業員、パートナー又はその他の機関・組織が本条例第10条から第13条に掲げる違法行為を行ったことを知りながら又は知り得たにもかかわらず、営業秘密の取得、開示、使用、又は他者への使用許諾を行った場合、営業秘密を侵害したものとみなされる。
第三者が知りながら又は知り得た状態であるかについては、その営業情報の秘密性、取得経路及び方法の合理性、取引価格、第三者と営業秘密権利者との関係、業界慣行等の要素を総合的に考慮して判断しなければならない。
第15条 次に掲げる行為は、一般に営業秘密を侵害する行為とはみなされない。
(1)独立した発見又は自己開発。
(2)公の経路から取得した製品の分解、測定、分析等により、その製品に関する技術情報を取得すること。
(3)営業秘密権利者の元従業員が、職務中に培った一般知識、技能、業界経験、又は公の経路から取得可能な業界情報を活用して業務を遂行すること。
(4)違法行為や犯罪行為の摘発、国家の安全や公共利益の保護等の必要のため、法律に基づいて国家機関、行政機能を遂行する法定機関及びその職員に営業秘密を開示すること。
(5)営業秘密の侵害に該当しないその他の行為。
第16条 あらゆる組織及び個人が営業秘密侵害行為に対する公的監視に関与することを奨励・支援し、保護する。市場監督管理部門は、通報者、営業秘密侵害行為の摘発に協力する組織及び個人の情報を秘密に保持しなければならない。
第17条 権利者は、その営業秘密が侵害されたと考える場合は、市場監督管理部門に通報することができる。
通報の際には、権利者は、その営業情報が営業秘密に該当することを示す一応の証拠と、営業秘密が侵害されたことを示す具体的な手がかりとを提示し、通報事項の信ぴょう性について責任を負わなければならない。市場監督管理部門は、必要に応じて、通報者に補足資料の提出を求めることができる。
いかなる組織や個人も、営業秘密を侵害した事実を捏造して他者を貶め、恐喝してはならず、通報権を濫用して市場競争秩序や市場監督管理秩序を妨害してはならない。
第18条 権利者の営業情報が営業秘密に該当することを示す一応の証拠には、一般的に次の内容が含まれる。
(1)営業情報の形成経過及び形成時期。
(2)営業情報は公然知られておらず、又は本規定第6条第2項に掲げる状況にも該当しないこと。
(3)営業情報の商業的価値。
(4)権利者が営業情報に関して講じた秘密保持措置。
(5)権利者の営業情報が営業秘密であることを証明できるその他の証拠資料。
次の手がかりは、一般的に、営業秘密の侵害が疑われる場合の具体的な手がかりとして認められる。
(1)営業秘密を侵害したと疑われる者(以下、「侵害容疑者」という。)が営業秘密を取得する経路や機会を有していることを示す手がかり。
(2)営業秘密の秘密保持措置が侵害容疑者に不正な手段により破壊されたことを示す手がかり。
(3)営業秘密が侵害容疑者によって実際に取得されたことを示す手がかり。
(4)営業秘密が侵害容疑者によって開示若しくは使用されていること、又は開示若しくは使用されるおそれがあることを示す手がかり。
(5)営業秘密が侵害容疑者によって侵害されたことを示すその他の手がかり。
第19条 市場監督管理部門は、通報を受けた後、法律に基づいて確認し、受理可否を決定しなければならない。
確認の結果、次の条件が満たされている場合は受理しなければならない。
(1)営業秘密を侵害する行為があったことを証明する一応の証拠があり、法律に基づいて行政処罰を課すものであること。
(2)本部門の管轄下であること。
(3)行政処罰を課す法定の期間内であること。
第20条 侵害容疑者、利害関係者及びその他の関係機関・組織、個人は、市場監督管理部門に対し、関係する情報又は状況を真実に提供しなければならない。
侵害容疑者が使用した情報が権利者の主張する営業秘密と実質的に同一であることを証明する証拠があり、かつ、侵害容疑者がその営業秘密を取得する手段を有している場合、市場監督管理部門は、侵害容疑者が営業秘密を侵害する行為を行ったと認定することができる。但し、侵害容疑者が使用した情報が、適法に取得又は使用されたことを証明する証拠がある場合は除く。
