| 「最高人民法院による知的財産権の懲罰的賠償に関する司法解釈」(2021) | 「最高人民法院による知的財産権の懲罰的賠償に関する司法解釈」(2026) |
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第1条 原告は被告がその法律により享有している知的財産権を故意に侵害し、且つ情状が深刻であると主張し、被告に懲罰的賠償責任を負うようと人民法院に請求した場合、人民法院は法律に基づき審理し、処理しなければならない。 本解釈がいう故意は、商標法第63条第1項と反不正競争法第17条第3項に規定する悪意を含む。 |
第1条 原告は被告がその法律により享有している知的財産権を故意に侵害し、且つ情状が深刻であると主張し、被告に懲罰的賠償責任を負うようと人民法院に請求した場合、人民法院は法律に基づき審理し |
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弊所コメント: 「反不正競争法」(2025年)及び「商標法改正案(意見募集稿)」(2025年)において、懲罰的賠償の主観的条件を評価する際に「故意」という用語に統一されているため、新解釈では「悪意」と「故意」の同一性に関する規定が削除された。 |
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第2条 原告が懲罰的賠償を請求する場合、提訴する時に賠償額、算定方法及び根拠となる事実と理由を明確しなければならない。 原告が一審の法廷弁論が終了前に懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院は許可しなければならない。原告が二審において懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院は当事者の意志自由の原則に基づき調停を行うことができ、調停が成立しない場合、当事者に別途提訴するようと、告知する。 |
第2条 原告が懲罰的賠償を請求する場合、 第3条 原告が一審の法廷弁論が終了前に懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院は許可しなければならない。原告が二審において懲罰的賠償の請求を追加した場合、人民法院は当事者の意志自由の原則に基づき調停を行うことができ、調停が成立しない場合、 第4条 原告が知的財産権侵害訴訟において損害賠償を請求したが、懲罰的賠償を請求せず、人民法院が懲罰的賠償について説明した後も原告が懲罰的賠償を請求せず、訴訟終了後に同一の侵害事実に基づいて別途提訴し、懲罰的賠償を請求する場合、人民法院はそれを受理しない。 第5条 原告が、被告の故意による営業秘密侵害以外の不正競争行為に対し懲罰的賠償を請求する場合、人民法院はそれを支持しない。ただし、法律に別段の規定がある場合は除く。 |
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弊所コメント: 1.本条は大幅な調整が加えられた。元の第2条第2項は第3条に分割され、第4条および第5条が追加された。 2.変更点として、懲罰的賠償請求および算定方法は、訴状に明確に記載する必要はなくなったが、一審の法廷弁論前に提出する必要は依然としてある。二審において懲罰的賠償の請求を追加し、かつ調停が成立しない場合、その請求は支持されない。 3.追加内容に関して、第4条は第3条の補足説明である。法廷が懲罰的賠償について説明した後も、原告が懲罰的賠償を請求しなかった場合、別途訴訟を提起する救済機会は与えられない。 4.第5条は、「反不正競争法」第22条第3項を強調するものであるが、将来現れる可能性のある新たなタイプの不正競争行為に対して懲罰的賠償を適用する可能性を排除するものではない。 |
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第3条 知的財産権侵害の故意を認定する場合、人民法院は侵害された知的財産権の客体の種類、権利の状態と関連製品の知名度、被告と原告又は利害関係者との間の関係などの要素を総合的に考慮しなければならない。 次に掲げることに該当する場合、人民法院は被告が知的財産権侵害の故意を有すると初歩的に認定することができる。 (一)被告が原告又は利害関係者からの通知、警告を受けた後にも侵害行為を継続的に実施した場合、 (二)被告又はその法定代表者、管理者が原告又は利害関係者の法定代表者、管理者、実際の支配者である場合、 (三)被告と原告又は利害関係者との間に、労働、労務、協力、許諾、販売、代理、代表などの関係があり、且つ侵害された知的財産権に触れたことがある場合、 (四)被告と原告又は利害関係者との間に、取引関係があり、又は契約の締結などのために協議したことがあり、且つ侵害された知的財産権に触れたことがある場合、 (五)被告が海賊版、登録商標の詐称行為を実施した場合、 (六)その他の故意と認定することができる場合。 |
第6条 知的財産権侵害 被告が次に掲げることのいずれかに該当する場合、人民法院は (一) (二)被告又はその法定代表者、管理者が原告又は利害関係者の法定代表者、管理者、実際の支配者であり、侵害された知的財産権について知っているか又は知っているべきである場合、 (三) (四) (五) (六)原告との和解が成立し、侵害行為の停止に同意した後、再度同一又は類似の侵害行為を実施した場合、 (七)関連会社を設立したり、法定代表者又は支配株主を変更したり、匿名で会社を設立したりするなどの方法によって実際の支配関係を隠蔽するか、又は免責契約を締結したりして、係争知的財産権の侵害に対する法的責任を回避する場合、 (八)その他の故意と認定することができる場合。 |
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弊所コメント: 本条では、若干の意味的な調整に加え、運用でよく見られる典型的な状況も取り入れている。例えば、(二)項では、被告またはその法定代表者、管理者が複数の役職を兼任し、侵害された知的財産権について知っているか又は知っているべきであるにもかかわらず、原告の利益を「空洞化」または「移転」する行為を実施した場合、「故意」と認定しなければならないと明確にしている。(六)項、(七)項では、和解後の侵害の繰り返し、実際の支配関係の隠蔽、免責条項の多重化など、「故意」となる典型的な侵害状況をいくつか明確に追加している。特に、(七)項では、「ペーパーカンパニー」を利用して法的責任を回避する行為は故意と認定され、権利者の立証のために新たな道筋を示している。 |
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第4条 知的財産権侵害の情状深刻の認定について、人民法院は権利侵害の手段、回数、侵害行為の継続時間、地域的範囲、規模、結果、侵害者の訴訟における行為などの要素を総合的に考慮しなければならない。 被告が次に掲げることに該当する場合、人民法院は情状が深刻であると認定することができる。 (一)権利侵害により行政処罰を受け、又は裁判所の裁判で責任を負わされた後に、再度同一又は類似の侵害行為を実施した場合、 (二)知的財産権の侵害を業とする場合、 (三)権利侵害の証拠を偽造、毀損又は隠匿した場合、 (四)保全裁定の履行を拒否した場合、 (五)権利侵害により獲得した利益が大きく、又は権利者が蒙った損害が大きい場合、 (六)侵害行為が国家安全、公共利益又は人の健康を損なう可能性がある場合、 (七)その他の情状が深刻であると認定できる場合。 |
第7条 知的財産権侵害の情状深刻の認定について、人民法院は権利侵害の手段、回数、侵害行為の継続時間、地域的範囲、規模、結果、侵害者の 被告が次に掲げることのいずれかに該当する場合、人民法院は情状が深刻であると認定 (一)権利侵害により行政処罰を受け、又は裁判所の裁判で法的責任を負わされた後に、再度同一又は類似の侵害行為を実施した場合、 (二)正当な理由なく保全裁定の履行を拒否した場合、 (三)権利侵害の証拠を偽造、毀損又は隠匿した場合、 (四)侵害行為を主な事業とするか又は侵害により獲得する利益を主な利益源とするなど知的財産権の侵害を業とする場合、 (五)権利侵害により獲得した利益が大きい、又は侵害行為により権利者の評判、市場シェアが蒙った損害が重大である (六)侵害行為が国家 (七)その他の情状が深刻であると認定できる場合。 |
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弊所コメント: 本条は、若干の意味的な調整に加え、「知的財産権の侵害を業とする」の具体的な例として、「侵害行為を主な事業とする」、「侵害により獲得する利益を主な利益源とする」あるいは同等の行為を挙げ、「知的財産権の侵害を業とする」と認定しなければならないことを明確にしている。 |