第21条 市場監督管理部門及びその職員は、調査時に知り得た営業秘密について、法律に基づいてその秘密を保持する義務を負い、権利者の営業秘密の不法な開示、使用、又は他者への使用許諾をしてはならない。
市場監督管理部門は、法律に基づいて行政処罰決定を公開する場合、営業秘密に関わる情報を公開してはならない。
第22条 権利者及び侵害容疑者は、権利者の情報が公然知られているものであるか、侵害容疑者が使用した情報が権利者の情報と実質的に同一であるか等の専門的な事項について、法定資格を有する鑑定機関に鑑定を依頼するか、又は専門知識を有する者に上記の事項に関する専門的な見解を出すよう依頼し、その鑑定結果又は専門的な見解を市場監督管理部門に提出することができる。
第23条 市場監督管理部門は、営業秘密を侵害する疑いのある行為を調査する際に、次の措置を講じることができる。
(1)営業秘密を侵害している疑いのある事業所に立ち入って検査する。
(2)調査対象となる侵害容疑者、利害関係者、その他の関係機関・組織及び個人に尋ね、関係状況を説明するよう求めるか、又は調査対象の行為に関連するその他の資料を提供するよう求める。
(3)営業秘密の侵害と疑われる行為に関連する契約書、元帳、領収書、文書、記録、業務上の書簡その他の資料を調査し、コピーする。
(4)営業秘密の侵害と疑われる行為に関連する財産の押収や差押え。
(5)営業秘密の侵害と疑われる行為に係る事業者の銀行口座の照会。
第1項に掲げる措置を講じる場合は、市場監督管理部門の主たる責任者に書面で報告し、承認を受けなければならない。第1項第4号、第5号に掲げる措置を講じる場合は、地級市以上の市場監督管理部門の主たる責任者に書面で報告し、承認を受けなければならない。
市場監督管理部門及びその職員は、法律に基づいて調査を実施する場合、又は調査への協力を要請する場合には、事業者の正常な事業活動への影響を回避するか、又は最小限に抑えなければならない。
第24条 本規定に違反して営業秘密を侵害した者は、県級以上の市場監督管理部門により、不正競争防止法第26条の規定に基づき、違法行為の差し止め、違法所得の没収、10万元以上100万元以下の罰金を科せられる。情状が重い場合は、100万元以上500万元以下の罰金を科せられる。
第25条 不正競争防止法第26条の規定により違法行為が差し止められる場合、当該違法行為の差し止め期間は、一般的に、その営業情報が営業秘密に該当しなくなるまでとする。
違法行為の差し止め命令には通常、次の内容が含まれる。
(1)侵害者に対し、権利者の営業秘密の使用を中止するよう命じる。但し、権利者がそれを認める場合は除く。
(2)侵害者に対し、営業秘密媒体を権利者に返却するか、又は破棄するよう命じる。
(3)侵害者に対し、営業秘密を含む侵害製品又は中間製品を破棄するよう命じる。但し、権利者が購入や売却等の他の処分方法を取ることに同意する場合は除く。
(4)侵害者に対し、取得した権利者の営業秘密を削除するよう命じる。
(5)権利者の営業秘密を侵害するその他の行為を中止するよう命じる。
第26条 次の各号は、不正競争防止法第26条に掲げる「情状が重い場合」に該当する。
(1)権利者に生じた直接の損失額が大きい場合。
(2)権利者の事業活動に大きな悪影響を及ぼした場合。
(3)国の利益、公共の利益を害する場合。
(4)営業秘密を侵害したことにより行政処罰を受けた2年以内に、営業秘密を侵害する行為を再度行った場合。
(5)情状が重いその他の場合。
第27条 本規定に違反し、犯罪を犯した疑いのある者は、法律に基づいて司法機関に移送され、刑事責任を追及される。
第28条 本規定にいう営業情報が国家秘密に該当する場合は、「中華人民共和国国家秘密保持法」の規定に基づいて保護される。
第29条 中華人民共和国外で営業秘密を侵害する行為を実施することで、国内の市場競争秩序を乱し、国内事業者の適法な権利・利益を害する場合は、不正競争防止法及び関連法律に基づいて取り扱われる。
第30条 法律、行政法規には、営業秘密を侵害する行為が他の部門により取り締まられると規定されている場合は、その規定に従う。
第31条 本規定は2026年6月1日より施行される。1995年11月23日に旧国家工商行政管理総局令第41号により公布された「営業秘密を侵害する行為の禁止に関する若干の規定」は同時に廃止される。