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第5条 人民法院が懲罰的賠償額を確定する場合、それぞれの関連法律に基づき、原告の実際の損害額、被告の違法所得額又は侵害により得られた利益を算定の基準としなければならない。この基準は原告が侵害行為を制止するために支払った合理的な支出を含まないとし、法律に別段の規定がある場合、その規定に従う。 前項でいう実際の損害額、違法所得額、侵害行為により得られた利益のいずれも算定が困難である場合、人民法院は法律に基づき、当該権利の許諾実施料の倍数を参照して合理的に確定し、且つそれを懲罰的賠償額の算定基準とする。 人民法院は法律に基づき被告にその把握している侵害行為に関わる帳簿、資料の提出を命じ、被告が正当な理由なく提出を拒否し、又は虚偽の帳簿、資料を提出した場合、人民法院は原告の主張と証拠を参考して懲罰的賠償額の算定基準を確定することができる。民事訴訟法第111条に規定する状況に該当する場合、法律に基づき法的責任を追究する。 |
第8条 人民法院が懲罰的賠償額を確定する場合、それぞれの関連法律に基づき、原告の実際の損害額、被告の違法所得額又は侵害により得られた利益を算定の基準としなければならない。 法定賠償額は、懲罰的賠償の算定基準とすることはできない。 第9条 被告の違法所得または侵害行為により得られた利益を懲罰的賠償の算定基準とする場合、営業利益を参照して確定することができる。被告が知的財産権の侵害を業とする場合は、売上利益を参照して算定することができる。利益率が確定できない場合、統計部門、業界団体等が公表する同時期・同業種の平均利益率、または権利者の利益率を参照して算定することができる。 第10条 人民法院は法律に基づき被告にその把握している侵害行為に関わる帳簿、資料などの提出を命じ、被告が正当な理由なく提出を拒否し、又は虚偽の帳簿、資料などを提出した場合、人民法院は原告の主張と記録された証拠 |
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弊所コメント: 本条は、若干の意味的な調整に加え、法定賠償額を懲罰的賠償額の算定基準とすることはできないこと、すなわち、算定基準は、原告の実際の損害額、違法所得額、侵害行為により得られた利益に基づいて算定しなければならないことを明確にしている。また、新解釈は、過去の事例で議論された懲罰的賠償の算定基準を参照として取り入れており、通常の場合営業利益を参照することができ、「知的財産権の侵害を業とする」場合に売上利益を参照することができることを明確にしている。また、利益率が確定できない場合に、統計部門や業界団体などが公表する同時期・同業種の利益率データを参照することができることも明確にしている。 |
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第6条 人民法院は法律に基づき懲罰的賠償の倍数を確定するとき、被告の主観的過錯の程度、侵害行為の情状の深刻さの程度などの要素を総合的に考慮しなければならない。 同一の侵害行為で既に行政罰金又は刑事罰金が科され、且つ執行が完了したことで、被告が懲罰的賠償責任の減免を主張した場合、人民法院はそれを支持しない。ただし、前項でいう倍数を確定する時に総合的に考慮することができる。 |
第11条 人民法院は 第12条 人民法院が懲罰的賠償を適用して確定する賠償総額は、最大で算定基準の5倍である。権利者が侵害行為を制止するために支払った合理的な支出は、この総額とは別に算定する。 第13条 同一の侵害行為で既に行政罰金又は刑事罰金が科され、且つ執行が完了した |
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弊所コメント: 本条は、若干の意味的な調整に加え、過去の事例において総合的に考慮した結果、1.5倍、2.5倍などが適用された状況を取り入れている。懲罰的賠償の倍数は整数である必要がないことを明確にし、懲罰的賠償を適用して確定される賠償総額を最大で5倍と規定している。すなわち、懲罰的賠償は算定基準に加算するのではなく、倍数を確定する際に併せて考慮する必要がある。ただし、賠償総額には、侵害行為を制止するために支払った合理的な支出は含まれない。 |
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| 第7条 本解釈は2021年3月3日より施行する。最高人民法院が以前に発表した関連の司法解釈が本解釈と一致しない場合、本解釈に準ずる。 |
第14条 本解釈は2026年5月1日より施行する。 本解釈の施行に伴い、「最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈」(法釈[2021]第4号)は同時に廃止される。 本解釈の施行前に既に確定判決となっている事件については、本解釈の施行後に当事者が再審を請求する場合、または裁判監督手続きに基づく再審が決定している場合、本解釈は適用されない。 |
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